歴史の世界

先史/ホモ・サピエンス

【用語】解剖学的現生人類

解剖学的現生人類と現代的行動 現代的行動と進化 解剖学的現生人類と現代的行動 どうやら「身体は完全な現生人類(ホモ・サピエンス)だが現代的行動を身に着けていない現生人類のこと」という意味のようだ*1。この用語ができた時点では現代的行動を身に着け…

「先史/ホモ・サピエンス 」カテゴリーの主要な参考図書およびウェブサイト

今回は疲れた。 まず複数ある参考図書が言っている年代が違う。主張が違うことも多い。 なんとかつじつまを合わせるなり両論併記なりして切り抜けようとすると、ナショナルジオグラフィックやネイチャーの記事が新しい説を発表しているというような感じだ。 …

先史:アフリカ大陸の農業の起源について

農耕の起源について続けて書いてきたが、この記事では農業(農耕と家畜)の起源について書く。もしかしたらアフリカ史的には農耕起源より家畜の起源のほうが重要かもしれない。 他の多くの地域もそうだが、アフリカの農業の起源についてある程度の通説を形成…

先史:南北アメリカ大陸の農耕の起源について

紀元前3000年頃までは、アメリカ先住民すべてが基本的には狩猟採集民であり、異論もあるがおそらくはいくつかの熱帯地域では初期段階から園芸をおこなっていた。[中略] エクアドル南部やペルー北部のいくつかの地域では例外的にきわめて早期にみつかっている…

先史:ニューギニア高地における農耕の起源について

『農耕起源の人類史』*1には農耕の起源地として西アジア、中国のほかにアフリカと南北アメリカ大陸とニューギニア高地を挙げている。 この記事ではニューギニア高地について書く。ニューギニア高地という言葉自体聞きなれていないので、まず場所の説明から入…

先史:中国における農耕の起源について

中国の初期農耕は黄河流域(華北)がアワ・キビ、長江流域(華中)はイネ(コメ)とされる。 中国本土(シナ)における農耕の起源または初期農耕の証拠はきわめて少なく、複数の仮説が並んでいる。 イネの栽培の起源について 珠江流域起源説 長江中流域起源…

先史:文化の衰退~PPNB後期と土器新石器時代

PPNB期に「新石器革命」、すなわち農業を基本とする生活様式が確立した。この人類の(狩猟採集から食料生産への)生活様式の転換は生活の安定をもたらし、人口は急激に増え、文化も育った。 しかし数百年に及ぶ繁栄した文化を支え続けてきた森林がついに…

先史:農業の誕生(新石器革命)と西アジアの新石器時代初期

寒冷なヤンガードリアス期が終わると温暖期が到来する。この画期は地質年代(地質時代)における更新世から完新世への移行期だ(ヤンガードリアス期は更新世の一部。ヤンガードリアス期や地質年代については当ブログ記事「最終氷期/ヤンガードリアス期/完…

先史:ナトゥーフ文化後期(ヤンガードリアス期)

ヤンガードリアス期とナトゥーフ文化後期 ヤンガードリアス期とは亜氷期(亜氷期については「氷河期/氷期/間氷期/氷河時代」参照)のこと。寒冷な時代。地球規模の現象だが主に北半球に大きな影響を与えた。 出典:ヴォルフガング・ベーリンガー/気候の…

先史:ナトゥーフ文化~「定住革命」

先史の最大のイベントは農耕の誕生(農業革命)なので、その手前にある「定住の始まり」というイベントにはスルーされがちだ。近年の発掘と研究の結果、定住型の狩猟採集民の生活が分かるようになってきた。 「定住→農耕の誕生」 定住しなかった人類 定住の…

先史:定住型文化の誕生~ナトゥーフ文化

ナトゥーフ文化の期間は、「Natufian culture<wikipedia英語版」によれば、前12500-9500年だが、後期の千数百年間はヤンガードリアス期という亜氷期と重なるため、全く違う文化だと思う。この記事では前期の話のみを書く。 気候 ナトゥーフ文化の誕生の原因…

新石器時代について

新石器時代の一番簡単な説明は「農耕・牧畜の始まりをもって新石器時代とする」というものだ。しかし縄文時代のように農耕・牧畜が始まっていないのに新石器時代とされているものもある(そうしない学者もいる)。 新石器時代はそれより前の時代より複雑なの…

先史:2万年前~(ケバラ文化/マドレーヌ文化)

2万年前は最終氷期の最中だが、ホモ・サピエンスはその寒さを克服しながら文化を創出した。 2万年前 オハロII遺跡 ケバラ文化(ケバラン kebaran)とその後 ケバラ文化 その後 マドレーヌ文化 2万年前 出典:ヴォルフガング・ベーリンガー/気候の文化史 …

