歴史の世界

2021-01-01から1年間の記事一覧

ユダヤ教成立の歴史⑥ 旧約聖書の歴史観で見る王国時代 その2 預言者と王朝断絶の関係

前回からの続き。 以下の話は聖書外の文字史料で確認されていないことに注意。 エリヤ、王朝断絶を予言 バアル・ゼブブ(ベゼルブブの起源) 預言者エリシャとイエフのクーデタ エリヤ、王朝断絶を予言 エリヤとアハブ関連の話をもう一つ。 アハブがイズレエ…

ユダヤ教成立の歴史⑤ 旧約聖書の歴史観で見る王国時代 その1 ヤハウェ vs バアル

古代イスラエルの王国の歴史については、以下の記事より連投している。 古代イスラエルの王国① 初期の古代イスラエルの歴史とダビデの史実性 今回は、「旧約聖書の歴史観は当時の出来事をどのように観ていたのか」を書いていく。 ヤハウェの敵(ライバル?)…

ユダヤ教成立の歴史④ 「原イスラエル人」とヤハウェ神の出会い

前々回からの続き。前々回は《イスラエルの元来の神は「エル」》という話を書いた。 「原イスラエル人」 「原イスラエル人」の仮説 ヤハウェとの出会い 「原イスラエル人」 聖書の中から古代イスラエル人の源流を求めると、メソポタミアから来たアブラハムや…

ユダヤ教成立の歴史③ 【用語整理】イスラエル、ヘブライ、ユダヤ、ユダ、パレスチナ

いまさらだが、用語について整理する。一緒くたにされ、多くの場合、同じ意味で使われる言葉の由来などについて書いていく。 イスラエル 「イスラエル」については前回書いたとおり、「神(=エル)が戦う(または支配する)(=サーラー)」。「エル」はカ…

ユダヤ教成立の歴史② 《古代イスラエル民族の元来の神は「エル」》

前回はユダヤ教より前の宗教の話をした。 ユダヤ教はカナン(≒パレスチナ)で誕生したが、その前のカナンの宗教は、古代ギリシャのように多神教の神々の体系が信じられていた。 今回は、《古代イスラエル民族の初期の信仰の対象となる神は、カナンの神々の中…

ユダヤ教成立の歴史① ユダヤ教以前のカナンの宗教

これからユダヤ教の成立の歴史について書く。 古代イスラエルの王国の歴史については、以下の記事より連投している。 古代イスラエルの王国① 初期の古代イスラエルの歴史とダビデの史実性 ユダヤ教成立の歴史については、以下の本を参考にして書く。 一神教…

古代イスラエルの王国④ 南北王朝の滅亡

前回からの続き。 シリア・エフライム戦争 (北)イスラエル王国の滅亡 ユダ王国、滅亡まで シリア・エフライム戦争 前8世紀の初頭はアッシリアとアラム・ダマスコが勢力を弱体化していたため、(北)イスラエル王国は繁栄していた。 しかし、アッシリア王ティ…

古代イスラエルの王国③ 分裂時代 その2 シリアの強国アラム・ダマスコとの関係

前回からの続き。 シリアの強国アラム・ダマスコ ユダ王国に対する聖書外の初めての言及 前800年ころ シリアの強国アラム・ダマスコ シリア諸国を圧迫し続けたシャルマネセル3世(前858年 - 前824年)が亡くなると、その後 王位継承などの混乱が続き、アッシ…

古代イスラエルの王国② 分裂時代 その1 聖書外の最初の記録

前回からの続き。 (統一)イスラエル王国が実在したかどうかは分からないが、前9世紀に(北)イスラエル王国と南のユダ王国が存在していたことは確定しているようだ(以下「(北)イスラエル王国」は単に「イスラエル王国」と書く)。 紀元前830年代のレバント地…

古代イスラエルの王国① 初期の古代イスラエルの歴史とダビデの史実性

古代イスラエルの歴史については『旧約聖書』で詳細に語られているが、これ以外の史料は少ない。 この記事では、おもに長谷川 修一『聖書考古学』(中公新書/2013)を参考にして書いていく。 古代イスラエル史は、ユダヤ教などの宗教やイスラエル国の歴史と…

