前回からの続き。
第4章と「おわりに」では、皇位継承問題を含む現代の皇室について書かれているが、ここでは基礎的な知識を書きとどめておく。
先例、男系、直系
皇室を語る時に最も大事なのは、先例です。そういう世界なのです。今までの歴史がそうでした。皇室において、新儀は不吉であり、無理やりやるものではありません。だから、明治維新のような大変革に際しても、その初めの「神武創業の精神」を先例としました。(p204)
明治維新は西洋のあらゆる知識・技術を輸入して築き上げたものだが、それでも日本史の中から先例を探し出す努力を怠らなかった。前々回に書いた「統治=シラス」などがその良い例だろう。
「男系」。万世一系の皇統譜は男系によって継承され、例外は無い。これは最も重要な先例で、この先例を破れば皇室は全く新しいものとなる。つまり断絶を意味する。
その次が「直系」。直系の男子が継げば何も問題ない。
「旧宮家復帰」という課題
現在、皇位継承問題の一つとして注目されている課題が旧宮家の復帰だ。
具体的には東久邇宮と賀陽宮に若い男系男子がいるとのこと *1。
この2つの宮家は伏見宮に連なる家系だ。
伏見宮は600年以上前に崇光天皇の子の伏見宮栄仁親王が初代となる宮家で、世襲親王家として代々受け継がれた。
世襲親王家は血が遠くても代々親王宣下を受けた家系で、皇統を途絶えさせないための手段だ。この時点で臣籍降下した源氏や平氏と隔絶した違いがある。
光格天皇(在位: 1780-1817年)は、世襲親王家の一つ閑院宮の出身だが、先代の後桃園天皇に皇子がいなかったために皇位を継承することになった。今上陛下も光格天皇の系統に繋がっている。
ただし、光格天皇と後桃園天皇は はとこの関係であるのに対して、伏見宮の家系と現在の皇室は600年以上離れている。このことは議論の俎上に上がっている。