先史:ネアンデルタール人の文化からホモ・サピエンスの文化へ

少し前にホモ・サピエンスの出アフリカの記事を書いた。「出アフリカ」の前後の西アジアとヨーロッパはネアンデルタール人が「支配」していた。彼らの文化はムスティエ文化(ムステリアン、Mousterian)と呼ばれ、中期旧石器時代に入る。 ホモ・サピエンスは…

先史:ホモ・サピエンスの大拡散:アメリカ大陸編

新大陸、南北アメリカ大陸への進出は最終氷期に地続きになった「ベーリング陸橋(地峡)」を渡って達成したというのが通説だったが、沿岸を通って移住したという説もある。併せて紹介する。 出典:ジャレド・ダイアモンド/銃・病原菌・鉄 1万3000年に…

先史:ホモ・サピエンスの大拡散:ヨーロッパ編

驚いたことに、ホモ・サピエンスのヨーロッパ進出はオーストラリア進出よりも後になる。ホモ・サピエンスは移住候補地に、近い寒冷な場所より遠くても温暖な場所を好んだようだ。 「45000年前」という数字 ヨーロッパに進出したホモ・サピエンスはクロマニョ…

先史:ホモ・サピエンスの大拡散:オーストラリア・日本編

Homo sapiens migration map, based upon DNA markers 出典:Prehistoric Asia<wikipedia 上の図はどの程度有効なのかよく分からないがとりあえず載せておく。 オーストラリア編 これまでオーストラリア大陸に人類が定住したのは47,000年から50,000年前とさ…

先史:ホモ・サピエンスの「親戚」、絶滅する -- ネアンデルタール人とホモサピエンスの運命を分けたもの

現在、人類と言えば我々ホモ・サピエンスの種しかいない。しかし数万年前までは人類は同時代に数種類 存在した。 ネアンデルタール人 ネアンデルタール人の絶滅 ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの運命を分けたもの おまけ1:フローレス人 おまけ2:…

先史:ホモ・サピエンス:出アフリカ/文化の"爆発"

前回の「現代的行動」に関連して書いていこう。 ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか作者: NHKスペシャル取材班出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2012/01/20メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 62回この商品を含むブロ…

先史:ホモ・サピエンスの「心の進化」/現代的行動

「心の進化」で扱う問題はおそらく進化心理学の分野になるようだ。 ここではNHKスペシャル取材班『ヒューマン~なぜヒトは人間になれたのか~』の第1章「協力する人・アフリカからの旅立ち~分かち合う心の進化~」から抜き出してみる。 以下に示すよう…

先史:ホモ・サピエンスの誕生

エジプト国内の新石器文化は、最初にナイル川西方のオアシスおよび低地において開花し、後にナイル川流域地方に伝播していったことだけは動かしがたい事実である。現在までのところ、ナイル川流域の終末期旧石器文化の遺跡で、ナブタを除くと新石器分化段階…

旧石器時代/中石器時代/Epipaleolithic

先史時代は石器時代に入る。この記事では旧石器時代と中石器時代とEpipaleolithicについて書く。Epipaleolithicについては後で説明する。 近年において先史時代の研究や測定技術の発達のおかげで、各時代の年代(期間)が見直されている。以下の記事は古い参…

最終氷期/ヤンガードリアス期/完新世

現在から見て最後の氷河期が終わると人類は農業をするようになった、と言われる。 農業の始まりについては別の記事で書くとして、この記事では最後の氷河期(最終氷期)の終末の前後について書く。 この記事では数字に多少のズレがあるが、すべて「およその…

地質年代(地質時代)

カンブリア紀とかジュラ紀とか白亜紀などという言葉を耳にしたことがあるだろう。これは地球の歴史の時代区分。 「先史」を知るためには必要な知識。ただし地質時代の全部を知る必要はない。 「先史」については、記事「先史シリーズを書く」で書いた。 地質…

氷河期/氷期/間氷期/氷河時代

氷河期/氷期/間氷期などの用語は歴史上の気候変動を理解するために必要になるので、これらの言葉を理解するために記事にしておく。 「氷河期」という言葉と氷期/間氷期 氷河時代 もう一つ小さい区分「亜氷期/亜間氷期」 現在の区分 「氷河期」という言葉…

先史シリーズを書く

これから先史シリーズを書く。「先史」カテゴリーに保存する。 「先史」の意味 このブログでの「先史」カテゴリー 変わる「先史の歴史」 「先史」の意味 先史時代 先史時代は、「歴史時代(有史時代)」以前の歴史区分に当たり、文字を使用する前の人類の歴…