歴史の世界

2020-01-01から1年間の記事一覧

楚漢戦争⑨ 劉邦を取り巻く環境

前回に続いて劉邦について書いていく。 今回は劉邦を取り巻く環境について。 今回もテキストは以下の本を使う。 劉邦作者:佐竹 靖彦発売日: 2005/05/11メディア: 単行本 劉邦の故郷とその周辺の地図 「フロンティア」に流入する人々とアウトロー 反秦勢力の…

楚漢戦争⑧ 劉邦の生まれ育ち

前回まで項梁・項羽を中心の歴史を書いてきたが、今回から複数の記事に分けて劉邦について書いていく。 テキストは以下の本。 劉邦作者:佐竹 靖彦発売日: 2005/05/11メディア: 単行本 劉邦の名前について 劉邦の生年 劉邦の周辺は任侠の世界 劉邦の名前につ…

楚漢戦争⑦ 鉅鹿の戦い 後編

前回からの続き。 二世3年(前207年)12月 項羽軍到着前の状況 項羽軍の攻撃 戦後 漢元年(前206年) 暦と元号について 項羽と劉邦の対立 二世3年(前207年)12月 項羽軍到着前の状況 この12月に項羽軍が秦軍に攻め込むのだが、ここで項羽が攻め込む前の状…

楚漢戦争⑥ 鉅鹿の戦い 前編

さて、いよいよ鉅鹿の戦い。 鉅鹿の戦いは趙国の鉅鹿での戦闘。秦と楚の勢いが逆転する重要なイベント。そして項羽が楚国の実権を握り、それだけでなく、反秦勢力のほとんどを従える存在となる。 この戦いは秦帝国から前漢帝国の過渡期の中でサラッと流され…

楚漢戦争⑤ 項梁の死と楚国再編

今回は、項梁の突然の戦死とその後の楚国の再編について。 項梁の死後、項羽がスムーズに後を継いだわけではなかった。今回は項羽が権力を握る前までの話。 項梁、対秦戦に動く 項梁の死 楚国、国の再編を余儀なくされる 項梁、対秦戦に動く 項梁の動向につ…

楚漢戦争④ 各地の動き

前回は項梁の快進撃を書いたが、ここで一旦、張楚国滅亡後の各地の情勢を整理する。 各地の情勢(1月以降) 魏での戦い 斉の政変 まとめ 各地の情勢(1月以降) 話を簡単にするために戦国時代末期の七国の地図を基(もと)に話を進める。 (陳勝・呉広の乱…

楚漢戦争③ 雪だるま式に増える項梁勢力

前回からの続き。 項梁・項羽は精鋭8千兵を引き連れて、会稽郡を出て長江を渡って北上する。 反秦勢力を吸収 反秦勢力の代表格・秦嘉との対決 楚国建国 反秦勢力を吸収 項梁は地元の会稽郡を平定し郡守(郡のトップ)となり、さらに(詐称だが)張楚国の上…

楚漢戦争② 項梁・項羽の決起

陳勝・呉広の乱に呼応するように項梁・項羽が決起した。 秦を滅ぼして、いちおう天下統一を果たしたのは「西楚の覇王」と呼ばれた項羽だが、決起した時は叔父の項梁の副将だった。 項梁・項羽の決起は項梁を中心に話を進めよう。 項羽作者:佐竹 靖彦メディア…

楚漢戦争① 陳勝・呉広の乱

楚漢戦争は「項羽と劉邦の戦い」とも呼ばれ、劉邦が項羽に対して反旗を翻す前206年から始まるのだが、ここではその前段として最も重要な陳勝・呉広の乱から話を始める。 陳勝・呉広の乱 反乱決起から陳県入城まで 「張楚」建国 反乱の全国波及 趙 燕 斉 魏 …

秦代⑭:秦代のまとめ

秦代あるいは秦朝は始皇帝による中華統一から滅亡までの期間を指す。前221年から前206年までのわずか15年間だが、始皇帝が築いた統治システムは次代の前漢に継承されてその後の王朝の統治システムの土台となっている。 政策 先秦と秦代以降の違い 焚書政策 …

