歴史の世界

【戦略学】リアリズム(とリベラリズム)

リアリズムが戦略学のカテゴリーに入るのか、正直わからないのだが、とりあえず戦略を立てる上で知っておかなければならない用語らしいので、ここに書いておく。

ここで書くことは表面的なことだけなので、ガッツリ学びたい人は 奥山真司氏の音声教材 で勉強したらどうでしょう?

また、リアリズムとよく比較されるリベラリズムについても書いていく。

リアリズムとは何か

国際政治を理論的に分析しようとする「国際関係論」という学問では、
ズバリ!「国際関係を、主に『権力(パワー)』という要素にしぼって
分析、予測する理論」ということです。

つまり、「リアリズム」とは、
「国際政治というのはすべて権力の力学による闘争なのだ!」
と現実的(realistic)に考える理論です。
よってリアリズム(現実主義)となるわけです。

出典:リアリストとは?いかなる人達なのか。いかなる学問・学派なのか。|奥山真司の地政学「アメリカ通信」

まず、「リアリスト(現実主義者)」が考える国際社会とはアナーキーつまり無政府・無秩序で弱肉強食の世界だ。

そんな中で頼りになるのはパワーのみ。このパワーは基本的には武力・軍事力のことを指す。

彼らにとってみれば、
国際政治を動かす「パワー(power)」というのは、
「軍事力による脅しや実際の行動(攻撃)によって、
相手の国を自国の意思にしたがわせる能力」
ということなのです。

究極的にいえば、「リアリズム」では、
この「パワー」こそが国際社会を動かす唯一最大の要素なのです。
ですから、ここに注目してさえいれば、
概ね相手の動きは読めてしまう、ということなのです。

出典:同掲サイト

マネーが「パワー」になることもあるようだが、やはり引用のように軍事力(脅しや攻撃)による恐怖が第一のようだ(アメよりムチ)。

そして、リアリストたちの「平和を保つには?」の問いの答えは「軍事バランスを保つこと」となる。

リアリズムの歴史観/人間観

日本で国際政治やその理論などを学ぼうとすると、最初に触れるのはマルクス主義などをベースにした「理想主義/ユートピアニズム」が多い。もしくは「絶対平和主義」のようなものになる。いわば理想論と言ってもいい。[中略]

[欧米の]国の国際関係論の教科書は、まずはリアリズムの理論の勉強から始まるのが普通だ。いわゆる「現実主義」である。

最初に教えられる理論からして、「近代国家といっても、実はそれほど成熟しているものではなく、欲と業の塊であり、基本的には際限なく増殖しようとするものなのだ」という歴史観から始まるのである。

出典:"悪の論理"で世界は動く!~地政学—日本属国化を狙う中国、捨てる米国/フォレスト出版/2010/p37

上では近代国家は成熟しているものではないと言っているが、これは人間も成熟していないということだ。

人間は知識の蓄積によって頭が良くなって、平和のための社会を構築しようとしてはいるが、一皮むけば「欲と業の塊」の動物の一種である、リアリストはそう考える。

以下の動画では、奥山氏は「リベラリストは人間は完璧になれると主張するが、リアリストは完璧なんてなれない/不完全なままだ」(要約)と言っている。

リアリズムとリベラリズムの比較

国際関係論において、リアリズムと比較されるのがリベラリズムとのこと。

リベラリズムについて簡単な説明がwikipediaにある。

国家の能力よりも国家の選好が国家行動の主な決定要因であると主張する。国家を単一主体とみる現実主義と異なって、リベラリズムは国家行為における多元性を許容する。それゆえに選好は国家によって変わり、文化、経済体制、政治体制のような要因に依存する。リベラリズムはまた国家間の相互作用が政治レベルに限定されるだけでなく(ハイポリティクス)、企業、国際機構、個人を通じて経済分野(ローポリティクス)にまで及ぶと主張する。したがって協調に向けた多くの機会や、文化資本のような広範な権力概念が含まれる。

もうひとつの前提は、絶対利得が協調と相互依存を通じて得られ、平和が達成されるというものである。

リベラリズムには数多くの潮流が存在する。商業的リベラリズム、(ネオ)リベラル制度論、理想主義、レジーム論などが含まれる。

出典:リベラリズム (国際関係論) - Wikipedia

難しいが、リアリズムとリベラリズムを比較すると理解しやすくなる。

以下に比較を書いていくが、私たちが国際ニュースで見る国際社会はほとんどがリベラリズムだと分かる。ただし現実をよくよく調べると、リアリズムの主張に真実味があることも分かる。

国際社会を動かす手段
リベラリズム:国際制度機関・国際取引・民主制の推進など
リアリズム:軍事力(同盟を含む)・経済力

国際社会を動かす主体
リベラリズム:あくまでも国家が中心だが、国際機関・多国籍企業NGOなども主体になりうる
リアリズム:国家のみ

経済的相互依存関係
リベラリズム:深まれば平和になる
リアリズム:深まっても戦争は起こる

平和について
リベラリズム:あらゆる相互依存を深めて協調性を増し、あらゆる問題は協議してルール化・制度化をすれば平和は維持・達成できる
リアリズム:軍事力の均衡においてのみ平和が保たれる

(以上は、 《リアリストとは?いかなる人達なのか。いかなる学問・学派なのか。|奥山真司の地政学「アメリカ通信」》 や 《【リベラリズム(国際関係)とは】現代までの変遷と理論をわかりやすく解説|リベラルアーツガイド》も参照。)

個人的には両者は理想(リベラリズム)と現実(リアリズム)を表していると思っている。両者を天秤にかけて、国際社会を見るのが妥当だと思う。歴代中国の皇帝が儒家(理想)と法家(現実)を使い分けていた。

リベラリズムの現実

ただし、国際関係論という枠をはずして実際のリベラリストを考えると、リアリスト・奥山氏としてはリベラルを許容できないらしい(上で紹介した動画《リアリストの人間観 VS リベラリストの人間観》を参照)。

実際のリベラリストは人間は努力すれば完璧になることができるというところまではいいのだが(リアリストは努力してもなれないと主張する)、完璧に到達したと勘違いしたリベラリストは他を見下すようになる、これが許せない(リアリストは、誰もが不完全でありミスもするから認め合うこともできる)、とのこと。

奥山氏ほか、保守言論人が言うところによれば、リベラルな人たち(左派)はある理想を掲げると他の理想を排除する傾向を持つ。そして行き着くところは全体主義だという。多様性・協調・人権を重んじる彼らが、結果的に真逆の方向に走ってしまう一因として、自分が掲げる理想を絶対視してしまうが故に他の理想を許容できなくなってしまうからのようだ。

それでも世の中には尊敬できるリベラリストと言う人がいるようなので、リベラリストは「全体主義に陥ってしまう危険性を持っている」くらいにしておくべきかな?