歴史の世界

「幕末の金(ゴールド)の海外大量流出事件」のその後について

前回、「幕末の金(ゴールド)の海外大量流出事件について」という記事を書いたが、今回は、その後の話を書く。 金(というか小判)の海外流出は数十年前までに想定されていたよりも少ない、というのが最近では有力になっている、ということは前回の記事で紹…

幕末の金(ゴールド)の海外大量流出事件について

幕末の通貨問題(ばくまつのつうかもんだい)とは、日米和親条約締結後に決められた日本貨幣と海外貨幣の交換比率に関する問題。日本と諸外国の金銀交換比率が異なったため、日本から大量の金が流出した。 出典:幕末の通貨問題 - Wikipedia この話を知った…

【読書ノート】江崎道朗 『なぜこれを知らないと日本の未来が見抜けないのか 政治と経済をつなげて読み解くDIMEの力』

なぜこれを知らないと日本の未来が見抜けないのか 政治と経済をつなげて読み解くDIMEの力作者:江崎 道朗KADOKAWAAmazon 「DIME」(後述)については、数年前より著者が日本に普及しようと努めている言葉だ。本書は、「DIME」という言葉については割りと簡単に…

【読書ノート】上念司 『経済で読み解く地政学』

経済で読み解く地政学 (扶桑社BOOKS)作者:上念 司扶桑社Amazon 後述の出版社による紹介と目次を見れば分かる通り、「地政学」について詳しく書いてある本ではなく、国際情勢と日本(と日本人である読者)が採るべき道について書いてある。 出版社による…

【読書ノート】内藤 陽介『今日も世界は迷走中 - 国際問題のまともな読み方』

今日も世界は迷走中 - 国際問題のまともな読み方 -作者:内藤 陽介ワニブックスAmazon 2021年に出版された『今日も世界は迷走中 - 国際問題のまともな読み方』の続編(この本についてもブログを書いている)。 【新聞広告】8月4日(金) 産経新聞に広告を掲載し…

古代ギリシア 前古典期③(交易・植民都市・軍事)

交易 植民都市 軍事(重装歩兵と密集陣形) 地中海の交易はフェニキア人が先行していた。ギリシア人は彼らから多くを学んで後を追った。文字もその一つだが、交易も植民都市の建設も先行した彼らから学んだはずだ。 交易 ギリシアの輸出品はオリーブ油とブド…

古代ギリシア 前古典期②(アルファベットの誕生)

アルファベットは古代ギリシア人が開発した。 アルファベットとはなにか ギリシア人のアルファベット開発 文字普及の効用:アイデンティティの形成 アルファベットとはなにか 古代ギリシア人がアルファベットを発明したことを書く前に、まずアルファベットと…

古代ギリシア 前古典期(アルカイック期)①(ポリスの誕生)

古代ギリシアの時代区分の話 ポリスの誕生 ポリスの特質 アクロポリスとアゴラ 古代ギリシアの時代区分の話 私たちが「古代ギリシア」と聞いてイメージするのはポリスが林立する小さな世界。 そのような世界は暗黒時代の後に起こり、アレクサンドロス大王の…

古代ギリシアの暗黒時代(初期鉄器時代)

前回からの続き。 歴史区分:「暗黒時代」と「初期鉄器時代」 暗黒時代(初期鉄器時代)の中の時代区分 各時代の様子 歴史区分:「暗黒時代」と「初期鉄器時代」 前1200年頃にミケーネ文明は崩壊したことは前回書いた。ミケーネ文明はエーゲ文明の最後の一つ…

エーゲ文明④ ミケーネ文明の構成/崩壊

前回からの続き。 ミケーネ文明の担い手は誰か?(線文字Bについて) 崩壊/「海の民」 ミケーネ文明の担い手は誰か?(線文字Bについて) ミノア文明の担い手(支配者層)はおそらくはオリエント出身の人たちだったのに対し、ミケーネ文明のほうはインド・…

