「プロパガンダ」という言葉をよく見聞きするが、その意味をちゃんと分かっていなかったので、色々と調べてみた。
「プロパガンダ」とは何か
プロパガンダの定義。大雑把だが、極めて分かりやすい定義を紹介する。
分かりやすいのだが、これだけでは不十分だ。
次に、少し長い説明を引用。
プロパガンダ(propaganda)とは、特定の思想によって個人や集団に影響を与え、その行動を意図した方向へ仕向けようとする宣伝活動の総称です。特に、政治的意図をもつ宣伝活動をさすことが多いですが、ある決まった考えや思想・主義あるいは宗教的教義などを、一方的に喧伝(けんでん)するようなものや、刷り込もうとするような宣伝活動などをさします。要するに情報による大衆操作・世論喚起と考えてよく、国際情報化社会においては必然的にあらわれるものです。今日その方法は、必ずしも押しつけがましいものではなくなり、戦略化し巧妙なものとなってきています。
「アジテーション」との比較
上の引用元にはアジテーションの定義も載っているので、これも引用しよう。
プロパガンダに似た言葉に「アジテーション」があります。アジテーションは「振動」や「動揺」などを意味する英語のアジテーション(agitation)から来ています。「世論を喚起する活動やキャンペーン」という点ではプロパガンダと近いですが、アジテーションはむしろ「煽(あお)り」の意味合いが強く、「扇動」「大衆の潜在的不満をそそのかして行動を起こさせること」を意味します。
出典:同掲サイト
まとめ
以上をまとめると、
- プロパガンダ(宣伝)は政治的意図や主義主張を刷(す)り込むことによって大衆の心コントロールしようとする行為
- アジテーション(扇動)は大衆の不満を唆(そそのか)し煽ることによって大衆の心コントロールしようとする行為
プロパガンダとPR(マーケティング)の違い
上述のエドワード・バーネイズ(1891-1995)は「PR(パブリック・リレーションズ)の父」と呼ばれるが、『プロパガンダ教本』で解説の中田氏は、バーネイズをPR・プロパガンダを初めて体系的に理論化した人物として紹介している。バーネイズはPRとプロパガンダを同義として扱っているという。そんなわけで、バーネイズは「プロパガンダの父」とも呼ばれる。
ちなみに、プロパガンダというと世間一般的に悪いイメージがあるが、バーネイズは中立的な用語としている。
上記のように、プロパガンダ=PRなので、政治以外の場でも使われている。ただし、バーネイズはPRを行う場合は大衆を騙してはならないと繰り返し書いている。
上記の本では、バーネイズが1955年に発表した The Engineering of Consent (未邦訳、「合意の製造」という意味)の中でプロパガンダ技術(=PR技術)の重要な8つのポイントというものを紹介している。
- 目的を明確化せよ
- 徹底的に調査を行え
- 調査で得られた結果に基づいて目標に修正を加えよ
- 戦略を立案せよ
- テーマ、シンボル、宣伝文句(キャッチフレーズ)を決めよ
- その戦略を実行するために(第三者による)組織を立ち上げよ
- タイミングと具体的なやり方を考えよ
- プランを実行に移せ
(p245:訳者解説文中)
これはマーケティングの基本的なプロセスの「RSTPMMIC」 *2 の原型なのかもしれない(全てではないが)。
上のように組織的にガッツリとやらなくても(口からでまかせのようなものでも)プロパガンダはできるのだが、組織が効率的にやろうとすると以上のようなプロセスが必要になるということらしい。
細分化(セグメンテーション)とインフルエンサー
たとえば、『プロパガンダ教本』の第二章(新しいプロパガンダの誕生)では、「新しいプロパガンダ」の手法としての「細分化」「インフルエンサー」の話が出てくる。
政府の政策への支持を集めるべく、細分化された各グループの重要人物の協力を得るようになったのである。それらの重要人物らの発する一言は、何百、何千、いや何十万という支持者に対して権威を持っているのだ。
そして、大衆を説得しようと試みている人々は、友愛、宗教、業種、愛国者、社交、地域によって区分けされたグループ内の支持を自動的に取り付けることに成功した。なぜなら、グループのメンバーたちは、そのグループのリーダーやその主張を代弁する人物から、あるいは日頃から読んでいてその主張に馴染んでいる新聞・雑誌の類から、意見を取り入れていたからである。
出典:プロパガンダ教本/p53
細分化(セグメンテーション)は、上記のように「友愛、宗教、業種...」のように大衆を属性ですること。マーケティングの用語でもあり、「RSTP...」の「S」のこと。
そして、あるグループ属性のリーダーがインフルエンサーとなる。グループのリーダーといっても日常的に話し合える人物だけではなく、会ったことがないテレビのコメンテーターや有名人もインフルエンサーになりえる。ただし、テレビのコメンテーターや有名人のほとんどはテレビ制作業者の台本で動いているだけだから、彼らが出演しているテレビ番組自体がインフルエンサーと言ったほうがいいのだろう。
インフルエンサーに直接アプローチして、説得・賄賂・脅迫などをして、コントロールできれば、彼/彼女のグループをコントロールできることになる。
ちなみに、現在のマーケティングのプロセスの一部に「セグメンテーション」があるが、マーケティングの手法ではインフルエンサーに働きかけることもあるが、別のアプローチもいろいろと開発されている。たとえば、ある属性に物やサービスを売り込みたい場合は、メールなどを送って勧誘する。趣味趣向・行動様式は人々のスマホから抜かれているのでセグメンテーションは昔と比べてよりピンポイントに狙えるそうだ。
プロパガンダの種類
以下はざっくりとした、プロパガンダの種類。
プロパガンダの種類
プロパガンダには大別して以下の分類が存在する。
ホワイトプロパガンダやコーポレートプロパガンダは事実に基づいて周知・宣伝するので基本的に悪事とは無関係なのだが、そうでないこともあるようだ。
*1:2007年/成甲書房/p38