歴史の世界

2022-01-01から1年間の記事一覧

アケメネス朝ペルシア帝国 その1 「ペルシア」とは何か?

オリエント世界を統一したアッシリア帝国の滅亡後は4つの王国が分立していた。 これから話すペルシア帝国は、上記のうちのメディア王国の従属国だったが、これを滅ぼし、最終的にオリエント世界全土を併合した。 このブログでは、ペルシア人が歴史に登場し…

遊牧、騎馬民族、スキタイのまとめ(起源について)

今回は、前回まで書いてきた遊牧、騎馬民族、スキタイのまとめを書いていく。 遊牧の起源 インド=ヨーロッパ語族の起源 アーリア人について 騎馬民族の起源 西アジアに現れた騎馬民族 遊牧の起源 遊牧の起源として、前5500年に西アジアの「肥沃な三日月地帯…

最初期の騎馬民族 その6(絶頂と没落)

前回からの続き。 スキタイ王アテアス:絶頂期 アテアスの死 没落期 軍事面についてのスキタイとサルマタイの優劣 スキタイの最期 スキタイ王アテアス:絶頂期 ヘロドトス『歴史』で最後に言及したスキタイ王はオクタマサデスだった。前回書いたように『歴史…

最初期の騎馬民族 その5 (スキタイ人、黒海北岸支配)

前回からの続き。 黒海北岸(ウクライナ)支配の始まり:前6世紀 スキタイを取り巻く諸民族 前5世紀前半(ギリシア系植民市との関係) ヘロドトスが生きた時代 黒海北岸(ウクライナ)支配の始まり:前6世紀 前6世紀、スキタイ人は本拠地を北カフカスか…

最初期の騎馬民族 その4 (スキタイ人、オリエント世界に到来)

前回からの続き。 狭義(?)のスキタイ人 先スキタイ時代 スキタイ人の到来 狭義(?)のスキタイ人 前々回に引用したものを再掲。 前7世紀から前3世紀にかけて黒海北岸の草原地帯を中心として成立した騎馬遊牧民族スキタイの文化。史上最古の騎馬遊牧民の文化の…

最初期の騎馬民族 その3 (権力の階層化)

前回からの続き。 中国文明との交流/騎馬民族の形成 モンゴル高原:権力の階層の形成 東から西へ 中国文明との交流/騎馬民族の形成 前9世紀半ばごろは,世界的な気候変動期にあたり,乾燥期から湿潤期への移行期間に相当する。半砂漠だったところが草原に…

最初期の騎馬民族 その2 (スキタイ人の起源≒騎馬民族の起源)

前回からの続き。 今回はスキタイ人の話。 「スキタイ」という呼称について キンメリア人よりも多く語られるスキタイ人 広義(?)のスキタイ スキタイ文化(考古学の見地から) 「スキタイ」という呼称について 「スキタイ」という呼称はギリシア語。ペルシア…

最初期の騎馬民族 その1(騎馬民族について/キンメリア人)

今回は騎馬民族について。 騎馬民族について 騎馬民族の起源:キンメリア人とスキタイ人 キンメリア人 騎馬民族について 以前にも書いたが、騎馬民族の「騎馬」は乗馬という意味の他に、騎乗で戦闘する意味も含む。 騎馬戦術を用いて農耕地帯を略奪するか、…

アーリア人について その2

前回からの続き。 前回は「アーリア人」という用語が人種差別に結び付けられた話を書いたが、今回は現在の学術的用語としての「アーリア人」について書く。 学術的用語としての「アーリア人」 学術的用語としての「アーリア人」 「アーリア人」という言葉を…

アーリア人について その1(インド=ヨーロッパ語族との関係/人種差別とナチス・ドイツ)

前回の話と関連する「アーリア人」の話。 今回はインド=ヨーロッパ語族の研究の歴史と「アーリア人」という用語の登場について書く。次回に現在の学術的用語としての「アーリア人」について書く。 インド=ヨーロッパ語族の研究と「アーリア人」という用語 …

インド=ヨーロッパ語族の起源/クルガン仮説

前回まで遊牧の起源について書いたが、「インド=ヨーロッパ語族」を話す人々はこれと密接な関係がある。 今回はインド=ヨーロッパ語族の起源について。 インド=ヨーロッパ語族について 原郷/クルガン仮説 拡散 拡散の要因 インド=ヨーロッパ語族につい…

遊牧の起源 その2

前回からの続き。 ユーラシア・ステップにおける遊牧の起源 遊牧民と言えば「草原の民」をイメージする。彼らの主な生活空間はユーラシア・ステップと言われる広範な草原地帯だ。 出典:ユーラシア・ステップ - Wikipedia ここでは、以下の中川洋一郎氏の説…

遊牧の起源 その1

遊牧の起源のお勉強。 遊牧の起源についての2つの説 牧畜(家畜化)の起源 遊牧の起源 遊牧の起源についての2つの説 遊牧の起源についてネットで調べると、大きく分けて2つの説が出てくる。 一つは「狩猟→遊牧→牧畜」という順番で起こったという説。この…

