歴史の世界

中東_メソポタミア文明②

ユダヤ教成立の歴史④ 「原イスラエル人」とヤハウェ神の出会い

前々回からの続き。前々回は《イスラエルの元来の神は「エル」》という話を書いた。 「原イスラエル人」 「原イスラエル人」の仮説 ヤハウェとの出会い 「原イスラエル人」 聖書の中から古代イスラエル人の源流を求めると、メソポタミアから来たアブラハムや…

ユダヤ教成立の歴史③ 【用語整理】イスラエル、ヘブライ、ユダヤ、ユダ、パレスチナ

いまさらだが、用語について整理する。一緒くたにされ、多くの場合、同じ意味で使われる言葉の由来などについて書いていく。 イスラエル 「イスラエル」については前回書いたとおり、「神(=エル)が戦う(または支配する)(=サーラー)」。「エル」はカ…

ユダヤ教成立の歴史② 《古代イスラエル民族の元来の神は「エル」》

前回はユダヤ教より前の宗教の話をした。 ユダヤ教はカナン(≒パレスチナ)で誕生したが、その前のカナンの宗教は、古代ギリシャのように多神教の神々の体系が信じられていた。 今回は、《古代イスラエル民族の初期の信仰の対象となる神は、カナンの神々の中…

ユダヤ教成立の歴史① ユダヤ教以前のカナンの宗教

これからユダヤ教の成立の歴史について書く。 古代イスラエルの王国の歴史については、以下の記事より連投している。 古代イスラエルの王国① 初期の古代イスラエルの歴史とダビデの史実性 ユダヤ教成立の歴史については、以下の本を参考にして書く。 一神教…

古代イスラエルの王国④ 南北王朝の滅亡

前回からの続き。 シリア・エフライム戦争 (北)イスラエル王国の滅亡 ユダ王国、滅亡まで シリア・エフライム戦争 前8世紀の初頭はアッシリアとアラム・ダマスコが勢力を弱体化していたため、(北)イスラエル王国は繁栄していた。 しかし、アッシリア王ティ…

古代イスラエルの王国③ 分裂時代 その2 シリアの強国アラム・ダマスコとの関係

前回からの続き。 シリアの強国アラム・ダマスコ ユダ王国に対する聖書外の初めての言及 前800年ころ シリアの強国アラム・ダマスコ シリア諸国を圧迫し続けたシャルマネセル3世(前858年 - 前824年)が亡くなると、その後 王位継承などの混乱が続き、アッシ…

古代イスラエルの王国② 分裂時代 その1 聖書外の最初の記録

前回からの続き。 (統一)イスラエル王国が実在したかどうかは分からないが、前9世紀に(北)イスラエル王国と南のユダ王国が存在していたことは確定しているようだ(以下「(北)イスラエル王国」は単に「イスラエル王国」と書く)。 紀元前830年代のレバント地…

古代イスラエルの王国① 初期の古代イスラエルの歴史とダビデの史実性

古代イスラエルの歴史については『旧約聖書』で詳細に語られているが、これ以外の史料は少ない。 この記事では、おもに長谷川 修一『聖書考古学』(中公新書/2013)を参考にして書いていく。 古代イスラエル史は、ユダヤ教などの宗教やイスラエル国の歴史と…

オリエント世界・4王国分立時代③ リディア(リュディア)

リディア(リュディア)は4王国分立時代の大国の一つ。 この国は硬貨(コイン)を製造・流通させた最初の国として有名(その他のことについてはほどんど言及されない)。 リディアは、前回のメディア王国と同じく、歴史的証拠(同時代の文字史料と考古学的…

オリエント世界・4王国分立時代② メディア王国

メディア王国はオリエント世界の大国であった国。 メディア王国およびメディア人については史料が少なく、歴史書に記述があってもほんの少しだ。 主としてヘロドトスなどギリシア人作家の記録によってメディアの歴史が伝えられているが、メディア人自身によ…

オリエント世界・4王国分立時代① 4王国分立時代/新バビロニア

新アッシリア滅亡後のオリエント世界について書く。 「4王国分立時代」 新バビロニア建国 2代目ネブカドネザル2世 ネブカドネザル2世の死後/滅亡 「4王国分立時代」 「4王国分立時代(または4国分立時代)」という用語がどれくらい普及しているか分か…

新アッシリア⑤ ニネヴェの図書館/言語/行政/アッシリアの強さ

これまで新アッシリアについての歴史の流れを追ったが、流れ以外の部分をここでは書く。 ニネヴェの図書館 言語・文字 行政 アッシリアの強さについて 位置と行政と歴代王の優位性 気候的要因 鉄器と騎兵 ニネヴェの図書館 ニネヴェはアッシリア地方の都市の…

新アッシリア④ アッシュルバニパル/アッシリア滅亡

前回からの続き。 エサルハドン(前681年 - 前669年) アッシュールバニパル(前669年 - 前627年頃) アッシュール・エティル・イラニ(前627年頃 - 前623年頃) シン・シュム・リシル シン・シャル・イシュクン(前623年頃 - 前612年頃) アッシュール・ウ…

新アッシリア③ センナケリブ/エサルハドン

前回からの続き。サルゴン2世の死後、センナケリブが引き継ぐ。 レヴァント(シリア・パレスチナ)攻略 バビロニアの反乱/バビロン破壊 エサルハドンの即位と内乱 バビロン再建 エジプト遠征 ティグラト・ピレセル3世(前744年 - 前727年) シャルマネセル5…

新アッシリア② サルゴン2世

前回からの続き。 今回はサルゴン2世について。 サルゴン2世 シリア・パレスチナ攻略/バビロニアの反乱/カルケミシュ攻略 ウラルトゥとの交戦/カナート アッシリアの勢力範囲(前700年頃) ティグラト・ピレセル3世(前744年 - 前727年) シャルマネセル…

