歴史の世界

「地政学」シリーズを書く

今回から地政学について書いていく。

地政学」の需要の高まり

ニュースで「地政学的に〇〇だ」みたいな形でたまに見聞きする。例えば「日本にとって台湾は地政学的に重要だ」など。「台湾」の代わりに尖閣や沖縄を代入しても同じ。

言わんとしていることは「安全保障上」重要だということは理解できるが、このフレーズは「地政学って何?」という疑問を読者・視聴者のアタマに植え付けることとなる。

ある文章によると「地政学」をタイトルに含む本の出版数が、2000 年代の10年間で 34 冊だったが、 2016年が29 冊、 2017年が27 冊であったという。 *1

2020年6月に出版された奥山真司(まさし) (監修) 『サクッとわかるビジネス教養 地政学』という本が3ヶ月で10万部も売れた(と出版社が大宣伝している)。

地政学」に関する需要は、おそらく中国の軍事的な存在感(プレゼンス)が原因だと思われる。中国の太平洋における漸進的な侵略(サラミ・スライス戦術)に対して、ニュース解説において「「地政学的に~」というフレーズの頻度が多くなっているのかもしれない。

そして米中冷戦に突入している今はさらに不安が高まり、「地政学」への需要も増えているようだ。

地政学」を簡単に説明すると...

地政学というのは簡単に言うと、アメリカやロシア・中国のような世界覇権を争う大国が世界地図を見ながら他地域を支配するためのツールの一つである。地政学は戦略を考えるためのツールであり、語り合うための共通知識であり、素人(政治家を含む)を説得させるためのツールにもなっている。

ただし、大国以外は地政学に関係無いと言えばそうではない。地政学を知れば大国がどのような考えで行動しているのかが分かるし、逆に地政学を使って大国をコントロールできるかもしれない。

米中冷戦が始まって、外交に無関心であった日本国民も(日本国の主権者として)世界地図を見ながら政治を考えなくてはならなくなってしまった。

世界各地のニュースが日本の国益にどのように影響してくるのかを理解するためにも地政学の知識は有用だ。たとえば、中東問題が世界的にクローズアップされてしまうとアメリカはそちらに関心を集中せざるを得ず、東アジアは疎かになってしまう。そうなると中国の動きが活発になる...というような感じだ。バイデン政権が発足するとヨーロッパ外交重視になり、東アジアは疎かになると言われているのも同様だ。

ただし地政学は世界地図を俯瞰するマクロな視点だけではなく、各国各地域の個別の情勢分析をも含んでいる。ミクロな視点も無ければ支配はできない。(「地政学とは何か」については次回あらためて書く)。

さて、このブログは世界史を綴るためのブログなのだが、地政学は歴史を理解するためにも役立つ。そもそも地政学の開祖とされるマッキンダーの考えの中に「人類の歴史はランドパワーとシーパワーの闘争の歴史である」というものがあり、歴史の中から地政学が生まれたとも言える。

地政学を理解して世界史の理解を深めることができるように願って地政学を勉強しようと思う。ただし、一般書を読むだけなので深い理解はできないと思う。