歴史の世界

中国_秦代/楚漢戦争

「秦代/楚漢戦争」カテゴリーの主要な参考図書およびウェブサイト

「秦代/楚漢戦争」のカテゴリはこれで終わり。 以下はこのカテゴリーで利用した主な参考図書およびウェブサイト。 《鶴間和幸/中国03 ファーストエンペラーの遺産 秦漢帝国/講談社/2004》《鶴間和幸/人間・始皇帝/岩波新書/2015》 岡田英弘/この厄介…

楚漢戦争㉘ まとめ その4/止

第六幕:雌雄決す 広武山での2つの出来事 広武山で項羽と劉邦が呼びかけあう。 出典:藤田勝久/項羽と劉邦の時代/講談社選書メチエ/2006/p187 項羽は一騎打ちを要求したり、人質の父・嫁を殺すと脅したりするが劉邦は応じない。劣勢と優勢を自認してい…

楚漢戦争㉗ まとめ その3

今回は項羽政権の崩壊と劉邦の再登場。 項羽は天下を取ったはいいものの何の準備もしていなかったため、その体制は簡単に瓦解してしまった。 中華世界は再び動乱へと戻っていったが、項羽の軍門に降っていた劉邦はこの機に乗じて関中を制圧し、項羽に宣戦布…

楚漢戦争㉖ まとめ その2

前回からの続き。 今回は項羽と劉邦がいよいよ歴史の中心人物になる時期の話。 有名な鴻門の会にも触れる。 第三幕:懐王政権と鉅鹿の戦い 懐王政権 各地の状況 秦軍と趙軍の動き 楚軍、攻撃を開始する 別働隊の劉邦軍 「関中王」劉邦 鴻門の会 第三幕:懐王…

楚漢戦争㉕ まとめ その1

これまで長々と楚漢戦争について書いてきたが、今回はそのまとめを書く。(といっても複数の記事になってしまう)。 暦の問題 第一幕:陳勝・呉広の乱 反乱の原因 反乱の始まりと終わり 第二幕:項羽と劉邦(と項梁)の登場 楚漢戦争の起点は定説がないよう…

楚漢戦争㉔ 戦後の韓信の処遇

楚漢戦争後、漢帝国成立の後、韓信は粛清される。 信頼されなかった韓信 戦後の韓信の転落 韓信に同情する司馬遷 『史記』における韓信の列伝である淮陰侯列伝には以下の一文が書いてある。 項羽已破,高祖襲奪齊王軍 出典:史記/卷092 - Wikisource (項羽…

楚漢戦争㉓ 雌雄決す ── 垓下の戦い

形成は劉邦陣営に大きく傾いたが、ここから一気に勝負に向かわずに、この後しばらく戦争は続く。 以下に、雌雄が決する垓下の戦いまでを書く。 広武山での直接対決 広武山での停戦協定 垓下の戦い 異説を考える 劉邦軍が単独で項羽に攻めかかった 停戦協定直…

楚漢戦争㉒ 逆転劇

前回の滎陽城陥落の後からの劉邦の逆転劇を書いていく。 劉邦軍の反撃 韓信の斉掌握 韓信、楚の大軍を破る 劉邦、圧倒的優位に立つ 韓信以外の活躍 陳平 彭越 蕭何 出典:藤田勝久/項羽と劉邦の時代/講談社選書メチエ/2006/p164 前回、滎陽城から逃走し…

楚漢戦争㉑ 滎陽の攻防

前回書いた彭城の戦いにおいて劉邦は惨敗し、劉邦自身は辛くも彭城から逃げ切って態勢を整えようとしていた。 彭城の戦いが劉邦と項羽の第一番目の直接対決とすれば、滎陽(けいよう)の戦いが第二番目の戦いとなるのだが、今回はその間の情勢について書いて…

楚漢戦争⑳ 彭城の戦い

いよいよ彭城の戦い。漢王劉邦が西楚覇王項羽に宣戦布告して、楚漢戦争の本番が始まる。 ただし、楚漢戦争の始まりの時期は諸説あるようだが、このブログでは、劉邦が項羽に対して宣戦布告したこの時点を楚漢戦争の起点とする。そして彭城の戦いの起点も こ…

