前回からの続き。
E(3)
Euphemism:婉曲表現。不快にさせる恐れのあるもの、タブー視されるものを別の言葉で表現する。
【例】「死ぬ→他界する」「断る→遠慮する」
また、「お手数ですが」「ご足労をおかけしますが」なども婉曲表現になるらしい(クッション言葉)。Euphoria:多幸感。豪華なプレゼントをしたり、表彰式などのイベントを行なって幸福感・士気を高める。
国家としては、軍事パレードがEuphoriaの一部になるらしい(士気・愛国心を高める) *1。Exaggeration:誇張。
【例】他国に対して自前の武器のスペックや個数をかさ増しして発表する。
「この商品を使えば、あなたの人生はバラ色だ」
F(6)
False accusations:虚偽の告発・告訴。裁判沙汰にされた側は膨大な時間とコストを払うことになる。False accusationsの原告側を損害賠償で訴えて勝訴してもコストに見合う額を手にすることはできないらしい(←日本の場合。海外はわからない)。 *2
Fear, uncertainty, and doubt (FUD):客に対してライバル会社の信頼性を貶めるテクニック。
【例】プロバイダや携帯電話サービスのライバルに対して、「あそこは倒産しそうだ」「よくつながらなくなる」「〇〇という噂がある」などと言って不安を煽る。Firehose of falsehood:デマを反復的・連続的かつ大量・迅速に垂れ流す。
【例】米大統領選後の大量のデマがこれ(ただしどのような目的なのか分からない)。Flag-waving:愛国心あるいは組織やイデオロギーに対する忠誠の名のもとに、ある行為を正当化する。
【例】「愛国無罪」「反日無罪」。シー・シェパードの違法行為。Foot-in-the-door technique:始めに小さな要求を聞いてもらって、続けて大きな要求を受諾させるテクニック*3。押しに弱い人には効果的。訪問販売のテクニック。
Framing (social sciences):相手または大衆の判断・選択の基準となる思考の枠組み(frame)をこちらで設定してしまうこと。
【例】高級レストランにおいて、安いワインを「これは○○年ものの高級なワインです」といって飲ませると、客は高級なものだと信じてしまう *4。
また、別の有名な例が「コップの水」。「もう半分しか無い」といえば相手は不安になるし、「まだ半分もあります」といえば安心させることができる。 *5
G(4)
Gaslighting:虐待・心理操作をするテクニック。DV、クラスや職場でのいじめなどあらゆる場面で仕掛けられる可能性がある。加害者は一人の場合も複数の場合もある。
Gaslightingのテクニックはたくさんあるのだが、ここでは3つだけ挙げる。
・ 加害者が被害者にウソをついているのに被害者に対して「嘘をつくな!」とまくしたてて、被害者に「私が間違っているのかも」という心理に追い込む。
・周りに被害者の悪口を言って孤立させる(いじめの対象にするように仕向ける)。
・被害者の行動や思考の自由を奪い、すべてコントロールしようとする。
そして、さらに悪辣な段階は、さんざん上記のようなGaslightingをしたあとに、加害者が「お前を大切に思っている」とか「周りの人間はお前の敵だ」と言って加害者に依存させるように仕向ける。 *6Gish gallop:論争術の一つ。
議論の本質から逸れた些末な小論を立て続けに言ったり、相手に即応不可能な議論を旧に持ち出したりして、相手を圧倒する。
【例】「国会のクイズ王」の異名を持つ小西洋之参議院議員が安倍総理(当時)に対してやったこと *7 (詳しくは《小西洋之とは - ニコニコ大百科》などを参照)。Glittering generalities:「きらびやかな一般論」。「平和を守る」など誰もが良いことだと思い、反対できないような一般論・フレーズを言って、これと自分たちをリンクさせて、自分たちのイメージ・主張を良く見せる、または言うことを聞かせるという戦法。
イメージアップの例→選挙ポスターに「希望のある未来を築く」と書く。「スカッと爽やか〇〇(商品名)」。
何かをさせる例→「お国のために」といって無給奉仕させる。「海を汚さないために」といってレジ袋を有料化する。Guilt by association (Reductio ad Hitlerum):連座の誤謬。「A氏が麻薬使用容疑で捕まった」→「ところでB氏はA氏と仲がいい」→「B氏も麻薬をやっているに違いない」のように三段論法の形を取るが、「仲がいい」ことと「麻薬をやっている」ことは無関係なのに、詭弁を承知で故意に関係付ける。
H, I(3)
Half-truth:主張の中に、ある程度の真実を混ぜることによって、主張の全体を真実だと思い込ませる。間違った情報を信じ込ませたり、対象者の好まない結果に誘導する。
【例】2018年1月、トランプ大統領はTwitterで 「私の政策のおかげで、黒人の失業率が過去最低となった!」と主張したが、トランプ大統領が就任する7年前の2010年から一貫して低下していた *8。Information overload:認知処理能力を超える大量の情報を流して、対象者の意思決定能力を低下させる。
Intentional vagueness:故意に曖昧な発言をして対象者に独自の解釈をさせて行動させる。
対象者が解釈を間違えたとしても、あるいはその解釈をもとに間違った行動をしても、自分は「それはあなたが勝手にそうとらえただけだ」といってしらを切る。 *9
L(5)
Labeling:多くの場合、短いフレーズを使って対象者(物)にネガティブなイメージを貼り付ける。
【例】「あいつはネトウヨだ」「左翼だ」「あれ(商品)は"ガラクタ"だ」 *10Latitudes of acceptance:交渉の場のテクニック。自分と対象者の意見の間に開きがある場合、自分に有利な妥協に誘導しようとする方法。2つある。
一つは、高めの要求をふっかけてから交渉に入る。Door-in-the-face techniqueと同じ。
もう一つは、いったん対象者の受容できる範囲まで自分の要求を下げて、その後にだんだんと元の自分の要求に釣り上げる。Foot-in-the-door techniqueに近い。Loaded language:ある事柄に対して、強く感情に訴えかけるような表現を付け加えたり、事柄事態を強い言葉に変更する。
「"美人すぎる"アナウンサー」。「法の変更」→「改革」Love bombing:カルト教団などが使う手口。対象者を家族や共同体などの既存のグループから引き剥がすために、対象者に対して多大な愛情を浴びせかける。
Lying and deception:単純に、ウソをつく。騙す。
M, N(5)
Managing the news:国政府が大衆に吹き込みたい主張を、メディアを通して何度も繰り返し、大衆を耳タコ状態にする。classical conditioningやad nauseamに関連する。
Milieu control:(Milieuはフランス語で周囲・環境の意味。)カルト教団などが使う手口。新しいメンバーの環境をコントロールすることによって洗脳する。多くの場合、メンバーを隔離して外界の情報を遮断する。
Minimisation:自分が行なったネガティブな行為のインパクトを小さく見せようとする。
被害者を貶(おとし)めて、自分の加害の最小化する。(例:あいつはいつも客からカネを巻き上げてるじゃないか!)
もう一つは、自分の行為は利他行為だ(例:国家の名誉のためにやったんだ!)と言い張る。Name-calling:誹謗中傷。対象者に対する悪口を言いふらしたりレッテル貼りをして言いふらして、対象者の評判を貶める。
Non sequitur (Formal fallacy):「〇〇だから××だ」「〇〇ならば××だ」という結論と理由(仮定)に欠陥があるのに、押し通そうとすること。
【例】「憲法第9条を変えれば戦争になる」 *11 という主張はよく聞くが、そもそも憲法の条文に戦争を止める力などあるわけが無いので、文章として間違っているのだが、それでも一部の人々の中では通用してしまっている。