歴史の世界

中国_中国文明

「中国文明」カテゴリーの主要な参考図書およびウェブサイト(西周王朝まで)

「中国文明」の下限が何時までなのか知らないが、ここでは(あくまで便宜的に)西周までとする。 次からのカテゴリーは「春秋戦国時代/東周」とする。 さて、本題に入ろう。 世界歴史体系 中国史1 先史~後漢/山川出版社/2003 中国の考古学/同成社/199…

中国文明:西周王朝⑨ 後半期Ⅱ その2 衰退から滅亡へ

宣王の時代 権臣とは 異民族について 幽王と西周滅亡 「理想化された古代王朝」 宣王の時代 金文によれば、宣王は南方の勢力に貢納を要求したという(これは先々代の夷王の頃から要求していた。前回の記事参照)。そしてこれは蛮夷の反乱を引き起こした。ま…

中国文明:西周王朝⑧ 後半期Ⅱ その1 厲王の時代/「共和」の時代

今回も佐藤信弥『周』(中公新書/2016)を中心にして書いていく。 今回は厲王と「共和」について。 厲王の時代 佐藤信弥氏の見立て 谷秀樹氏の見立て その他の研究者の見立て 「共和」の時代 厲王の時代 厲王は、『史記』などの伝世文献では、殷の紂王と並…

中国文明:西周王朝⑦ 後半期Ⅰ その2 貴族から奴隷まで/影の薄い王たち

前回に貴族制社会のことに触れたので、ここでは、西周後半期の身分/階級について書いていこう。 身分/階級:貴族から奴隷まで 影の薄い王たち 身分/階級:貴族から奴隷まで 当時の社会の構成については、王とその一族を除けば、(1)統治階級に属する貴族、…

中国文明:西周王朝⑥ 後半期Ⅰ その1 貴族制社会の出現/冊命儀礼

この記事から後半に入る。引き続き佐藤信弥『周』(中公新書/2016)に頼って書いていく。 統治体制の大転換/貴族制社会の出現 冊命儀礼 統治体制の大転換/貴族制社会の出現 前回書いたように、昭王の南征失敗を機に、昭王の次代の穆王は領土拡張政策は放…

中国文明:西周王朝⑤ 前半期Ⅱ その2 祭祀儀礼と戦争

「会同型儀礼」 「戦闘は続いていた」 昭王の南征 「会同型儀礼」 西周前半期の王が諸侯たちの上に支配/君臨するために、王はどのようなことを行ったのか。 ひとつは「朝見」だ。朝見とは、「臣下が朝廷に参内(さんだい)して天子に拝謁すること*1」。 西周…

中国文明:西周王朝④ 前半期Ⅱ その1 封建と官制

封建とは? 西周の封建の実相 封建の目的 官制 封建とは? 周王朝は、殷代には見られなかった画期的な制度も創始しており、それが「封建」である。周は殷を滅ぼした後、その支配地域の大部分を継承したが、各地に王の子弟や臣下を派遣し、諸侯(地方領主)と…

中国文明:西周王朝③ 前半期Ⅰ

さて、前回の時代区分に沿って歴史を見ていこう。 前々回に武王が殷王朝を滅ぼしたところまで書いた。 今回はその後から成王の代までを書く。 「三監の乱」 ~殷の遺民の反乱 東征 成周の建設 「三監の乱」 ~殷の遺民の反乱 武王は殷王朝打倒のあと、数年で…

中国文明:西周王朝② 系譜/時代区分/金文とは?

系譜 時代区分 伝世文献と同時代の文献/金文 金文とは? 系譜 出典:周 - Wikipedia ⑫代の幽王までが西周。 時代区分 以下は佐藤信弥『周』(中公新書/2016/p10-11) 西周前半期Ⅰ 文王・武王・成王の時代。周王朝の創建期。文王・武王の2代による殷王朝…

中国文明:西周王朝① 西周王朝の先史/建国

これより周王朝に関する記事を書いていく。 まずはじめに先史、それから建国について。 先周文化 周原~周族の発祥地 殷末の状況 「克殷」~周が殷を倒した/周建国 先周文化 以下の地図は殷王朝後期の勢力圏と先周文化の位置を表す。 出典:宮本一夫/中国…

