歴史の世界

【戦略学】勝つためにはルールを作る権力を握らなければならない

かつて国際スポーツの中で日本が強かった競技で、ルールを変更されて金メダルが獲れなくなったという話がいくつもある。日本人は「欧米人はズルい!」という。私だってそういう思いはある。しかし、そう言い続けるだけでは同じことが続くだけになる。

ルールを変えられるのが嫌ならルールを変える権力を握ってしまえばいいのだ。

ルール作りの重要性

戦略で狙うべきことは「相手をコントロールすること」。もっと分かりやすくいえば、戦っている最中も、後も、自分にとって不都合にならないように「相手や状況をうまく管理すること」。さらに詳しくいえば、バトルでの勝利(これは戦術の狙い)より、戦いが行われる仕組みやルールそのものを作り、相手より「長期的に優位な状態」を保つことを狙う。

出典:【脱ハウツー本!本当の人生戦略】戦略では「コントロール」を!長期的に優位な状態を狙え - 政治・社会 - ZAKZAK(文は奥山真司氏)

例えば、TPPのルールを決める時に、各国は当然のことながら自国が有利なルールになるように主張する。

国際スポーツのルールを決める場でも同じようなことが起こっていると考えるべきだろう。

スポーツ・経済におけるルール変更

世界を変えたいなら一度"武器"を捨ててしまおう

世界を変えたいなら一度"武器"を捨ててしまおう

  • 作者:奥山真司
  • 発売日: 2012/07/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

上記の本で、奥山氏はノルディック複合競技の荻原選手の話を出している。詳しいことはここでは省略するが、長野オリンピックの前に優勝候補であった荻原選手にとって不利なルール改正がされてしまったという話だ。 *1

こういう問題は、スポーツ好きの人はたくさん思い浮かぶだろう。

例えば、柔道のポイント制偏重、水泳のバサロ制限、バレーボールでブロックのワンタッチをカウントしない、スキージャンプの板の長さ...などなど。これらが全て本当なのかどうかは分からないが、これらがルール改正の主導権を握ることの大切さを教えてくれる。

また、奥山氏はBIS規制の話をして以下のように締めくくっている。

日本 の 銀行がすごく強くなったら、日本を狙い撃ちするようなBIS規制という自己資本比率8パーセントという新しい国際 統一基準が作られました。このルールのおかげで、日本の銀行がバタバタと潰れました。

このように、日本人は自分からルールを都合よく変え ていくのではなくて、ほかの国に変えられてきたのです。そのなかで必死にやっ て、どんどん負けてきたというのが実態なのです。

ルールを守るという面では、日本人は一生懸命でものすごく優秀です が、いつまでも豊かになれないのは、基本的にルールのほうを変えようとしないからなのです。

出典:奥山真司. 世界を変えたいなら一度”武器”を捨ててしまおう (Kindle の位置No.290-296). フォレスト出版株式会社. Kindle 版.

日本国内に目を向ければ、ルール作成は(政治家ではなく)官僚に握られているから、各省に不利益になる規制緩和が進まずに国益を損ねている。

ルールを作るまたは改正する権利を握ることは自身の有利な環境を作るということと同等だ。

技術を磨いても欧米には勝つことはできない

日本は長い間、もの作りを経済の柱としてきまし た。 もの作りというのは、 確かに基本的に技術 継承で、 すごい匠 の人 がいたり技術者がいたりして成り立っ て いる もの です。 日本 には 素晴らしい 職人 が い て、 彼らが頑張ってこの国を支え てきたと言っても過言ではありませ ん。

出典:奥山真司. 世界を変えたいなら一度”武器”を捨ててしまおう (Kindle の位置No.152-154). フォレスト出版株式会社. Kindle 版.

日本はものづくり大国と言われることがあるが、ものづくりは最新技術を作り続けなければ、後進の国々にすぐに追いつかれてしまう。日本は数十年に及ぶ経済政策の失敗により売上不振の製造メーカーが保身に走った結果、韓国のサムスンに代表されるようなメーカーに追い抜かれ遅れを取るようになった。そしてかつて下請けメーカーの集まりであった中国は今やアメリカから恐れられるほどのものづくり大国になっている。

じつはアメリカもかつてはものづくり大国だったのだが、今これを程度あきらめて別の道を歩いている。

アメリカの企業、すなわちアップルやアマゾンなどは流通の仕組みそのものを握ることで優位に立とうと考え、そして成功した。世界中の製造メーカーは彼らのいいなりになるしか無くなった。

実は戦略学では、技術のようなハード面でいか 勝つかと考えることは、戦術という低いレベルに属するものなのです。 その下のレベルが ハードそのもの について考える技術 というレベル です から、日本がどれだけ頑張っても欧米に勝てるわわけがないのです。

出典:奥山真司. 世界を変えたいなら一度”武器”を捨ててしまおう (Kindle の位置No.167-169). フォレスト出版株式会社. Kindle 版.

勝つためにはルールを作る権力を握らなければならない

奥山氏は第一章《なぜ 日本人 は「 戦略」 が 苦手 なのか?》の最後のほうで書いていることを簡単にまとめると以下のようになる。

国際社会には世界政府などというものは存在しない、つまりアナーキーな世の中である。日本または日本人はこのような弱肉強食の中で生存競争をしていかなければならない。それがリアリズムだ。

日本または日本人はこのようなことをあまり意識せずにやってきたが、これからはもうそんなことを言ってられる時代ではなくなった。

日本は技術力を盲信することをやめて、まて、日本人は一旦スキルアップを考えるのをやめて、思考をガラリと変えることを提案している。新しい思考とはもちろん自分の有利なルールを作ることになる。

言うは易く行うは難しだが、日本政府はやらなければならないことだろう。



*1:奥山真司. 世界を変えたいなら一度”武器”を捨ててしまおう (Kindle の位置No.279-280). フォレスト出版株式会社. Kindle 版.