オリエント世界・4王国分立時代③ リディア(リュディア)

リディア(リュディア)は4王国分立時代の大国の一つ。 この国は硬貨(コイン)を製造・流通させた最初の国として有名(その他のことについてはほどんど言及されない)。 リディアは、前回のメディア王国と同じく、歴史的証拠(同時代の文字史料と考古学的…

オリエント世界・4王国分立時代② メディア王国

メディア王国はオリエント世界の大国であった国。 メディア王国およびメディア人については史料が少なく、歴史書に記述があってもほんの少しだ。 主としてヘロドトスなどギリシア人作家の記録によってメディアの歴史が伝えられているが、メディア人自身によ…

オリエント世界・4王国分立時代① 4王国分立時代/新バビロニア

新アッシリア滅亡後のオリエント世界について書く。 「4王国分立時代」 新バビロニア建国 2代目ネブカドネザル2世 ネブカドネザル2世の死後/滅亡 「4王国分立時代」 「4王国分立時代(または4国分立時代)」という用語がどれくらい普及しているか分か…

新アッシリア⑤ ニネヴェの図書館/言語/行政/アッシリアの強さ

これまで新アッシリアについての歴史の流れを追ったが、流れ以外の部分をここでは書く。 ニネヴェの図書館 言語・文字 行政 アッシリアの強さについて 位置と行政と歴代王の優位性 気候的要因 鉄器と騎兵 ニネヴェの図書館 ニネヴェはアッシリア地方の都市の…

新アッシリア④ アッシュルバニパル/アッシリア滅亡

前回からの続き。 エサルハドン(前681年 - 前669年) アッシュールバニパル(前669年 - 前627年頃) アッシュール・エティル・イラニ(前627年頃 - 前623年頃) シン・シュム・リシル シン・シャル・イシュクン(前623年頃 - 前612年頃) アッシュール・ウ…

新アッシリア③ センナケリブ/エサルハドン

前回からの続き。サルゴン2世の死後、センナケリブが引き継ぐ。 レヴァント(シリア・パレスチナ)攻略 バビロニアの反乱/バビロン破壊 エサルハドンの即位と内乱 バビロン再建 エジプト遠征 ティグラト・ピレセル3世(前744年 - 前727年) シャルマネセル5…

新アッシリア② サルゴン2世

前回からの続き。 今回はサルゴン2世について。 サルゴン2世 シリア・パレスチナ攻略/バビロニアの反乱/カルケミシュ攻略 ウラルトゥとの交戦/カナート アッシリアの勢力範囲(前700年頃) ティグラト・ピレセル3世(前744年 - 前727年) シャルマネセル…

新アッシリア① 先帝期/帝国期の幕開け

中アッシリア からの続き。 中アッシリアの記事で書いたことだが、前10世紀中頃までには、アッシリアの領土はメソポタミア北部のティグリス河流域周辺までに縮小してしまった。 この状況から失地回復を果たした王がアッシュール・ダン2世と次代のアダド・ニ…

中バビロニア カッシート王朝(バビロン第3王朝)/イシン第2王朝(バビロン第4王朝)

《中アッシリア》と同時期のバビロニア(南メソポタミア)の時代。 《古バビロニア時代③ バビロン第一王朝/古バビロニア時代の社会》の続き。 バビロン第一王朝が前1595年にヒッタイト王ムルシリ1世に滅ぼされる。ただしこの王朝は滅亡より前にハンムラビ王…

中アッシリア

アッシリア王国は長い歴史を持つ。今回は「中アッシリア」の歴史を書く(それより前の古アッシリアについては《古アッシリア時代① アッシリア(地域)/アッシリア(王国)の興亡》)。 アッシリア王国は前2000年紀前半に勃興していたが、前1760年頃にバビロ…

