歴史の世界

「 中東_メソポタミア文明②」カテゴリーの主要な参考図書

「 中東_メソポタミア文明②」シリーズ終了。

メソポタミア文明①」カテゴリーはシュメール人最後の王朝ウル第三王朝の滅亡まで書いた。このカテゴリーはその続きとなる。

メソポタミア文明の終わりの時期について。以下は『古代メソポタミア全史』(中公新書/2020)を書いた小林登志子の言葉。

「古代メソポタミア史」は紀元前3500年の都市文明のはじまりから、前539年の新バビロニア王国の滅亡までを、学問的には扱います。

出典:『古代メソポタミア全史』/小林登志子インタビュー|web中公新書

だがしかし、そうするとヘレニズムまでのあいだのアケメネス朝ペルシア帝国が浮いてしまうので、ペルシア帝国は便宜上、このカテゴリーに入れた。

範囲について。「メソポタミア文明」と書いておきながら、シリアパレスチナアナトリアその他メソポタミア(現在のイラク)の周辺の歴史も、便宜上、このカテゴリに入れた。カテゴリー増大を避けるため。

以下はこのカテゴリーで利用した主な参考図書。

参考図書以外にwikipediaも大いに参考にしている。歴代王の一覧は助かる。

小林登志子/古代メソポタミア全史/中公新書/2020

長い歴史を新書サイズにまとめてくれている有り難い本。この本があったために中公の世界史を読む必要がなくなった。

新しい本だが、書いていることは目新しくないっぽい。

基本的にほぼメソポタミアアッシリアバビロニア)だけの歴史なので、シリア・パレスチナアナトリアヒッタイト)のことはほとんど書かれていない。(このブログのヒッタイト関連はだいたいがwikipedia情報だ)

長谷川 修一/聖書考古学 - 遺跡が語る史実/中公新書/2013

古代イスラエルの歴史を知るために読んだ。聖書の中の歴史と考古学の成果や出土文献を照らし合わせている。これで聖書の中の「歴史」が意外と(と言っては怒られそうだが)史実に即していることが分かる。ただし、聖書は「古代イスラエル人にとって有益か害悪か」という史観なので注意が必要。

古代イスラエル史を知るためには先にアッシリアの歴史を知っておくとわかりやすい。

山我哲雄/一神教の起源 - 旧約聖書の「神」はどこから来たのか/筑摩選書/2013

ユダヤ教成立の歴史についての本。

宗教上の変遷が書かれている。

ユダヤ教が形成される以前にはシリア・パレスチナにはウガリット神話というものがあった。エジプトやメソポタミアギリシアにあったような多神教の宗教体系だ。

ここからどのようにユダヤ教が形成されるのかを聖書の中から読み解いているのがこの本だ。読み応えあり。

青木健/アーリア人講談社選書メチエ/2009

アーリア人」と「インド=ヨーロッパ語族」の意味を理解するためにも読んだほうがいい本。

民族を分類別に紹介しているので助かる。

ただし個々の民族の歴史は紙幅のために不十分だ(ちょっとした紹介程度)。スキタイ、ペルシア人については全然足りなかった。他の民族についてもそうなのだろう(調べていないので分からないが)。

林俊雄/スキタイと匈奴 遊牧の文明(興亡の世界史)/講談社学術文庫/2017(2007年に出版されたものの文庫化)

スキタイを知る上で欠かせない本。

騎馬遊牧民族の誕生も分かる。

ただし、考古学がメインなので分からないことが多かった(分からないことだらけだった)。

青木健/ペルシア帝国/講談社現代新書/2020

アケメネス朝だけでなくその後の「ペルシア帝国」まで書いてある。その分アケメネス朝の部分は少ない。

ペルシアの文献を多く使っているらしいが、文献の出典が書かれていない場合が多いところが残念な点。

下記のようなギリシア系文献で構築されるペルシア史に対してペルシア帝国内の史料を多用しているのがこの本の特徴かもしれない(ギリシア側の文献も少なからず使っている *1 )。

阿部拓児/アケメネス朝ペルシア/中公新書/2021

上の本と比べるとこちらはギリシア語文献からアケメネス朝を語っている。ペルシア帝国自身の文献が断片的なものしか遺っていない一方で、同時代もしくは数世紀後のギリシア人がペルシアの歴史を詳しく書いている。

文献の出典が書かれており、その文献を批判的に読んでいるので好感が持てる。上の本と並行して読むと理解が深まると思う(混乱することも少なからずあるとも思う)。

《PDF》中川洋一郎 (2019) 「前4千年紀、遊牧民としての原インド・ヨーロッパ語族民の生成―狩猟採集民による農牧文化の習得とステップへの進出という起業家的行動―」.pdf

遊牧の起源を理解できた(私の理解が正しければだが)。

これは読んどいた方がいい。



*1:下記の本と読み比べて分かった