秦代⑬:始皇帝の死から秦帝国滅亡へ

前210年、始皇帝は第5回の巡行の途中で死去する。これをきっかけに強大な新帝国は わずか3年で崩壊する。 この記事では、政権の内部崩壊のことを書く。項羽や劉邦の反乱側については別の記事で書く。 二世皇帝・胡亥と権力者・趙高 年表 趙高の評価 二世皇…

秦代⑫:外征 後編(南方編)

前回に続いて、今回は南方の外征について書く。 『史記』始皇本紀には、始皇33年(前214年、オルドス攻略の翌年)に嶺南(旧楚の領域の南)を占領して3つの郡を置いたと書いているのみだ。 しかし、下記に記すように、嶺南攻略には運河の建設も含まれるので…

秦代⑪:外征 前編(北方編/オルドス/直道/万里の長城)

秦が中華統一を達成してから6年目の前215年に対外戦争が始まった。中華統一した時は36の郡であったが、対外戦争の結果10増の48郡になった。 今回は北方の外征について書く。 結果 目的 直道 万里の長城 外征のきっかけ 結果 先に結果を書いておく。 前215年…

秦代⑩:「朝廷」「朝礼」「朝貢」「冊封」

「朝廷」「朝礼」「朝貢」は秦代で始まったことではないが、これらは秦代から始まる中華帝国のシステムの一部、ということで ここで紹介する。 ネタ元は岡田英弘・宮脇淳子両氏 *1。 以下は主要なもの。youtube動画を視聴すれば理解できてしまうと思うが、そ…

秦代⑨:政策(9) 全国巡幸 後編(泰山封禅と始皇七刻石)

前回からの続き。 泰山封禅と始皇七刻石は、全国巡幸の一部として行われた。そういうわけで、この2つも秦の皇帝が天下の支配者であることを万民に知らしめるための行為だ。 泰山封禅 封禅とは? 『史記』封禅書の斉桓公と管仲の逸話 泰山 始皇七刻石 泰山封…

秦代⑧:政策(8) 全国巡幸 前編(巡幸の意義)

今回は始皇帝の全国巡幸について。 「巡幸」:言葉の意味 殷周の巡幸 始皇帝の全国巡幸 あらためて巡幸の重要性について 「巡幸」:言葉の意味 巡幸 (「幸」は天子が出る意) 天子の巡回。天皇が各地をまわること。 出典:精選版 日本国語大辞典/巡幸(ジュン…

秦代⑦:政策(7) 貨幣制度

秦の中華統一後の貨幣事情は基本的には度量衡と同じで戦国秦の制度の全国展開をしようとしていた。 しかし、全国の貨幣を秦の貨幣に変えるためには長い時間を必要とした。 山田勝芳『貨幣の中国古代史』 *1 によれば、本格的に貨幣統一に乗り出したのは二世…

秦代⑥:政策(6) 「焚書坑儒」の実像

今回は「焚書坑儒」の実像。 焚書坑儒という言葉を知っている人は多いと思う。学問や思想に対する弾圧の比喩として使われることもある。 この言葉のイメージはだいたい以下のようなものだろう。 中国、秦の始皇帝が行なった思想弾圧。紀元前213年、医薬・卜…

秦代⑤:政策(5) 度量衡・車軌・文字の統一

前回からの続き。 度量衡・軌道・文字の統一の意義 度量衡とは? 車軌 文字の統一 度量衡・軌道・文字の統一の意義 これらの統一は中央集権化の一環である。 戦国時代では各国で国政改革により中央集権化が進められたが、これを中国全土で展開したのが始皇帝…

秦代④:政策(4)黔首/安全保障政策/始皇帝陵と兵馬俑坑

また前回の続き。 民(庶人)の呼称を「黔首(けんしゅ)」とする 刀狩り 六国の首都の城郭の破壊 富豪の強制移住/上林苑・阿房宮・始皇帝陵/咸陽城の拡張 始皇帝陵と兵馬俑坑 民(庶人)の呼称を「黔首(けんしゅ)」とする 「黔」は黒、「首」は頭の意。…