ヒッタイト新王国② 滅亡まで

《ヒッタイト新王国① シュッピルリウマ1世まで》からの続き。 シュッピルリウマ1世(紀元前1344年 - 紀元前1322年) アルヌワンダ2世(紀元前1322年 - 紀元前1321年) ムルシリ2世(紀元前1321年 - 紀元前1295年) ムワタリ2世(紀元前1295年 - 紀元前1272年…

エジプト第28、29、30、31王朝

エジプト第27王朝とは、実際には、ペルシア帝国支配下の属州の状態だった。 第28王朝の王はペルシア勢力をエジプトから追い出して、全エジプトを支配したが、その後はエジプト国内での争いが続発した。 第28王朝 第29王朝 第30王朝 第31王朝 第28王朝 第28王…

エジプト第27王朝

前回の続き。 第26王朝はペルシアの侵略の前に倒れ、全エジプトはペルシアの支配下に入った。第27王朝とはペルシア支配下に置かれた時代を指す。よってこの王朝の諸王はペルシア王を指す。 ペルシア王とサトラップ 平和と反乱 第27王朝の終わり ペルシア王と…

エジプト第26王朝② 滅亡まで

前回からの続き。 4代目アプリエス 5代目イアフメス2世 4代目アプリエス 3代目の治世はわずか6年で終わり、前589年にアプリエスが継ぐ。 この治世のうちにユダ王国滅亡(前586年)という事件がある。 エジプトと新バビロニアは長いあいだパレスチナで縄…

エジプト第26王朝① ネコ2世まで

前回からの続き。 ネコ1世(先代?) プサメティコス1世(第26王朝初代) 2代目ネコ2世 広く通用している王名を括弧内に記す。 ネコ1世(前672年頃 - 前664年頃) プサムテク1世(プサメティコス1世 前664年 - 前610年) ネカウ2世(ネコ2世 前610年 - 前59…

エジプト末期王朝/第25王朝

エジプト末期王朝 第25王朝(ヌビア王朝) 先史からエジプト統一まで 2代目シャバカのエジプト再統一 4代目タハルカと対アッシリア戦争 最後の王タヌトアメン エジプト末期王朝 エジプト末期王朝の初めの設定については諸説あるが、ここではヌビア王朝(第…

【読書ノート】倉山満『天皇がいるから日本は一番幸せな国なのです 世界最古の立憲君主制の国』 その4

前回からの続き。 第4章と「おわりに」では、皇位継承問題を含む現代の皇室について書かれているが、ここでは基礎的な知識を書きとどめておく。 先例、男系、直系 「旧宮家復帰」という課題 先例、男系、直系 皇室を語る時に最も大事なのは、先例です。そう…

【読書ノート】倉山満『天皇がいるから日本は一番幸せな国なのです 世界最古の立憲君主制の国』 その3

前回からの続き。 天皇の役割 平時の役割 有事の役割 「統帥権の独立」「統帥権干犯問題」について 統帥権干犯問題の後遺症 統帥権の独立と天皇の関係 天皇の役割 天皇の役割についてはいろいろあるのだが、ここでは本書に書いてある政治と憲法に関わる話を…

【読書ノート】倉山満『天皇がいるから日本は一番幸せな国なのです 世界最古の立憲君主制の国』 その2

前回からの続き。 「天皇は国家元首」を歪める人たち 《宮沢俊義 ── 「象徴」を曲解した憲法学者》 「主権」とは何か? 帝国憲法の第1条から4条まで 「天皇は主権者だったのに、象徴になることによって主権を失った」という曲解 「統治」と「主権」の違い …

【読書ノート】倉山満『天皇がいるから日本は一番幸せな国なのです 世界最古の立憲君主制の国』 その1

天皇がいるから日本は一番幸せな国なのです作者:倉山 満宝島社Amazon 2020年(令和2年)1月に 宝島社より出版。 出版社内容情報/目次 君主のいる国 過去の権力移譲:嵯峨天皇 出版社内容情報/目次 出版社内容情報 2019年の即位の礼、大嘗祭。2020年には…