歴史の世界

順次戦略と累積戦略

奥山真司氏が順次戦略と累積戦略という用語を使って啓発関連の記事を書いていたので、これを使って順次戦略と累積戦略がどういうものなのか書き留めておく。

何かを戦略的に成功させようとする場合、その全てはたった2つのやり方に分けられる。2つとは「順次戦略」と「累積戦略」である。この分類法を提唱したのは、元米海軍の将校で、旧日本海軍とも太平洋戦線で戦った経験を持つJ・C・ワイリー海軍少将だ。[中略]

順次戦略は現在、ビジネス書などでもてはやされているやり方のほとんどに当てはまる。具体的には目標の設定、数値化、データ化、バランスシートの強調、もしくは「見える化」など、極めて現代的かつ西洋的なやり方だ。

正反対のやり方が累積戦略だ。[中略] 単発の小さな成果を細かく積み上げる。「見える化」せず、手当たり次第にものごとを進めるという、かなり古い東洋的なやり方である。

「目の前のことを必死にやれば、いつか努力が報われ花が咲く」というのがまさに累積戦略である。日々同じことを繰り返して小さな成果を積み重ねると、ある時点で突然爆発的な効果(「創発」という)が生まれるのは興味深い。[中略]

この2つの戦略はそれぞれ長所と短所がある。肝心なのはワイリー氏も主張するように、2つを同時に使わなければダメだということだ。

出典:奥山真司/【脱ハウツー本!本当の人生戦略】2つの戦略 順次戦略と累積戦略を組み合わせよ - 政治・社会 - ZAKZAK

戦略というのは大きく分けると順次戦略と累積戦略の2つだけ。

順次戦略とは、計画を立て、工程表を作り、これを順次こなしていく進め方。ただし、工程表が組み立てることができるように中間に幾つかの目標を置くことが可能なもの、数値化できて達成率が測れるものに限定される。

累積戦略とは、順次戦略とは逆に、工程表を作れない、あるいは数値化できない作業をひとつずつやりこなしていく進め方。累積戦略は達成率が分からないので、ある日突然に爆発的な効果が現れる。これを「創発」という。

累積戦略は順次戦略の補完的なものである。つまり、2つは陰と陽の関係にあり *1 、2つ合わせて完全になる。《2つを同時に使わなければダメだ》とはそういうことだ。

ところで、奥山氏はJ・C・ワイリー『戦略論の原点 軍事戦略入門』 *2 を邦訳している。本来は軍事戦略の話である。戦略の階層を要確認。




ちょっと思いついたことを一つ。
ニュートンがリンゴが落ちたのを見て万有引力の法則を発見したという話があるが、真偽は別にして、ニュートンは「あれこれと考え続ける」という累積戦略をやっていた。そしてリンゴかなにかのきっかけで「創発」した、と考えてみればいいのではないか?
ただし、これと対になる順次戦略は何か、そもそも順次戦略があったのか、私は知らない。


*1:奥山真司. 世界を変えたいなら一度”武器”を捨ててしまおう (Kindle の位置No.1767). フォレスト出版株式会社. Kindle 版.

*2:芙蓉書房出版/2007年