エーゲ文明③ 後期青銅器時代/ミケーネ文明の誕生

前回からの続き。 前回書いたミノア文明の後継がミケーネ文明。 ミケーネ文明とは? 墓から分かること:その①副葬品の多さと交易ネットワークの広がり 墓から分かること:その②新しい文化の流入 墓から分かること:その③権力集中の度合い ミケーネ文明とは?…

エーゲ文明② 中期青銅器時代/ミノア文明の興亡

前回からの続き。 ミノア文明の始まり(初期青銅器時代) 盛期(前2000年~) ミノア文明の担い手は誰か?(線文字Aについて) ミノア文明の最盛期と崩壊 同時代の他地域(ミノア文明の影響その他) 初期青銅器時代が終焉し、中期青銅器時代が始まる。そして…

エーゲ文明① 古代ギリシア最古の文明の誕生/初期青銅器時代

古代ギリシアを書き始める。 まずはその最古の文明、エーゲ文明(エーゲ海文明)から。 古代ギリシア 地中海への展開―諸文明の起源〈7〉 (学術選書)作者:周藤 芳幸京都大学学術出版会Amazon エーゲ文明については周藤芳幸氏の主張を多く採用してくことにする…

「古代ギリシア」シリーズを書く

これから「古代ギリシア」シリーズを書く。これらの記事は「古代ギリシア」のカテゴリーの保存する。 地域的範囲 出典:木村精二他監修/詳説世界史図録/山川出版社/2014/p18 古代ギリシアの範囲は、基本的には左下の地図にある地域、すなわちエーゲ海の…

戦後直後の日本経済について⑤ 歴史を歪めるもの

前回からの続き。 歴史を歪めるもの 左翼史観の残滓 財政均衡派(財政緊縮派)の人たち 有沢広巳(有澤廣巳) 小説『官僚 たちの夏』 歴史を歪めるもの 戦後経済史は嘘ばかり 日本の未来を読み解く正しい視点 PHP新書作者:高橋 洋一PHP研究所Amazon ここまで…

戦後直後の日本経済について④ ドッジ・ラインという失敗

前回からの続き。 復興金融金庫とインフレ 日本の景気回復傾向を潰したドッジ・ライン 朝鮮特需 復興金融金庫とインフレ 前回に貼り付けた引用を再掲。 終戦後の経済復興策として1946年12月に第1次吉田内閣が傾斜生産方式を閣議決定した。[中略]それを賄う…

戦後直後の日本経済について③ 石橋湛山の経済政策方針

前回からの続き。 傾斜生産方式と復興金融金庫と復金インフレの問題設定 石橋湛山の経済政策 吉田第一次内閣の直前の経済状況 石橋大蔵大臣の経済政策の方針 GHQの対応への疑問 経済回復の始まり 傾斜生産方式と復興金融金庫と復金インフレの問題設定 以下は…

戦後直後の日本経済について② 「傾斜生産方式」の神話

前回からの続き。 「傾斜生産方式」の神話 「日本弱体化計画」からの方針転換 ~逆コース~ 日本経済復興の始まり 「傾斜生産方式」の神話 戦時中、日本の国富と生産力の多くは戦争に注ぎ込まれた。そして国の窮乏化と悪性インフレが進んで終戦に至る。 そし…

戦後直後の日本経済について① アメリカ・GHQによる日本弱体化計画

通説 アメリカによる日本弱体化計画 戦全日本を振り返る ~戦前日本は資本主義国だった~ 通説 今までの「教科書」的な占領期の経済政策のイメージは次のようなものだろう。 戦争で廃墟になった日本経済は、GHQによる「経済民主化」――財閥解体、労働の民主化…

管子(4)(重令篇/法法篇/五輔篇/七法篇)/止

前回からの続き。 重令篇 法法篇 五輔篇 徳 義 礼 法 権 七法篇 重令篇 この篇は管仲が書いたものではないとされる。 訳者によれば、矛盾が少なくない『管子』の中で比較的に論旨が整然とされている(p209)。 「古代氏族社会」の名残りをとどめる春秋時代、…