新アッシリア① 先帝期/帝国期の幕開け

中アッシリア からの続き。 中アッシリアの記事で書いたことだが、前10世紀中頃までには、アッシリアの領土はメソポタミア北部のティグリス河流域周辺までに縮小してしまった。 この状況から失地回復を果たした王がアッシュール・ダン2世と次代のアダド・ニ…

中バビロニア カッシート王朝(バビロン第3王朝)/イシン第2王朝(バビロン第4王朝)

《中アッシリア》と同時期のバビロニア(南メソポタミア)の時代。 《古バビロニア時代③ バビロン第一王朝/古バビロニア時代の社会》の続き。 バビロン第一王朝が前1595年にヒッタイト王ムルシリ1世に滅ぼされる。ただしこの王朝は滅亡より前にハンムラビ王…

中アッシリア

アッシリア王国は長い歴史を持つ。今回は「中アッシリア」の歴史を書く(それより前の古アッシリアについては《古アッシリア時代① アッシリア(地域)/アッシリア(王国)の興亡》)。 アッシリア王国は前2000年紀前半に勃興していたが、前1760年頃にバビロ…

ヒッタイト新王国② 滅亡まで

《ヒッタイト新王国① シュッピルリウマ1世まで》からの続き。 シュッピルリウマ1世(紀元前1344年 - 紀元前1322年) アルヌワンダ2世(紀元前1322年 - 紀元前1321年) ムルシリ2世(紀元前1321年 - 紀元前1295年) ムワタリ2世(紀元前1295年 - 紀元前1272年…

ヒッタイト新王国① シュッピルリウマ1世まで

新王国時代の初期 シュッピルリウマ1世 ミタンニ攻略 対エジプト政策 シュッピルリウマの最期 新王国時代の初期 トゥドハリヤ1世(前1390年頃?)(以下の4代の王は、血縁関係や在位年代が不明) アルヌワンダ1世 トゥドハリヤ2世 ハットゥシリ2世 トゥドハリ…

ヒッタイト中王国

ヒッタイトの歴史は3分割され、それぞれ古王国・中王国・新王国となっている。中王国は混乱期のため、ほとんど言及されないが、Wikipedia(日本語版or英語版)に諸王のページがあるのでこれを使って中王国を書いてみる。 ちなみに、この歴史は中東またはオリ…

ミタンニ② オリエント世界の外交/滅亡

前回からの続き。 情報のほとんどがエジプト側の史料なので、エジプト中心の記事になってしまった。 エジプトと交戦(オリエント世界の始まり) エジプトの情勢について トトメス3世の遠征 エジプトとの同盟 オリエント世界初期の外交 ミタンニの滅亡 エジプ…

ミタンニ①

今回はミタンニについて。 オリエント世界の到来はエジプトがシリア・パレスチナに進出してきたことから始まるが、その時のシリア(とその周辺)の覇権国がミタンニだった。 ミタンニはフリ人(フルリ人)が建国した国。まずはフリ人の話から。 フリ人(フル…

古代オリエント世界の始まり(前二千年紀後半)

「オリエント」という言葉は複数の意味を持つが、(古代)オリエント世界といえば、エジプト文明とメソポタミア文明とその周辺国を合わせた広範囲の文明圏(地域、世界)を指す。 2つの文明はほそぼそとした交易関係はあったものの、長く文明的にも政治的に…

古アッシリア時代③ ヒッタイト古王国

今回はアナトリア半島のヒッタイトについて。 今回はヒッタイトの先史からヒッタイト古王国までを書く。 まずはアナトリア半島の地理から話を始める。 アナトリア半島の地理 アナトリアの先住民「ハッティ人」 ヒッタイトの先史時代 ヒッタイト古王国の建国 …

古アッシリア時代② シリアの興亡

今回は古アッシリア時代のシリアの話を書いていく。 マリ、ヤムハド、カトナについて書く。 ミタンニについては次回の中アッシリア時代で書く。 ソースはwikipedia。 マリ ヤムハドと首都アレッポ カトナとオロンテス川 オロンテス川 カトナ 出典:シャムシ…

古アッシリア時代① アッシリア(地域)/アッシリア(王国)の興亡

メソポタミアの北部(アッシリア)の時代区分で、前二千年紀前半を古アッシリア時代と呼ぶ。この時代は古バビロニア時代と同時代で対となる。 アッシリアは西方のシリア北部やアナトリア半島に交易ネットワークを持ち関係が深い。さらにはエジプトの交易も益…

古バビロニア時代③ バビロン第一王朝/古バビロニア時代の社会

今回はバビロン第一王朝の話。バビロン第一王朝は「ハンムラビ法典」で有名なハンムラビ王が属する王朝だ。 これと合わせて、古バビロニア全体を通しての法典と経済の話も書こう。 バビロン第一王朝 ハンムラビ メソポタミア統一 衰退から滅亡 古バビロニア…

古バビロニア時代② イシン・ラルサ時代の興亡

前回からの続き。 イシン第一王朝 ラルサ王朝 エシュヌンナ イシン第一王朝 上述のように、ウル第三王朝の将軍だったアムル人イシュビ・エラがイシン市で王となり前2017年に独立し「イシン第一王朝」が始まった。これによりイシン・ラルサ時代が始まる。 た…

古バビロニア時代① イシン・ラルサ時代とは?/アムル人が主役

古バビロニア時代は南メソポタミア(バビロニア)の時代区分の一つ。 時代区分を理解した後、シュメール人最後の王朝であるウル第三王朝の滅亡の前後から話を始める。 時代区分 この歴史の主役はアムル人 ウル第三王朝の滅亡:イビ・シンとイシュビ・エッラ …