楚漢戦争⑲ 劉邦の躍進

前回までは項羽政権の全体を見てきたが、今回は劉邦の分封後の展開を見ていく。 劉邦の分封 巴蜀 漢中 韓信登場 劉邦の関中侵攻 漢の社稷を建てる 魏の攻略 陳平の劉邦陣営の加入 彭城の戦いへ 劉邦の分封 巴蜀 懐王は鉅鹿の戦いの前に諸将の面前で「先に関…

楚漢戦争⑱ 項羽政権の瓦解 後編

旧秦地域 韓・魏 楚地域 年表 彭城の戦いの直前までの情勢 旧秦地域 まず、劉邦は巴蜀と漢中を、秦の降将3将にそれぞれ関中を3分割して分封された。しかし、8月になると、劉邦は関中を征服し、旧秦地域全土をほとんど手中に収める。 項羽は激怒するのだが…

楚漢戦争⑰ 項羽政権の瓦解 前編

前回からの続き。 漢元年(前206年)1月に項羽による論功行賞(十八王分封)が行われ、いちおう項羽政権が始まる。しかし早くも5月に斉において反乱が起き、ここから項羽政権は崩壊の一途を辿(たど)ることになる。 漢2年(前205年)4月に反項羽軍によ…

楚漢戦争⑯ 十八王の分封と項羽政権

前回からの続き。 項羽の咸陽入場 十八王の分封 弱かった項羽政権 項羽の咸陽入場 鴻門の会により劉邦が全面降伏あるいは全面服従をした後、項羽と諸将は咸陽に入った。 『史記』において、劉邦が寛容な態度を示したのと対象的に項羽は残虐行為を繰り返した…

楚漢戦争⑮ 鴻門の会と懐王の約

前回の続き。 項羽の怒りを買い絶体絶命の劉邦は、項羽の陣営に訪問して弁明を行った。その場が有名な鴻門の会だ。 この話を理解する前に前提となる話である懐王の約もこの記事で扱う。 懐王の約 鴻門の会 懐王の約 鴻門の会の話に入る前に「懐王の約」の話…

楚漢戦争⑭ 関中における劉邦と項羽の確執

前回からの続き。 『史記』の中の関中における劉邦と項羽の行動は対照的だ。劉邦の寛容に対して項羽は非情の人に描かれている。この内容は今日の研究者によって少なからず疑われている。 前漢時代の人である司馬遷がこのように書くのは当然と思うのだが、そ…

楚漢戦争⑬ 劉邦、項梁政権加入から関中入りまで

前回からの続き。 劉邦は項梁の下に集まり、項梁から兵を借りてようやく故郷の豊邑を奪還した。 この後、劉邦は項梁の客将(上下関係がはっきりした同盟関係を持つ)として項梁軍に参加する。 この記事に関連する項梁・項羽を中心とする動きについては以下の…

楚漢戦争⑫ 劉邦、決起す

前回に続き、劉邦について書く。今回はいよいよ決起の場面を書く。」 決起 初戦からの順調な出だし 故郷の豊邑が寝返る 秦嘉を頼る 張良との出会い 項梁の楚国に参加する 決起 秦の二世皇帝の元年(紀元前209年)7月、陳勝・呉広の乱が起こった。この乱は陳…

楚漢戦争⑪ 劉邦、公務員から盗賊の親分へ

今回も劉邦について。 前々々回の記事 *1 で劉邦の生まれ育ちについて書いたが、今回はこの続きを書いていく。 今回もテキストは佐竹靖彦『劉邦』。 劉邦作者:佐竹 靖彦発売日: 2005/05/11メディア: 単行本 亭長になる 盗賊の親分へ 亭長になる 劉邦は裏の社…

楚漢戦争⑩ 劉邦の人柄

劉邦が項羽に勝った理由として「項羽から劉邦に人材が流れた」ということがある。人材が流れた結果が有名な四面楚歌そして死に繋がる。 人柄の差が二人の明暗を分けたということだが、ここでは劉邦の人柄について書いていく。 気前が良い 気軽に話しかけられ…