管子(3)(立政篇/乗馬篇/軽重篇)

前回からの続き。 立政篇 乗馬篇 軽重篇 塩の専売 夷狄掌握の法 立政篇 立政篇も管仲が書いたと言われている。 立政篇は行政上の細則や心得のようなものを集めたものだ。 その中で、訳者が注目している一つが、管仲が「重農主義者」であったということだ。 …

管子(2)(形勢篇/権修篇)

前回からの続き。 形勢篇 形勢=天の道 「君、君たらざれば、臣、臣たらず」 権修篇 「天下を為(おさ)めんと欲する者は……」 形勢篇 形勢篇は、牧民篇と同じく、管仲が書いたと言われる経言9篇のうちの一つ。ただし形勢篇はもともとは山高篇と言われていた…

管子(1)(『管子』について/牧民篇)

今回は以下の本をテキストとした。 管子 (中国の思想)徳間書店Amazon 『管子』について 牧民篇 「倉廩実つれば礼節を知り、衣食足りれば栄辱を知る」 四維 四順 理念を明確にせよ 『管子』について 『管子』は春秋時代の有名な大宰相・管仲が書いた書である…

「 中東_メソポタミア文明②」カテゴリーの主要な参考図書

「 中東_メソポタミア文明②」シリーズ終了。 「メソポタミア文明①」カテゴリーはシュメール人最後の王朝ウル第三王朝の滅亡まで書いた。このカテゴリーはその続きとなる。 メソポタミア文明の終わりの時期について。以下は『古代メソポタミア全史』(中公新…

アケメネス朝ペルシア帝国 その12 言語・文字/世界帝国

前回まででアケメネス朝の通史は終わったので、ここではこれまで書いていなかった事項を書いておく。 言語・文字 世界帝国 言語・文字 広大な地域を支配したペルシア帝国には、土着の言語と共通の言語があった。 共通の言語はアラム語だ。 オリエント世界を…

アケメネス朝ペルシア帝国 その11 ダレイオス3世とペルシア帝国滅亡

前回からの続き。 ダレイオス3世はアケメネス朝ペルシア帝国の最後の王で、アレクサンドロス大王によって滅ぼされる。 ダレイオス3世と前回のアルタクセルクセス3世の間に一人の王がいる。その名はアルタクセルクセス4世だが、ギリシア文献だと「アルセ…

アケメネス朝ペルシア帝国 その10 アルタクセルクセス3世

前回からの続き。 即位と国内平定 エジプト遠征 死去 即位と国内平定 今回の代替わりでも後継者戦争が起こった。後継者争いが毎回のように起こるのは、アケメネス朝に後継者を決める取り決めが無かったからだという。 長命のアルタクセルクセス2世は多くの…

アケメネス朝ペルシア帝国 その9 アルタクセルクセス2世

前回からの続き。 骨肉の後継者戦争 コリントス戦争と大王の和約 エジプト奪還ならず 大王の求心力低下と後継者戦争と総督の反乱 骨肉の後継者戦争 ダレイオス2世が亡くなるとアルタクセルクセス2世が大王に即位する。骨肉の争いはアルタクセルクセスが即…

アケメネス朝ペルシア帝国 その8 ダレイオス2世

前回からの続き。 骨肉の動乱とダレイオス2世の即位 バビロニアの繁栄 サトラップの土着化 ギリシア勢力との関係の変化 ダレイオスの死とエジプトの反乱 骨肉の動乱とダレイオス2世の即位 前424年、アルタクセルクセス1世が亡くなり、王太子だったクセルク…

アケメネス朝ペルシア帝国 その7 アルタクセルクセス1世

前回からの続き。 アルタクセルクセス1世 エジプトの反乱 ギリシア勢力との戦いと「カリアスの和約」 アルタクセルクセス1世の治世の評価 アルタクセルクセス1世 アルタクセルクセスは父クセルクセス1世が暗殺されたことにより、前465年、王位に就いた(…