中国文明:殷王朝⑦ 後期 その4 後期の歴史の流れ

この記事では落合淳思『殷』(中公新書/2015)に頼って書く。詳細はこの本参照。 武丁期(殷王朝後期の初期。前13世紀後半) 祖己~祖甲(前12世紀) 庚丁~帝辛(紂王) 武丁期(殷王朝後期の初期。前13世紀後半) 現代中国における通説では、殷王朝後期の…

中国文明:殷王朝⑥ 後期 その3 神権政治

自然神と祖先神 自然神/自然への恐れ 祖先神/祟り神 「帝」への信仰 犠牲 「人牲」(奴隷の犠牲)/殷代は「奴隷制社会」ではなかった 信仰の政治利用 甲骨占卜の操作と改竄 「神権政治」とはなにか? 自然神と祖先神 自然神/自然への恐れ 人類はその「人…

中国文明:殷王朝⑤ 後期 その2 体制/軍事

王朝の王統 殷墟遺跡に見る体制 王朝を支える集団/王朝の直轄地と支配領域 「邑制国家」という用語 軍事 王朝の王統 殷王朝は実の父子相続を基本とする本来の意味での「王朝」ではなかった。つまり世襲する場合もあるがしない場合もあった。 しかしその相続…

中国文明:殷王朝④ 後期 その1 甲骨文字の出現

殷後期で一番に取り上げるべきものは文字の出現だ。文字自体は殷後期より前にあったと考えられているが、まとまった文字資料として使用できるようになるのはこの頃からだ。 中国の文字はどこまで遡れるか? 甲骨文字とはなにか? 中国の文字はどこまで遡れる…

中国文明:殷王朝③ 中期

中期は混乱期で進展は無かった。 このきじでは、王統と王都の変遷について書く。 この時代も文字資料がないので、考古学的証拠から推測するしかない。 本題に入る前に① 現代中国における古代中国の研究者たちについて 本題に入る前に② 殷王朝の系図 中期の王…

中国文明:殷王朝② 前期

前回も書いた通り、『史記』などに書かれている殷建国の伝承(湯王が暴君桀王を倒す話)はフィクションである。殷建国の時期は文字資料が無いため本当は何があったのかは分からないので、考古学の資料から推測するしかない。 建国/二里岡遺跡→鄭州商城遺跡 …

中国文明:殷王朝① 殷王朝の先史/誕生/時代区分

『史記』などに書かれている殷建国の伝承(湯王が暴君桀王を倒す話)はフィクションである。 殷建国の時期は文字資料が無いため本当は何があったのかは分からないので、考古学の資料から推測するしかない。 「殷」または「商」という呼称について 殷の前身、…

中国文明:二里頭文化④ 二里頭遺跡と新石器時代末期の違い/「夏王朝」の関係

二里頭文化は文字資料が無いため、よく分かっていない部分が多い。 二里頭文化が中国文明の黎明期と考えられているが、新石器時代と二里頭文化は何が違うのだろうか? また、二里頭文化を夏王朝とする研究者がいるが、その真偽はどうなのか? 二里頭文化期と…

中国文明:二里頭文化③ 二里頭遺跡/中国で最初の国家誕生

ようやく二里頭文化の中身について書いていく。 二里頭遺跡は中国最初の国家・王朝の王都となる場所だ*1。 二里頭遺跡から発した文化を二里頭文化と呼ぶ。現代中国では二里頭文化を「夏王朝」だと断定している。日本では賛否があるがその比率はわたしには分…

中国文明:二里頭文化② なぜ洛陽盆地は生き残れたのか

記事「後期新石器時代 その8 新石器時代末期の終焉」で書いたように、新石器時代の末期に地球規模の気候変動(寒冷・乾燥化)が起こり、中国本土の各地の文化が崩壊・衰退した。 そんな中で洛陽盆地を含む黄河中流域にあった王湾3期文化(中原龍山文化の中…

