歴史の世界

ミタンニ①

今回はミタンニについて。

オリエント世界の到来はエジプトがシリア・パレスチナに進出してきたことから始まるが、その時のシリア(とその周辺)の覇権国がミタンニだった。

ミタンニはフリ人(フルリ人)が建国した国。まずはフリ人の話から。

フリ人(フルリ人)

フルリ人(英: Hurrian)またはフリ人は、古代オリエントで活動した人々。紀元前25世紀頃から記録に登場する。彼らは北メソポタミア、及びその東西の地域に居住していた。彼らの故郷は恐らくコーカサス山脈であり、北方から移住してきたと考えられるが、確かではない。現在知られている彼らの根拠地はスバル(Subar)の地であり、ハブール川流域や後には北メソポタミアと歴史的シリアのいたるところで小国を形成した。

出典:フルリ人 - Wikipedia

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出典:Hurrians - Wikipedia

地図の「HURRIAN KINGDOMS」の場所に幾つものフリ人の都市国家が分立していた。ウル第三王朝のシュルギ王(前2094年2047年頃)がこの地域に何度も征伐に赴いたことが記録に遺っている。

ウル第三王朝が滅んで前二千年紀に入るとアムル人がメソポタミア・シリアの国々を支配したが、フリ人は民族の消滅を免れた。

シリアでは幾つかの王朝が覇を唱えたが、前1600年に当時の覇権国ヤムハド王国がヒッタイトのムルシリ1世(前1620-1590年頃 )に滅ぼされる。

ムルシリ1世は前1595年にバビロンも撃破して、その後に「フルリ人の王国も撃破した」 *1 と記録されている。

ムルシリ1世が帰路するとすぐに暗殺されてヒッタイトは混乱期に入るので、シリアは権力の空白地帯となる。

ここにフリ人が再び勃興する下地が出来上がった。

ミタンニの登場

ミタンニの建国または起源はよく分かっていない。首都であるワシュカンニについては、場所は特定されているものの(シリア北東部テル・エル・ファハリヤ遺跡) *2、 発掘されていない。

ミタンニの始まりは前16世紀頃と言われるが、ミタンニの名前が言及されている最古のものは、エジプトのトトメス1世(前1596-1494年)の時代の墓碑銘である。

それはおそらくエジプトの役人となったミタンニ出身者の墓であるらしい。またこの銘文から、トトメス1世がミタンニの初期の王(パラタルナか、あるいはそれ以前の王)と対戦したことも知られている。

出典:世界の歴史①人類の起原と古代オリエント/中公文庫/2009 *3 /p336(渡辺和子氏の執筆部分)

ミタンニの情報が増え始めるのは前1500年ごろからだ。

これらの情報によるとミタンニの首都はワシュカンニで、支配したすべての領域を直轄していたわけではなく、周辺は諸王を服属させてミタンニ王の宗主権を認めさせたと言う *4

覇権国へ

ミタンニの各王の事績については、首都ワシュカンニが未発掘のため、ほとんど分かっていない。

フリ人の国ミタンニは前15世紀初期のパラッタルナ王治世には、シリア北部を支配していた。

前15世紀中期のサウシュタタル王治世になると勢力を拡大し、東方はティグリス河東岸のズジをふくむアラプハ王国から西方はユーフラテス河を越えて、シリア北部およびアナトリア南東部のキツワトナ地方まで支配した。この過程でミタンニはティグリス河流域のアッシリアを属国とした。

出典:小林登志子/古代メソポタミア全史/中公新書/2020/p147

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出典:Mitanni - Wikipedia

サウシュタタル(Shaushtatar)はパラッタルナ(Parattarna) *5 の息子で次代の王。パラッタルナのおそらく先代となる王としてシュッタルナ(1世)(Shuttarna I)がいた。シュッタルナの事績は分からないが、トルコ南部(シリアの国境沿い)のアララハ(Alalakh、アララク)でseal(封印?)が発掘されている。これには「son of Kirta(キルタの息子)」と刻されており、シュッタルナより前にキルタ王がいたということになる。ただし、キルタに関しては叙事詩の中の王として書かれているものが発見されているが、碑文などの直接の史料は発掘されていない。

ミタンニの強さの秘訣は「馬」

馬の話は前回書いた。馬を戦車の基本形(戦術?)を考案したのがミタンニで、これによってシリア・北メソポタミアアッシリア)に覇を唱えることができた(しかしこの「基本形」を会得したヒッタイトに、後に滅ぼされることになる。)



*1:ムルシリ1世 - Wikipedia

*2:テル・エル・ファハリヤ - Wikipedia

*3:1998年出版されたものの文庫化

*4:小林登志子/古代メソポタミア全史/中公新書/2020/p145

*5:パラッタルナはParshatatar, Paršatar, Barattarna(バラッタルナ、バラタルナ)など表記が違う。