秦代③:政策(3)郡県制(租税の話も含む)

前回に続いて今回も政策の話。 今回は郡県制について。 封建制と郡県制 「征服戦争の功臣にも封邑地を与えなかった」 郡や県には中央から官僚が派遣される 「県」の中身(租税の話) 「郡」は「軍」なり 全土を36郡に分割する 郡県制の採用への流れ 「郡」「…

秦代②:政策(2) 諡(おくりな)の廃止/「水徳」の採用:五行説について

前回に引き続いて秦代の政策について書く。「こんなものは政策ではない」とは思うが他に適当な言葉が思い浮かばないのでとりあえず「政策」としてみた。国家の根幹となる大事なことだ。 諡(おくりな・シ)の廃止 「水徳」の採用:五行説について おまけ:五…

秦代①:政策(1) 前置き/皇帝号の採用/他の用語変更

秦帝国が整備した統治体制は、後の中国の歴代王朝が継承した。ということは、始皇帝(を含めた秦帝国の為政者たち)が中国帝国史の基本を作ったということも出来る。 現在の中華人民共和国の国家主席は世襲ではないが、帝国の体制は継承しているようだ。現代…

「秦代/楚漢戦争」シリーズを書く

これから「秦代/楚漢戦争」シリーズを書く。「中国_秦代/楚漢戦争」カテゴリーに保存する。 秦代および楚漢戦争については下で少しだけ説明する。詳しいことは別途記事にしていく。 この二つの時代は短いので一つのカテゴリーにまとめた。 秦帝国について …

【書評】マイケル・ピルズベリー『China 2049 秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」』

今回は書評を書く。 China 2049作者:マイケル・ピルズベリー発売日: 2015/09/03メディア: 単行本 著者について 出版について 本の内容 アメリカの致命的な判断ミス 中国の国家戦略 非道を繰り返す中国 私の注目点・感想 この本はどういう本かと言うと だいた…

「春秋戦国時代/東周」カテゴリーの主要な参考図書およびウェブサイト

「春秋戦国時代/東周」シリーズ終了。 今回は あまり参考にできなかった本も書いていく。 司馬遷/史記 ひらせ たかお先生のご著書 中国史 上/昭和堂 落合淳思/古代中国の虚像と実像/講談社現代新書/2009 佐藤信弥/周/中公新書/2016 渡邉義浩/春秋…

戦国時代 (中国)⑱ 春秋戦国時代/東周のまとめ

これまで、春秋戦国時代/東周ついて書いてきた。今回からそのまとめを書く。 詳しいことは各記事参照のこと。 春秋戦国時代と東周について 春秋時代と戦国時代 春秋時代 戦国時代 戦国時代の特徴 戦国時代の流れ 春秋戦国時代と東周について 春秋戦国時代は…

戦国時代 (中国)⑰ 戦国時代までの市場経済の歴史について 後編(戦国時代)

前回からの続き。戦国時代突入。 今回も多くの部分は以下の本を参考にしている。 貨幣の中国古代史 (朝日選書)作者:山田 勝芳メディア: 単行本 経済の発達 貨幣の発行元 貨幣の流通の状況 楚の重要性 秦帝国に繋がる戦国秦の貨幣制度 経済の発達 戦国時代に…

戦国時代 (中国)⑯ 戦国時代までの市場経済の歴史について 中編(春秋時代)

前回からの続き。今回は春秋時代。 今回も多くの部分は以下の本を参考にしている。 貨幣の中国古代史 (朝日選書)作者:山田 勝芳メディア: 単行本 春秋時代の変化 楚(江南)の銅貝貨 中原(黄河中流域)の布銭 斉(黄河下流域)の刀銭 春秋時代における貨幣…

戦国時代 (中国)⑮ 戦国時代までの貨幣の歴史について 前編

これから貨幣の歴史について書く。 この記事の多くの部分は以下の本を参考にしている。 貨幣の中国古代史 (朝日選書)作者:山田 勝芳メディア: 単行本 重要な用語:互酬・再分配・交換 先史時代 殷代:貝と亀甲 西周代 重要な用語:互酬・再分配・交換 まず、…