以下は出版社の飛鳥新社の内容紹介
謀略戦、心理戦、SNSを使ったプロパガンダと情報戦――〈進化した戦争〉に備えよ!
「我々は常に知識をアップデートし、見えない領域で迫りくる脅威に対抗していかなければならない。私の耳元では軍靴の音どころか、大砲の爆音が鳴り響いている! 」(上念司)"目に見えぬ侵略"はもう始まっている!
カッコ書きが何が言いたいかわからない人もいるかも知れないが、要するに言いたいことは以下のような意味になる。
すでに平時(日常)の日本の今現在でも〈進化した戦争〉は行われている!
〈進化した戦争〉とは即ち謀略戦、心理戦、SNSを使ったプロパガンダと情報戦のことだ!
我々日本国民はこれらの戦争に対して防衛体制を整えなければならない!
著者について
著者の肩書は経済評論家(本業はフィットネスクラブ経営)。ラジオやネットで経済以外のニュースのコメントも発信し続けている。
上念氏は評論家であり、専門家・研究者ではないが、その分 関心は多岐にわたり、各分野の専門家の主張を紹介する形で、言論を展開している。
目次
序章 やつらは繋がっていた。そして我々は何も知らない。
・不条理劇が現実になる日
・ウイグル、チベット、南モンゴル、香港のリアル
・オーストラリアで実際に進行していた〝侵略〟第1章 自由の敵は笑顔でやってくる
・一見正しい平和・人権のイデオロギー。その目的は?
・ソ連崩壊後はじめて明かされた工作活動
・左翼少年のあこがれた理想の国
・日本にも訪れていた革命前夜の危機第2章 戦争でない戦争、戦場でない戦場
・殺戮から戦争へ~戦いのルールを決めたウェストファリア条約
・ホットウォーからコールドウォーへ、代理戦争から下請け戦争へ
・新しい戦争のかたち「超限戦」第3章 戦争のドメイン(領域)
・新たな領域で繰り広げられる「進化した戦争」の姿
・ロシアによるクリミア併合は超限戦の成功例
・国民が死なない戦争と戦争の外注化
・クリミアの事例に学び台湾を狙う中国第4章 武力使わない「乗っ取り戦争」の実態
・国家を乗っ取るまでの起承転結プロセス
・意図的に憲法解釈をゆがめる東大憲法学
・日本の学術界に浸透している影響力工作
・問題を提起し"解決させないこと"を目指す運動の闇
・日本人の民度が試される超限戦での戦い終章 見えない侵略に備え、私たちにできること
・敗戦革命から国を救うのは経済成長と伝統の尊重
・知識をアップデートして見えない侵略に備えよ
項目は多岐にわたるが、全て「進化した戦争」に関わることだ。もっとよく知りたい人のために、参考文献の欄もある。
内容・注目点
基本的に対中国の安全保障についての話。
この本で特に注目すべきは「超限戦」だ。「超限戦」とは簡単に言えば、あらゆる方法を以って戦争を仕掛ける戦い方を指す。そこには非合法な方法も含まれる。
中国は「超限戦」を今現在でも行なっている。日本だけではない。オーストラリアを始め、各国で行なっている。中国以外にはロシアがクリミアに対して行なった。「ハイブリッド・ウォー」と呼ばれるが、これが「超限戦」のことだ。
私たち民間人がこれらに対して備えることは、この事実を理解し、情報をアップデートし、サイバー攻撃や影響力工作に引っかからないように日々注意することだ。選挙も危ない人に投票しないことも重要だろう。
憲法や経済についてはあまり紙幅を割いていないが、重要部分なので注目してもらいたい。
この2つについては以下の本に詳しく書かれているので、興味のある人はどうぞ。
感想
〈進化した戦争〉について全てとは言わないが網羅的に書かれていて、個人的には満足している。この本があれば自分が何を知るべきかをチェックできる。