中国文明:二里頭文化① 洛陽・中原につながる黄河・淮河・長江

この記事から中国における二里頭文化すなわち最初の国家の誕生について書く。 この記事では、誕生の地である洛陽盆地と黄河・淮河・長江の関係について書いていく。 「中原」については文中で書く。 中国本土に張り巡らされた河川 洛陽盆地 洛陽と黄河 洛陽…

中国文明:先史⑮ 新石器時代 その13 後期新石器時代 その8 新石器時代末期の終焉

中国本土の各地で繁栄した後期新石器時代も終焉が訪れる。 中国本土に何が起こったのかを書いていこう。 後期新石器時代に「文明」は誕生した? 新石器時代の崩壊 「なぜ中原だけが発展することはできたのか」は別の記事で書く 後期新石器時代に「文明」は誕…

中国文明:先史⑭ 新石器時代 その12 後期新石器時代 その7 長城地帯の変容/西方からの新要素の導入

中国の北方、農耕地域と放牧地域を分けるように万里の長城が築かれている。この東西に伸びる地域を長城地帯と呼ぶ。 この地帯の歴史の移り変わりを書いていく。 この記事では、宮本一夫氏の『中国の歴史01 神話から歴史へ(神話時代・夏王朝)』*1の「第7章…

中国文明:先史⑬ 新石器時代 その11 後期新石器時代 その6 中原龍山文化

前回より続き。 龍山文化がどういうものかは前回に書いた。 今夏は中原龍山文化。「中原(ちゅうげん)」の範囲は中国史の各時代によって異なるのだが、新石器時代は黄河中流域を指す。 出典:宮本一夫/中国の歴史01 神話から歴史へ(神話時代・夏王朝)/…

中国文明:先史⑫ 新石器時代 その10 後期新石器時代 その5 龍山文化/山東龍山文化

龍山文化(前2500-前2000年)は黄河中流域・下流域の文化。 大きくは中原龍山文化(中流域)と山東龍山文化(下流域)に分けられる。 龍山文化の特徴といえば、土器(=陶器)の「黒陶」(後述)だが、より重要なのは社会の変化、すなわち分業化や階層化など…

中国文明:先史⑪ 新石器時代 その9 後期新石器時代 その4 屈家嶺文化/石家河文化

今回は長江中流域の文化について書く。 屈家嶺文化(前3000年紀前半) 石家河文化(前3000年紀後半) 囲壁集落 屈家嶺文化(前3000年紀前半) 大渓文化を継承して栄えた文化。 この文化のあいだに、農作物の生産向上と人口増加を背景に分業化が進んだ。陶器…

中国文明:先史⑩ 新石器時代 その8 後期新石器時代 その3 良渚文化

前回は玉器について書いた。 今回書く良渚文化はこの玉器が階層化の道具となる。 良渚文化は長江下流域に興った文化で時代は前3300-2200年(諸説あり)。後期新石器時代の手前から中国最古の王朝誕生の手前まで。 時代区分 良渚文化の生産力 階層化を表す墓…

中国文明:先史⑨ 新石器時代 その7 後期新石器時代 その2 (ステータスシンボルとしての)玉器

今回は長江下流域で興った良渚文化について書こう…と思ったが、「玉器/玉(ぎょく)」について書く。 玉器は良渚文化の階層を表す遺物なのだが、これの説明をするのに1ページをかけてやろうと思う。 私の書きたい以上のことが「玉について」というネット記…

中国文明:先史⑧ 新石器時代 その6 後期新石器時代 その1 大汶口文化

後期新石器時代(前3000-2000年)は、東アジア最古の王朝の誕生の準備段階だ。誕生前夜。 また考古学から見れば、文明は、国家誕生の前に、この時期に始まっていたという主張もある。 この記事では大汶口文化ついて書いていく(ほとんど階層化の話)。 後期…

中国文明:先史⑦ 新石器時代 その5 中期新石器時代 後編

前回からの続き。 集落の特質 黄河・長江両流域 遼河流域西部:紅山文化 農業と社会の変遷 集落の特質 黄河・長江両流域 黄河・長江両流域においての集落の特徴。 集落は環壕(環濠)*1に囲まれていた。主に野獣から集落の成員と家畜を守るためだ。 集落内は…