楚漢戦争⑨ 劉邦を取り巻く環境

前回に続いて劉邦について書いていく。 今回は劉邦を取り巻く環境について。 今回もテキストは以下の本を使う。 劉邦作者:佐竹 靖彦発売日: 2005/05/11メディア: 単行本 劉邦の故郷とその周辺の地図 「フロンティア」に流入する人々とアウトロー 反秦勢力の…

楚漢戦争⑧ 劉邦の生まれ育ち

前回まで項梁・項羽を中心の歴史を書いてきたが、今回から複数の記事に分けて劉邦について書いていく。 テキストは以下の本。 劉邦作者:佐竹 靖彦発売日: 2005/05/11メディア: 単行本 劉邦の名前について 劉邦の生年 劉邦の周辺は任侠の世界 劉邦の名前につ…

楚漢戦争⑦ 鉅鹿の戦い 後編

前回からの続き。 二世3年(前207年)12月 項羽軍到着前の状況 項羽軍の攻撃 戦後 漢元年(前206年) 暦と元号について 項羽と劉邦の対立 二世3年(前207年)12月 項羽軍到着前の状況 この12月に項羽軍が秦軍に攻め込むのだが、ここで項羽が攻め込む前の状…

楚漢戦争⑥ 鉅鹿の戦い 前編

さて、いよいよ鉅鹿の戦い。 鉅鹿の戦いは趙国の鉅鹿での戦闘。秦と楚の勢いが逆転する重要なイベント。そして項羽が楚国の実権を握り、それだけでなく、反秦勢力のほとんどを従える存在となる。 この戦いは秦帝国から前漢帝国の過渡期の中でサラッと流され…

楚漢戦争⑤ 項梁の死と楚国再編

今回は、項梁の突然の戦死とその後の楚国の再編について。 項梁の死後、項羽がスムーズに後を継いだわけではなかった。今回は項羽が権力を握る前までの話。 項梁、対秦戦に動く 項梁の死 楚国、国の再編を余儀なくされる 項梁、対秦戦に動く 項梁の動向につ…

楚漢戦争④ 各地の動き

前回は項梁の快進撃を書いたが、ここで一旦、張楚国滅亡後の各地の情勢を整理する。 各地の情勢(1月以降) 魏での戦い 斉の政変 まとめ 各地の情勢(1月以降) 話を簡単にするために戦国時代末期の七国の地図を基(もと)に話を進める。 (陳勝・呉広の乱…

楚漢戦争③ 雪だるま式に増える項梁勢力

前回からの続き。 項梁・項羽は精鋭8千兵を引き連れて、会稽郡を出て長江を渡って北上する。 反秦勢力を吸収 反秦勢力の代表格・秦嘉との対決 楚国建国 反秦勢力を吸収 項梁は地元の会稽郡を平定し郡守(郡のトップ)となり、さらに(詐称だが)張楚国の上…

楚漢戦争② 項梁・項羽の決起

陳勝・呉広の乱に呼応するように項梁・項羽が決起した。 秦を滅ぼして、いちおう天下統一を果たしたのは「西楚の覇王」と呼ばれた項羽だが、決起した時は叔父の項梁の副将だった。 項梁・項羽の決起は項梁を中心に話を進めよう。 項羽作者:佐竹 靖彦メディア…

楚漢戦争① 陳勝・呉広の乱

楚漢戦争は「項羽と劉邦の戦い」とも呼ばれ、劉邦が項羽に対して反旗を翻す前206年から始まるのだが、ここではその前段として最も重要な陳勝・呉広の乱から話を始める。 陳勝・呉広の乱 反乱決起から陳県入城まで 「張楚」建国 反乱の全国波及 趙 燕 斉 魏 …

秦代⑭:秦代のまとめ

秦代あるいは秦朝は始皇帝による中華統一から滅亡までの期間を指す。前221年から前206年までのわずか15年間だが、始皇帝が築いた統治システムは次代の前漢に継承されてその後の王朝の統治システムの土台となっている。 政策 先秦と秦代以降の違い 焚書政策 …