歴史の世界

進化:進化について

厳密な学問上ではなく、一般的な進化は、ある種(生物)から別の新しい種ができることをいう。時々は新しい属もできる(種・属については記事「「種」「属」について/生物の分類について」参照)。この進化は生物学上、適応進化と言うらしい。

これ以外の進化に中立進化と言われるものがある。

この記事では一般的な進化のみについて書く。中立進化については「中立進化説<wikipedia」などを参照。

進化のプロセス

進化のプロセスについて説明するために必ず必要な用語は突然変異と自然淘汰の二つ。突然変異については記事「突然変異について」参照。自然淘汰については記事「適応と自然淘汰(自然選択)について」参照。

  1. 突然変異というのは周りの環境に関係なくランダムに起こる。多くの突然変異は生存に不利に働くので突然変異した種の個体は子孫を残せない。

  2. しかし、突然変異の中には生存に有利に働く場合もある。ある種が生活している環境が変わった場合(例えば気候変動の変化や個体激増による食糧難など)に突然変異によりたまたま生存と繁殖に有利な形質(生物のもっている形や特徴)を持った個体が生存に有利になる。この場合はその個体は子孫を多く残すことができる。そして生存に有利な突然変異を受け継いだ集団が出来上がる。

  3. ある種の中で、生存に有利な突然変異を受け継いだ集団が個体を増やし、そうでない集団が個体を減らす、このような状況を自然淘汰または自然選択という。

  4. また、個体を増やした集団は生活環境の中で有利な特性を得てより生活しやすくなっている。このような状態を適応という。

  5. ある種に自然選択を仕向ける要因(自然環境変化)を選択圧という。

  6. 突然変異から適応までのプロセスを進化という。

大進化と小進化

上で書いたように一般的な進化は、新しい種がうまれるできることだが、これを大進化という場合がある。これに対応するのが小進化と言う。

同じ種の中で生じる小規模な進化的変化。大進化の対語。新しい種が誕生するような中規模の進化もこれに含めることがある。小進化の例としてまず挙げられるのは,同じ集団内に生じる遺伝的変化である。工業地帯におけるガの工業暗化型の増加,殺虫剤の使用にともなうハエやダニやシラミの薬剤抵抗性系統の出現などがその好例である。前者の例では煤煙(ばいえん)で汚れた環境内では,暗化型の方が鳥などの捕食者によって食われにくいことから有利になり,増加したらしい。

出典:世界大百科事典 第2版<株式会社日立ソリューションズ・クリエイト<コトバンク

進化は進歩ではない

進化とは、生物が時間とともに「変化」していくことであって、その変化は必ずしも「進歩」であるとは限りません。第一、「進歩」という言葉には、悪いものから良いものへという価値観が入っていますが、なにが良くてなにが悪いのでしょう?「下等動物」・「高等動物」という言い方は、細菌のように、からだの体制が単純で神経系がよく発達しているものを「高等」とする価値観に基づいています。そして、その考えではもちろん、もっとも高等で優れた存在が「人間」ということになります。

しかし、自然淘汰に目的はないのだし、進化は、人間という「高等な」生き物を生みだすように進歩を重ねてきた過程なのではありえません。図9を見てください。進化は、左のような梯子ではなく、右に示したような枝分かれの過程です。現在、この地球上に見られるすべての動物は、ミミズでもハトでもイチゴでも、人間と同じように進化の最先端にいるのです。

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最初に生じた生物が単純な単細胞生物だったので、多細胞の複雑な生物は、確かに、あとになってから生まれました。しかし、寄生虫になって他の動物の腸の中で一生を送るようになった生き物の中には、祖先が持っていた内蔵を失ってしまったものもいます。つまり、彼らは、進化の結果、より単純なからだになりました。進化は、単純な一つの梯子にそった進歩の過程ではなく、さまざまに異なる環境に適した、さまざまに異なる生き物を生みだす枝分かれの過程なのです。

出典:長谷川眞理子/進化とはなんだろうか/岩波ジュニア新書/1999/p52-54