歴史の世界

プロパガンダ(3)プロパガンダと「宣伝戦」

前回はエドワード・バーネイズの話をした。バーネイズは「プロパガンダ=PR(広報宣伝)」と主張した。彼はプロパガンダをビジネスで使うために最新の注意をはらい、「企業の宣伝活動は、企業が抱いている真の目的を覆い隠すためのまやかしであってはならない」 *1 と書いている。

今回は「プロパガンダ=宣伝戦」の話をする。上記に対してこちらのプロパガンダの対象は顧客ではなく、敵国または諸外国だ。こちらは上品さは求められず、かなり荒っぽいことをする。特に戦争中や直前ではウソの度合いが多くなる(即効性が求められる)。

宣伝戦とは?

宣伝戦とは?
宣伝主体が近代の諸技術を利用し,特にマス・コミュニケーションの手段を駆使して,個人,集団,国家構成員全体の教条,判断,関心などを間接的に一定方向に誘導しようとすること。商業宣伝であれ政治宣伝であれ,宣伝主体の意図の方向に受信者,同調者を大量に獲得すればするほど,成功した宣伝と考えられるので,宣伝戦には宣伝内容の真理性が第一義的には重視されず,また理性だけでなく情緒へのアピールもなされる。政治の世界では,党派,国家,陣営などの宣伝主体が自己の同調者をより多く,相手側の同調者をより少くするため,象徴的なメッセージを投げ合って激しい宣伝戦を行う。第1次および第2次世界大戦において,両陣営が大規模な宣伝戦を行なったのは周知の事実である。現代の戦争が心理戦争の一面をもつといわれる理由がここにある。

出典:宣伝戦とは/ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典/コトバンク

「第1次および第2次世界大戦において」行なわれたように読めるが、平時でも日々おこなわれている。

以上を踏まえた上で、奥山真司氏の宣伝戦の解説。

私達日本人は往々にして、例えば、歴史認識などの問題になると、 「後生の歴史家に判断をゆだねる」ですとか、「学者の共同の研究会を立ち上げる」という話になったりします。

が、まったく、無駄です。調査など二の次なのです。

そもそも、「歴史の真実」という単語は日本人の考えるそれと同じではありません。歴史は政治の「道具」として使う概念なのです。「真実」を語りあって解決する気がないという厄介な相手です。

お人好しとも言える我々日本人は、この認識が決定的に欠けていたので、これまでずっと負けて続けてきました。

南京大虐殺」、「百人斬り」、「いわゆる"従軍慰安婦"問題」全部ウソでした。結局、真実を追究して主張してもダメなのです。

本当はそんなことはないのに、あたかも"それがあったかの如く"世界は動いています。このような問題は、歴史家、学者に任せても解決しません。政治家が腹を決め、「政治」主導で戦うしかないのです。[中略]

これがプロパガンダ(宣伝戦)です。アピール力による武器なき戦争、つまり、 周辺国民の頭に侵入して、その認識を書き換えてしまう「戦争」なのです。

「これが戦争なんだ」という認識を持つとすぐに納得できると思いますが、要は、<なんでもアリ>なのです。

出典:奥山真司のプロパカンダ&セルフプロパカンダ|奥山真司の地政学「アメリカ通信」

宣伝戦とは武器なき戦争。つまり平時でも(今現在でも)行なわれている。日本は「南京大虐殺」「"従軍慰安婦"問題」で何十年も攻め続けられて負け続けてきたのだが、だいたい日本は仕掛けられていたという意識すら無いか極めて薄い *2 。それどころか中韓に味方するマスメディアや言論人のほうが多いというのが現状だ。今も当然仕掛けられているのだが、マスコミが中国に忖度している状況は今なお続いている(ちなみに最近は韓国に対する報道はほとんど無い)。

日本人はまず、平時(今現在)でも宣伝戦が常時行なわれていることを認識し、警戒し、マスコミの中国への忖度を批判しなければならない(他の国へも同様)。

ウソを現実と書き換えてコントロールする

ここからは上記の奥山氏のページを細切れにしてコメントしていきたい。なお、コメントは私の勝手解釈。

我々日本人は「真実」とか、「真理」、「真心」が大事だと長年教えられ、それを信じて来ました。しかし、「戦略」を考える上での仮定、仮定ですから、つまり<ウソ>です。そして、これが最終的には「現実」すらひっくり返して、更に新たな「現実」を創る、そういう非常に重要なイメージなのです。

そして、世界はウソに満ちていますが・・・

「真実(戦術)」より、「ウソ(戦略)」によって新しい「現実」を創っている

ここをしっかりと理解できないと「プロパガンダ」はわかりません。[中略]

道徳と戦略は区別しないといけません。

まずは、「真実(戦術)」「ウソ(戦略)」がどういうことかの説明。これを理解するには奥山氏の「戦略の階層」を理解しなければならないのだが(当ブログ記事はこちら)、ここでは簡単に説明したい。

「未来は〇〇になるかもしれない」「敵の現状は〇〇の可能性が高い」のような仮定を基にして戦略は立てられるが、奥山氏は「仮定=ウソ」としている。「ウソなくして戦略は立てられない」と。

