アルファベットは古代ギリシア人が開発した。
アルファベットとはなにか
古代ギリシア人がアルファベットを発明したことを書く前に、まずアルファベットとは何かを説明しなければならない。私では正確に説明できないので、大雑把に説明する。
文字体系には象形文字、表意文字、表語文字、表音文字などがある。このうちアルファベットは表音文字の一種だ。
表音文字とは「音(音声)を表す文字」のことで、象形文字とは対象的だ。
表音文字は音素文字と音節文字に分かれる。日本語のカナ(ひらがな、カタカナ)は音節文字だ。線文字Bも音節文字。これに対して、アルファベットは音素文字と言われる。
音節と音素を詳細に説明できないのだが、たとえば、音節文字のカナでは「な」と一文字で書けるところを、音素の(英語の)アルファベットでは「na」と二文字になる。この"n"と"a"が音素だ。
音素文字はアブジャド、アブギダ、アルファベットに細分される。
アブギダはここでは説明しない。
アブジャドとは音素のうち子音だけを表記する文字体系のこと(ただし母音を全く表記しないわけではない)。セム語系に多い。
アルファベットとは子音と母音両方を表記するもの。
以上の説明を簡単に表すと以下のようになる。
ギリシア人のアルファベット開発
ギリシア人が開発したアルファベット(ギリシア文字)はフェニキア文字から拝借したものだった。フェニキア文字はセム語系の文字なので、アブジャドなのだが、これに母音を表す文字を入れてアルファベットを完成させた(少し詳しく言えば、フェニキア文字でギリシア語では使用しない文字と「半母音」と言われる子音扱いされる文字を母音を表す文字にした)。
アルファベットを開発した理由としてはセム語系よりギリシア語(印欧語系)は母音を重要視したということだが、詳しくは説明できない。
おそらくは前8世紀の前半のうちに開発され、末期には普及していたようだ。
この他にも文字体系に必要な取り決めが色々あるだろうが、とりあえす、以上がアルファベットの誕生の一片だということで。
文字普及の効用:アイデンティティの形成
文字のおかげで、成文法を作ることが出来たということは前回に書いた。
もう一つはアイデンティティにかかわる話。
文字体系ができる以前は、文化は口承で受け継がれた。ギリシア神話もそう。しかし、文字普及の有無が文化・文明の発展に大差をつけることは言うまでもないだろう。
ホメロスが書いたと言われる『イリアス』『オデュッセイア』がギリシア神話のアイデンティティ(共同体に対する帰属意識)を生み出す原動力となるのだが *1、この2つの作品が出来上がるのも、文字普及が絶対条件だった。