歴史の世界

2018-01-01から1年間の記事一覧

【中国人論・中国論】平等思想が無いか希薄 ―人間関係から外交の話。

【中国人論・中国論】のカテゴリーの中で中国人社会の人間関係について書いてきた。 「法治」が通用しない弱肉強食の中国社会では、人間関係が全てだ。 平等思想が無いか希薄 人間関係には、宗族(氏族・大家族)、幇(互助組織、秘密結社)、同郷組織、同業…

中国論② 大隈重信の『日支民族性論』 その6 文を尊び武を卑しむ

「文尊武卑」。中国の性質と言われている。これに関する大隈の日中の比較の論も紹介する。 それと最後におまけとして、現在の日中の状況を書き留めておこう。 閭右と閭左 「文→虚飾」「武←質」 武強で亡ぼしても、文弱に征服される 大隈の日本観 おまけ:現…

中国論② 大隈重信の『日支民族性論』 その5 中華思想

この記事では中華思想について書く。 中華思想 自国の実態 朝貢の実態 中華思想が引き起こした悲劇 おまけ:日本にもあった中華思想 大隈重信、中国人を大いに論ず 現代語訳『日支民族性論』作者: 大隈重信,倉山満出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2016/09/02…

中国論② 大隈重信の『日支民族性論』 その4 道学(老子)について

道学について 中国史における法治国家 道学と道教 大隈重信、中国人を大いに論ず 現代語訳『日支民族性論』作者:大隈重信出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2016/09/02メディア: 単行本 この記事では、上の本を元に大隈の道学観を書いていく。 道学について 道…

中国論② 大隈重信の『日支民族性論』 その3 儒教について

儒教について大隈がどのように説明しているのかを書く。 儒教の要点「仁」 「礼」と後代の儒家 孔子と支那への批判 変わり果てた儒教 大隈重信と岡田英弘の「儒教観」は同じ 大隈重信、中国人を大いに論ず 現代語訳『日支民族性論』作者: 大隈重信,倉山満出…

中国論② 大隈重信の『日支民族性論』 その2 同時代の支那の動きを踏まえて

まず、大隈と同時代の清国の歴史を振り返る。そのあとに大隈がそれを見てどのような中国観を持ったのかを見ていこう。 大隈重信、中国人を大いに論ず 現代語訳『日支民族性論』作者: 大隈重信,倉山満出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2016/09/02メディア: 単…

中国論② 大隈重信の『日支民族性論』 その1 大隈が本を出す原因となった「対華二十一カ条の要求」

大隈重信が『日支民族性論』という中国論本を出している。この記事ではまず、大隈がなぜ本を出版する気になったのかを書いていこう。 この記事では、大隈が本を出す原因となった「対華二十一カ条の要求」について書く。 「対華二十一カ条の要求」 第5号 大…

中国論① 福澤諭吉の『脱亜論』

(この記事は中国論というより、なぜ福澤が『脱亜論』を書くに至ったのか、が主題。) 日清戦争の10年ほど前、福澤は朝鮮の独立と近代化に傾注していた。しかし彼が支援していた朝鮮独立党(開化派)のクーデターが失敗に終わり、朝鮮政府が彼らとその親族の…

中国人について⑥ 人間関係 その5 面子について

中国人論の重要な要素の一つ「面子」について書いていなかったので、ここで書いておこう。 [(面子は)中国精神の綱領であるから、これをつかみさえすれば、ちょうど24年前に弁髪を引っこぬいたのと同じように、身体全体も一緒にくっついて来る」と辛亥革命…

中国人について⑤ 人間関係 その4 人間関係と権力/デメリット

前回まで、日本人の学者の本に頼って中国人について書いてきたが、今回は現代の中国人が書いた本*1に頼って書いていく。 中国における人間関係/平等は無いか希薄 人間関係と権力 友人を持つデメリット おまけ 私が参考にした日本人学者は幇や宗族という用語…