マスコミが、時代遅れの頭で情報を流しているので、彼らの情報を見ているだけでは身を滅ぼしてしまう。この本のような時代遅れでない情報を個々人が収集して見の施し方なり、投票の決断の根拠にしていく必要がある。
さて話は変わるが、多少、煽りが強い部分、愛国的情緒に走っている部分が目につく。個人的にはあまり好きではないので、2周めからは読み飛ばした。
個人的備忘録(各章)
序章 やつらは繋がっていた。そして我々は何も知らない。
「進化した戦争」を理解しないと、日本もウイグル、チベット、南モンゴル、香港みたいになっちゃうよという話。オーストラリアに関しては「サイレントインベージョン」によって「征服」されかけた。
第1章 自由の敵は笑顔でやってくる
この章のタイトルの意味は、政府を打倒したい勢力(海外勢力だけでなく、反社・反国家勢力)は、いわゆる弱者の味方の振りをして彼らに浸透し、最終的には彼らを取り込んで君臨し、全体主義的な組織を作り上げる。左翼の典型的手法だ(右翼もそうかもしれない)。
こうした弱者の不満は景気が良い時は影響力は弱いが、不況になれば弱者の数も不満も増大する。そういうわけで「自由の敵」は景気を悪くすることまで考えてくる。私たち有権者はそうさせないために経済の知識武装をしなくてはならない。
第2章 戦争でない戦争、戦場でない戦場
この本の核心の部分の「戦争」の説明。戦前の戦争、戦後の戦争、そして「進化した戦争」=「新しい戦争」=「超限戦」の説明。
「超限戦」はロシアのクリミア侵略の中で応用され、今後もこのやり方は使用されると思ったほうがいい。
それなのに、日本のマスコミが言っている戦争は戦前の戦争で、古すぎてお話にならない。
「新聞・テレビなんて見るな」とは言わないが、この2つだけに情報源を頼ると判断を間違える。
第3章 戦争のドメイン(領域)
第2章で見た「新しい戦争」を分野(ドメイン、領域)に分けて説明している章。
陸海空の古い戦争は「新しい戦争」のほんの一部でしかなく、サイバー攻撃や宣伝戦などのあらゆる分野を加味して方針・作戦を立てていかなければならない。陸海空のリアルな戦闘で負けても外交で取り戻すとかは大昔からやられていることだが、サイバー攻撃や宣伝戦などで負けを挽回するというやりかた(クロスドメイン)を考えなければならない。卑怯だなんだなど言っていられない。
第4章 武力使わない「乗っ取り戦争」の実態
《『民間 防衛 ─ あらゆる 危険 から 身 を まもる』( 原 書房) スイス 政府 編》の乗っ取り戦争の説明を元に話を展開している。
「新しい戦争」(の一部)に対して、私たち民間人が何を注意すべきかを洗い出している。最近注目を浴びた「日本学術会議」などは要注意の組織として紹介されている。
自由で開かれた社会はいくらでも敵に付け入る隙があり、彼らが仕掛ける「新しい戦争」に対抗していくのには骨が折れる。それでも自由で開かれた社会を維持していきたいのならば、敵の攻撃を防がなければならない。
終章 見えない侵略に備え、私たちにできること
「私たちにできること」はあまり多く書いていない。
個人的な注目点は、正確な情報を日々アップデートすること、経済を成長させ続けること、敵の嫌がることをやること。
最後の敵の嫌がることをやるとは、具体的に言えば、中国が彼らの都合の良い歴史認識を押し付けようとしてきたら、それに逆の方向の歴史認識を示す、など。
ただし、個人的に付け加えたいのは「敵の 心胆を寒からしめる」だけで満足していただけではダメで、奥山真司氏が主張するように、押し返さなければならない。たとえば、歴史認識で言えば、中国に対して、天安門のことを突っ込んだり、「毛沢東の内政は酷かった」とか、「香港返還の時に行ってることと違うじゃないか」などと言い返して黙らせたり、他国にアピールしたりしなければならない。これが宣伝戦のやり方だ。