そうなると、敵の「ウソ」を自陣の都合の良い「ウソ」に書き換えることができたら、自陣が敵をコントロールできることになる。この考え方が「ウソ=戦略」の急所だ。

一方、戦術は戦略の下部にあり、上部組織が戦略を練って下部組織が戦術を立てて実行する。下部組織は上部の命令と現実の実体に基づいて戦術を立てる。これが「真実=戦術」の急所。

次に、日本人の問題。私たち日本人は正直者が称賛され、事実を言えばかならず他人は分かってくれると思っている。現実はそんなに甘くないとは思ってはいるが、国際政治では日本人が想像もつかないようなウソ(プロパガンダ)が横行している。そしてプロパガンダは有効に機能している。上述の「南京大虐殺」「"従軍慰安婦"問題」が良い例だ。

日本人は相手の嘘を見破るだけではなく、ウソをつけるようにならなくてはならない。そうしないと宣伝戦に勝つことはできない。そして「道徳と戦略は区別しないといけません。」

日本は下部組織は優秀だが、上部組織が二流三流だということは第二次大戦にも現在の企業についても言われている。その要因の一つとして日本人が「ウソ=戦略」に弱い(ウソをつくのもつかれるのも)ということが言えるだろう。

日々是レ宣伝戦

先進国では人権問題などもあり、実際の戦闘行為を伴う戦争によって、戦死者をこれまでのように出せなくなりました。もはや大規模な死者の出る戦争は行いづらい時代になり、「プロパガンダ」に大きなウェイトを掛けています。

武器を使わなくとも、カネを巻き上げ、人々の脳の中のイメージを書き換えてしまえば、 やがて、これが「現実」として、本当の歴史として書き変えられていくのです。

相手側の認識、いうなれば、その脳を書き換えてしまえば、相手の動きを「コントロール」することができます。多国間での国際政治では、各国は常にイメージ戦で相手をコントロールしようと仕掛けて来ます。

日本人はウソをつくと後々困ることになると思うが、中韓は「ウソを現実と書き換えてしまえば敵をコントロールできる」と思っているから、ウソをつくモチベーションが日本人と正反対になる。中韓以外の国々も同じように考えていると思ったほうがいい。

プロパガンダはカネで釣った他国の有力者に言わせるという手口もある。WHOのテドロスが中国よりだということは有名だ(ただし最近の中国の傲慢な態度のおかげで世界中に反中感情が蔓延してテドロスも中国批判をせざるを得ない状況になっている)。

中韓米のプロパガンダに対抗しなければならない

中国や韓国のように、拠り所となる「真実の歴史」がお粗末では、ハナから「ウソ」を使って攻めていくより他ありません。国際社会で成り上がるために、「真実(戦術)」よりも、さらにパワフルな「ウソ(戦略)」を選択したに過ぎないのです。[中略]

世界では、真実=実力ではなく、ウソの力、ハッタリ力=実力と考える国に満ちています。

北朝鮮、韓国とハッタリだけの国
中国、アメリカとハッタリを組み合わせている国
に日本は囲まれています

中韓の《「真実の歴史」がお粗末》について。古代中世の話は脇に置いといて、近現代の「中華人民共和国」「大韓民国」の建国からの歴史はお粗末といえるだろう。だからこそ彼らは歴史を捏造しているのだ。彼らの言う「正しい歴史」というものは、彼らに都合の良い歴史のことだ。

そして、上述のとおり、中韓は「ウソを現実と書き換えてしまえば敵をコントロールできる」と思っているので、日本人のように「ウソをつくことは恥」とも思っていないし、バレても次のプロパガンダに移行するだけだ。

日本は、国際政治においては、中韓のこの姿勢を少しは見習ったほうがいいのかもしれない。

さて、ここで米=アメリカがでてくる。アメリカも日本に対してウソをついてきた。

最も重要なプロパガンダが戦後直後の「ウォーギルドインフォメーションプログラム=WGIP」だ。マッカーサーが日本への恨みも合って、「日本が二度とアメリカに歯向かわないようにするための洗脳」を施した。長くなるので詳しくは書かないが、今でもその後遺症が色濃く残っている。最近では日本学術会議が話題になったが、これもGHQが作ったものだ。学術会議のようにアメリカに既得権益をもらった者たちがWGIPを現在まで引き継いでいる(WGIP以外もアメリカは日本をコントロールするためにいろいろウソをついてきたわけだが、詳細には私は知らないのでここでは書かない)。

アメリカの第一の敵は中国、その次がロシア、その次がイランとなっているが、経済大国第3位の日本は、中国が倒れればアメリカの敵(ライバル)にされる可能性は十分にある。敵認定されないプロパガンダも考えておかなければならない。

おまけ

以上、奥山氏のアメリカ通信のページから引用したが、この文章は、『プロパカンダ&セルフプロパカンダ』という音声講座の宣伝だ。

音声講座に興味がある人は↑のページで購入できるので見てみてください。



*1:出典:エドワード・バーネイズ(訳・中田安彦)/プロパガンダ教本/2007/成甲書房/p110

*2:南京大虐殺」がウソというのは、日本軍が、南京戦で一人も民間人を虐殺していないなどということではない。中共は30万人あるいはそれ以上の虐殺があったと主張がプロパガンダだと言っているだけだ。