中国人について④ 人間関係 その3 二重規範と共同体

中国人社会を説明するために「二重規範」という用語を使ったほうがいいと思い、書いてみた。 二重規範と共同体 中国の共同体と「事情変更の原則」 二重規範と共同体 二重規範はダブルスタンダードと解されることがあるが、違う。 ダブルスタンダードは二枚舌…

中国人について③ 人間関係 その2 幇(パン)と情誼(チンイー)

前回、宗族について話したが、今回は「幇(パン、ほう)」について。中国語では「帮会(パンフェ)」。 幇を一言で表せば「義兄弟」。ただし、この関係は宗族よりも、本当の兄弟よりも繋がりが強いと定義する人もいる。小室直樹著『小室直樹の中国原論』*1で…

中国人について② 人間関係 その1 宗族

中国の人間関係の一部「宗族」のことについて書く。 宗族とは何か 血縁集団の利点 宗族の歴史 宗族と地域社会 石平先生に学ぶ宗族 参考になる動画 宗族とは何か 宗族とは《父系血縁集団+部外婚制》である。氏族(共通の祖先を持つ血縁集団*1 )の一種。 父…

中国人について① 中国人社会は日本人社会とは全く別物

私自身は中国人との付き合いが全く無いので、書籍その他に頼って書いてみよう。 いくつかの記事に分けて書いていく。 今回は、「中国人社会は日本人社会とは全く別物」「中国人社会は弱肉強食」「中国人はなぜウソをつくのか」という話をする。 しかし「中国…

「中国人論・中国論」シリーズを書く

この記事は、実際は「中国人論・中国論」シリーズを書き終わった後に書いている。 こんなに多数の記事を書くつもりはなかったが、これから中国史を勉強するにしても、現代の国際政治を考えるにしても中国人の行動様式を知っておくことは有用だ、と思って長々…

「エジプト文明」カテゴリーの主要な参考図書およびウェブサイト(中王国時代まで)

中王国時代までで一旦「エジプト文明」を離れる。 ここではこれまで利用した主要な参考図書およびウェブサイトを書き留めておこう。 ブライアン・フェイガン/古代文明と気候大変動/河出書房新社/2005(原著は2004年出版) 高宮いづみ/エジプト文明の誕生…

エジプト文明:中王国時代⑨ まとめ その2 灌漑/書記/文学

灌漑 書記(官吏) 文学 灌漑 ナイル川については、「先史⑪ ナイル川下流域 -- エジプト文明の舞台」で書いた。人工灌漑の話をする前にリンク先の知識が必要だ。 詳しくは、リンク先で紹介しているが、ナイル川は1年の中で繰り返す水量の増減が、耕地に養分…

エジプト文明:中王国時代⑧ まとめ その1 マアト(秩序)の維持と社会正義/宗教上の大衆化・民主化

中王国時代のまとめのようなことを書く。今回は古王国時代や第1中間期からつながる話。 マアト(秩序)の維持と社会正義 古王国時代のマアトの維持 中王国時代のマアトの維持 高官たちの墓と社会正義 宗教上の大衆化・民主化 オシリス神の大衆化 コフィン・…

エジプト文明:中王国時代⑦ 第13王朝・第14王朝

第13王朝と第14王朝は第2中間期に分類する研究者もいるが、このブログでは中王国時代に分類する方を採用する。 第13王朝の初期は第12王朝と繋がりを持ち王都も同じだ。 第14王朝はデルタ東部の都市アヴァリス(現在のテル・エル=ダバア遺跡)でレヴァント…

エジプト文明:中王国時代⑥ 第12王朝 その4 6代目から最後まで

前回からの続き。 アメンエムハト3世 アメンエムハト4世 セベクネフェル 王朝交代 アメンエムハト3世 王の治世が中王国時代の最盛期とされる。先代までの貯金を着実に増やした結果と言えるだろう。 内政としてはファイユーム開拓が挙げられる。アメンエムハ…

