歴史の世界

地政学・戦略学・国際政治

ルトワック先生の「パラドキシカル・ロジック」と孫子

エドワード・ルトワック『戦争にチャンスを与えよ』を読んだが、この本で最も重要だと思われる事柄は「パラドキシカル・ロジック(逆説的論理)」だ。 第6章「パラドキシカル・ロジックとはなにか ── 戦略論」を二度三度と読んでみたら「これって《陰陽》だ…

「武器なき戦争」における"武器"としての国際法

「武器なき戦争」とは平時の戦争。すなわち、ロケット弾が飛び交うような戦時の戦争ではなく、外交論戦やプロパガンダが飛び交う平時の戦争を指す。 この「武器なき戦争」の中で"武器"の一つが国際法だ。 例えば、アメリカはウサマ・ビンラディン殺害(2011)…

「文明の海洋史観」と「勤勉革命」と「ガラパゴス化」

「文明の生態史観」が古典として読みつがれ、「文明の〇〇史観」という本がいくつも出るようになった。そのうちの一つが川勝平太『文明の海洋史観』。 この本の中で「勤勉革命」が紹介されている。以下に書く当ブログの記事は「勤勉革命」のほうがメインとな…

文明の生態史観

「文明の生態史観」について書く。発表当時は唯物史観に対抗するものとして人々に迎えられたが、現在は文明論の先駆そして古典として語り継がれている。 説明 「文明の生態史観」と地政学の比較 地図の比較 性質 「西には手を出すな」 説明 「文明の生態史観…

順次戦略と累積戦略

奥山真司氏が順次戦略と累積戦略という用語を使って啓発関連の記事を書いていたので、これを使って順次戦略と累積戦略がどういうものなのか書き留めておく。 何かを戦略的に成功させようとする場合、その全てはたった2つのやり方に分けられる。2つとは「順…

3つのイメージ/ネオリアリズム

「3つのイメージ」はケネス・ウォルツ氏が考え出した国際政治の分析方法(1959年『人間・国家・戦争ー国際政治の3つのイメージ』)。 浅いことしか書けないが、備忘録として。 3つのイメージ ネオリアリズム バランス・オブ・パワー 米中衝突は国際システ…

プロパガンダのテクニック一覧 その3/止(O~)

前回からの続き O, P, Q(5) R(3) S(5) T(4) U, V, W(3) O, P, Q(5) Obfuscation, intentional vagueness, confusion:難語化。難しい言葉や定義が曖昧な言葉を使って議論をはぐらかす。 Operant conditioning:オペラント条件づけ *1。 子…

プロパガンダのテクニック一覧 その2(E~L)

前回からの続き。 E(3) F(6) G(4) H, I(3) L(5) M, N(5) E(3) Euphemism:婉曲表現。不快にさせる恐れのあるもの、タブー視されるものを別の言葉で表現する。 【例】「死ぬ→他界する」「断る→遠慮する」 また、「お手数ですが」「ご足…

プロパガンダのテクニック一覧 その1(A~D)

今回はプロパガンダのテクニックについて。 プロパガンダのテクニックを知れば、ダマサれることが減るだろうし、仕掛けた側の指向も読むことができる。逆にプロパガンダを仕掛けることもできるだろう。 さて、wikipedia英語版に《Propaganda techniques》と…

プロパガンダ(3)プロパガンダと「宣伝戦」

前回はエドワード・バーネイズの話をした。バーネイズは「プロパガンダ=PR(広報宣伝)」と主張した。彼はプロパガンダをビジネスで使うために最新の注意をはらい、「企業の宣伝活動は、企業が抱いている真の目的を覆い隠すためのまやかしであってはならな…

プロパガンダ(2)プロパガンダとエドワード・バーネイズ

『Propaganda』(1928) を著したエドワード・バーネイズは「プロパガンダの父」と呼ばれることもある。 ただ、『Propaganda』が世に出る前にはプロパガンダは使われていなかったかといえばそうではない。古代からプロパガンダはあったし、近代に限定しても第…

プロパガンダ(1)「プロパガンダ」とはなにか

「プロパガンダ」という言葉をよく見聞きするが、その意味をちゃんと分かっていなかったので、色々と調べてみた。 「プロパガンダ」とは何か 「アジテーション」との比較 まとめ プロパガンダとPR(マーケティング)の違い 細分化(セグメンテーション)とイ…