【読書ノート】君塚直隆『立憲君主制の現在 日本人は「象徴天皇」を維持できるか』 その8

前回からの続き。 第二次大戦中の国王:ジョージ6世 戦後の国王:エリザベス2世 「コモンウェルスの長」として 現在の立憲君主の役割(イギリス) 第二次大戦中の国王:ジョージ6世 前回はジョージ5世について書いたが、その後はエドワード8世、ジョー…

【読書ノート】君塚直隆『立憲君主制の現在 日本人は「象徴天皇」を維持できるか』 その7

前回からの続き。 ジョージ5世 労働党政権という画期 自由党の没落、保守党と労働党の二大政党制の始まり 1931年、挙国一致政権(第3次マクドナルド内閣) ジョージ5世の「君主の極意」 ジョージ5世 激動のイギリス政治の中で国王エドワード7世が亡くな…

【読書ノート】君塚直隆『立憲君主制の現在 日本人は「象徴天皇」を維持できるか』 その6

前回からの続き。 人民予算 議会法 人民予算 20世紀に入っても庶民の政治参画への熱は治まらなかった。保守党・自由党の二大政党は様々な労働者向けの政策を打ち出したり政治キャンペーンを行なって彼らの支持を取り付けようとした。いっぽう、労働者たちは…

【読書ノート】君塚直隆『立憲君主制の現在 日本人は「象徴天皇」を維持できるか』 その5

権力の下方への拡散(続き) 選挙法改正 二大政党制と政治家の変容 立憲君主制の確立 権力の下方への拡散(続き) 選挙法改正 選挙法改正の話をする前に、そもそもイギリス(イングランド)の歴史の中の選挙とはどのようなものかを確認する必要がある。 貴族…

【読書ノート】君塚直隆『立憲君主制の現在 日本人は「象徴天皇」を維持できるか』 その4

前回からの続き。 議会内閣制の歴史 権力の下方への拡散 「ジェントリ」の台頭 市民(ブルジョワ)の台頭 議会内閣制の歴史 本書では 内閣の歴史について本書71ページによれば、 「枢密院」(1530年代~)から「内閣評議会」(1630年代~)が切り離され、アン女…

【読書ノート】君塚直隆『立憲君主制の現在 日本人は「象徴天皇」を維持できるか』 その3

前回からの続き。 《清教徒革命→共和政→王政復古》の流れ 権利章典 《清教徒革命→共和政→王政復古》の流れ 17世紀半ばより始まった清教徒革命から共和政という大きな流れがあったが、結論を先に言えば、中心人物であるクロムウェルの死により、もとの王政の…

【読書ノート】君塚直隆『立憲君主制の現在 日本人は「象徴天皇」を維持できるか』 その2

前回からの続き。 立憲君主制の起源はイギリスに有り 賢人会議 大憲章(マグナカルタ) 二院制(貴族院と庶民院) 立憲君主制の起源はイギリスに有り 第2~4章までイギリス立憲君主制の歴史について書いてある。 第二章 イギリス立憲君主制の成立 第三章 …

【読書ノート】君塚直隆『立憲君主制の現在 日本人は「象徴天皇」を維持できるか』 その1

立憲君主制の現在: 日本人は「象徴天皇」を維持できるか (新潮選書)作者:君塚 直隆新潮社Amazon 出版社内容情報 目次 著者について 立憲君主制とはなにか 君主とはなにか 立憲君主とはなにか 内容 「はじめに」、第1章 民主主義と君主制 イギリス王室はなぜ…

ユダヤ教成立の歴史⑨ ヤハウェ信仰の危機と一神教の誕生

前回からの続き。 ユダ王国滅亡とヤハウェ信仰消滅の危機 一神教の誕生 ユダ王国滅亡とヤハウェ信仰消滅の危機 ユダ王国が滅亡し、イスラエル民族は自分たちの国を失った。これは民族と彼らが信仰した神の消滅の危機でもあった。 古代オリエント世界において…

ユダヤ教成立の歴史⑧ 旧約聖書の歴史観で見る王国時代 その4 ヨシヤ王の宗教改革/ユダ王国の滅亡

前回からの続き。 北イスラエル王国はアッシリア帝国に滅ぼされ、ユダ王国は属国となった。 しかし、オリエント世界統一を果たしたのアッシリア王アッシュルバニパルが亡くなるとアッシリアは急速に滅亡の途をたどることになる。 そのような期間の中でユダ王…

ユダヤ教成立の歴史⑦ 旧約聖書の歴史観で見る王国時代 その3 (北)イスラエル王国の滅亡とユダ王国の属国化との宗教の変化

前回からの続き。 ヤハウェからの警告 (北)イスラエル王国の滅亡とユダ王国の属国化 普遍的な神観 ヤハウェからの警告 (北)イスラエル王国の将軍だったイエフは、ヤハウェの命令により、クーデターを起こし王位に就いた。 イエフの王朝の4代目ヤロブアム2世…