エジプト文明:中王国時代⑤ 第12王朝 その3 5代目センウセレト3世

前回からの続き。 行政改革(中央集権化) ヌビア遠征 建築王 王としての威厳 マネトーによれば、センウセレト3世は身長約2メートルの大男であった。 大きな体格は現在においても、政治に限らず交渉事においてアドバンテージになり得る。しかしアドバンテー…

エジプト文明:中王国時代④ 第12王朝 その2 2代目から4代目まで

第12王朝は、8人の王を出しておよそ200年続く。最後の2人を除けば有能な王が続いた王朝のようだ(都合の悪い記録を遺していないか発掘できていないだけかもしれないが)。 6代目の王の治世で最盛期を迎えるが、7代目が若いうちに子をもうけずに亡くなり…

エジプト文明:中王国時代③ 第12王朝 その1 王朝交代と初代王アメンエムハト1世

王朝交代 初代王アメンエムハト1世 業績①王都遷移 業績②ピラミッド建造 業績③外征と「支配者の壁」 業績④共同統治(と暗殺) 正当性を主張するための文学『ネフェルティの予言』 王朝交代 前回も書いたが、第11王朝の最後の王はメンチュヘテプ4世という。彼…

エジプト文明:中王国時代② 第11王朝の歴史/宗教史

再統一のことは前回書いたので、それを差し引いた第11王朝の歴史を追ってみよう。 政治・行政・軍事 第11王朝の政治・行政については ほとんど分からない。 エジプト再統一前の第11王朝の政治・行政については全く分からない。 再統一後は、ピーター・クレイ…

エジプト文明:中王国時代① 第11王朝の「再統一戦争」

中王国時代はエジプト再統一から始まる。 統一したのは、第11王朝第4代メンチュヘテプ2世。 この記事では第11王朝の起源から再統一までを書いてみよう。 第11王朝とは? テーベ州侯時代 テーベ州侯時代の戦いの時系列 第11王朝とは? 「エジプト第11王朝 - …

エジプト文明:第1中間期③ 文化の変容

古王国時代の崩壊とともに、それまでの文化も破壊された。 飢餓をも含む絶望的な状況から回復する中で、旧来の文化の復活とともに新しい文化も興った。 文学作品に現れる当時の悲惨な情景 「民主化」 文学作品に見える「社会正義」 文学作品に現れる当時の悲…

エジプト文明:第1中間期② 第9王朝、第10王朝

第9王朝(前2160年頃 - 前2130年頃) ヘラクレオポリスは上エジプト第20県(ナルト・ケンテト)の首都であり、ここに拠点を置く州侯は統一王朝の弱体化につれて自立勢力となった。ヘラクレオポリス侯だったケティ1世(メリイブラー・ケティ)は上下エジプト…

エジプト文明:第1中間期① 第7王朝、第8王朝

第1中間期は、古王国時代と中王国時代の間の混乱期を指す。文字資料も考古学的資料も かなり少ないので分かることだけ集めて、書いておこう。 もう一つ。古王国時代の崩壊の原因である気候変動について書く。この問題は第1中間期を覆う問題だ。 気候変動(…

エジプト文明:古王国時代⑪ 政治・行政の歴史 後編

第5王朝 この時代になると、官僚組織から王族が撤退するようになる。このことについては「太陽信仰とオシリス信仰」で書いた。 高宮氏は「第4王朝半ば頃のメンカウラーの治世から王族以外が宰相に任命されるようになり、官僚職の王族離れが始まった」(p17…

エジプト文明:古王国時代⑩ 政治・行政の歴史 前編

政治史+行政史+経済史を語れば、普通はその地域の歴史としてほぼ十分なのだが、古王国時代は逆にピラミッドの歴史が9割超を占め、その他はおまけになってしまっている。 この記事では、政治・行政・経済の歴史中心としたの話を書こう。ただしほとんどの歴史…