【戦略学】フィクションその2

前回からの続き。 戦略とフィクション 起業家とフィクション ウソの分類 陰謀論とフィクション 戦略とフィクション 奥山氏がなぜフィクションにこだわるのか。以下の動画で語っている。この動画の中で戦略とフィクションの関係についても語っている。 「戦略…

【戦略学】フィクション その1

「現実を見ろ!」と主張するリアリストの奥山真司氏が、一方で「フィクションは大事だ」と言っている。興味深い。 どうしてフィクションが重要なのかを以下に書き留めておく。 (フィクションと戦略の関係の話は次回にする。) この記事における「フィクショ…

【戦略学】リアリズム(とリベラリズム)

リアリズムが戦略学のカテゴリーに入るのか、正直わからないのだが、とりあえず戦略を立てる上で知っておかなければならない用語らしいので、ここに書いておく。 ここで書くことは表面的なことだけなので、ガッツリ学びたい人は 奥山真司氏の音声教材 で勉強…

【戦略学】勝つためにはルールを作る権力を握らなければならない

かつて国際スポーツの中で日本が強かった競技で、ルールを変更されて金メダルが獲れなくなったという話がいくつもある。日本人は「欧米人はズルい!」という。私だってそういう思いはある。しかし、そう言い続けるだけでは同じことが続くだけになる。 ルール…

【戦略学】戦略と戦術/戦略の階層

地政学に引き続いて、戦略学について書いていく。その理由は地政学者の奥山真司氏が一般人向けに説明してくれていることと、日本にとって最も足りない部分であることという点にある。 そんなわけで、戦略学と言っても奥山氏が紹介する入り口の部分だけを勉強…

【地政学】チョークポイントと拠点

チョークポイントと拠点。地政学で使われる用語。他分野でも使われる言葉だが、地政学ではどういった意味合いを持つのか? チョークポイント 拠点 チョークポイント 地政学者の奥山真司さんが以下の動画でチョークポイントについて説明している。 2.地政学…

【地政学】バランス・オブ・パワーと分割統治(ディバイド・アンド・ルール)

国際時事問題のニュースでたまに見聞きする用語。バランス・オブ・パワーと分割統治(ディバイド・アンド・ルール)。 これらは地政学関連の言葉らしい(国際政治・国際関係論・世界史などにも出てくる)。 分割統治(ディバイド・アンド・ルール) バランス…

【地政学】ハートランドとリムランド

前回からの続き。 今回はハートランドとリムランドについて。 地政学の開祖ハルフォード・マッキンダーと「ハートランド」 「リムランド」の発案者ニコラス・スパイクマン まとめ 地政学の開祖ハルフォード・マッキンダーと「ハートランド」 出典:出典:"The…

【地政学】ランドパワーとシーパワー

奥山真司氏によれば *1、 18世紀末から19世紀初頭にかけてマハン(アメリカ)がランドパワーとシーパワーの概念を提唱し、マッキンダー(イギリス)がハートランドという概念を提唱した。 そして第二次大戦の時期にスパイクマン(アメリカ)によってリムラン…

地政学と地理と日本の関係(敗戦後、GHQに地理の授業を禁止された)

地政学はGeopoliticsの訳語。Geoが地理学を、politicsが政治学を表す。だから地政学とは地理学を応用して政治に使う学問である、と言っても間違いではないとは思うが、この説明では誰も納得しないだろう。 この記事では、地理学とは何かについてと、日本にお…

「地政学とは何か」を考える

「地政学とは何か」を考える。 地政学とは何か マクロ的な地政学 非マクロ的な地政学 終わりに 地政学とは何か 地政学というのは簡単に言うと、ある国が他国/他地域を支配するためのツールの一つである。 「ある国」というのは主にアメリカやロシア・中国の…

「地政学」シリーズを書く

今回から地政学について書いていく。 「地政学」の需要の高まり 「地政学」を簡単に説明すると... 「地政学」の需要の高まり ニュースで「地政学的に〇〇だ」みたいな形でたまに見聞きする。例えば「日本にとって台湾は地政学的に重要だ」など。「台湾」の代…