歴史の世界

「先史/ホモ・サピエンス 」カテゴリーの主要な参考図書およびウェブサイト

今回は疲れた。

まず複数ある参考図書が言っている年代が違う。主張が違うことも多い。

なんとかつじつまを合わせるなり両論併記なりして切り抜けようとすると、ナショナルジオグラフィックやネイチャーの記事が新しい説を発表しているというような感じだ。

あたらしい説のほうが信頼できるかといえばそうでもない。今現在でも論争中の案件なんてたくさんあるからだ。このブログでは、結局独断と偏見で「説」の選択をしたわけだが、新しめのものを採用したか両論併記したかのどちらかにした。

以下に主要な参考図書を書いていく。

NHKスペシャル取材班/Human~なぜヒトは人間になれたのか~/角川書店/2012

ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか

ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか

テレビのドキュメンタリー番組を書籍化した本なので避けようとしていたのだけれど、読んでみるとかなり惹き込まれた本だった。

有名な学者、その筋の第一人者、発掘現場の代表者などにちゃんと会いに行ってインタビューをしているし、アフリカの狩猟採集民であるサン人を取材するためにカラハリ砂漠に行くなど膨大なコストがかかっている。縮小しているテレビ業界においてもNHKの財力は健在だった。

一章ごとのストーリーをすべて信じることは危険だと思うが、その過程で出てくる多くの学者の主張は知る価値のあるものが多いのではないか。2010年以降に出版された先史関連の本は少ないので、新しい知識を得るためにもこの本を読むことは有益だと思う。

先史というと、石器やら土器やら骨やら墓やら遺跡やらの形がどうのこうのというつまらない話と訳が分からない用語が並べてあるだけの考古学の本を思い浮かべるのだが、この本は元がテレビ番組だけあってそれらのようなものを極力つかわずに構成されていた。先史に関してほとんど全く知識が無い私にとって、これはとても助かった。

ただしある程度の知識を持っている人には「NHK取材班」の見解に違和感または不満を持つだろう。

パット・シップマン/ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた/原書房/2015(原著も2015年に出版)

ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた

ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた

この本は原著の出版が2015年で、私が読んだ書籍の中で一番新しいものだ。

正直言って「イヌがネアンデルタール人を絶滅させた」ことはどうでもよく(監訳者の河合信和氏ですらこれについて現段階では支持していない)、新しい知識・情報を得るために読んだようなものだ。そしてこの本はその要望に良く応えてくれた。この本を読まなければ、遺物資料の年代測定方法が近年(2014年?)においてより厳密になってこれからの先史の論争に大きく影響を与えそうなことを知らないままだった。

イヌの件に関しては、著者も認めているように確信できるような資料は無いので、今後 著者の主張を裏付ける資料が発掘されるかどうか というところだ。逆に主張を否定する資料が発掘されるかもしれないが。

スティーブン・ミズン氏/氷河期以後(上)(下)/青土社/2015(原著は2003年に出版)

氷河期以後 (上) -紀元前二万年からはじまる人類史-

氷河期以後 (上) -紀元前二万年からはじまる人類史-

氷河期以後 (下) ?紀元前二万年からはじまる人類史?

氷河期以後 (下) ?紀元前二万年からはじまる人類史?

この本も石器や骨の話の比率が少なくて読みやすい本だった。発掘・研究を元にして古代の情景を描写する手法を採っている。このようなやり方に反対する考古学者もいるようだが、私は素人の理解の助けになると思う。石器や骨角器をどのように使ったのかとか、肉や穀物をどのように調理したのかとか、考古学者はもっと丁寧に説明してほしい。時代による形の違いも大切だとは思うが。

大津忠彦・常木晃・西秋良宏/西アジアの考古学/同成社/1997

西アジアの考古学 (世界の考古学)

西アジアの考古学 (世界の考古学)

この本は、上で書いたような考古学の本だ。つまり「石器やら土器やら骨やら墓やら遺跡やら」をつらつらと書いていく本だ。『氷河期以後』を読まなかったらこの本を理解できなかっただろう。理解する以前に途中で挫折していた。

とりあえず1997年当時の研究成果(?)が実直に書かれているので、ちゃんと読めば有益な本だ。ただし古い本なのでこの本が今、どこまで通用するのかは分からない。私は年代についてはこの本の示したものを利用するのを避けた。

ブライアン・フェイガン/古代文明と気候大変動/河出書房新社/2005(原著は2004年出版)

題名の通り、気候の面から歴史を読み解いている本だ。ただし考古学者である著者は石器や遺跡のこともしっかりと解説している。

気候変動のメカニズムについて紙数を割いて説明している。丁寧で入門者向けのものだ。これより難しいメカニズムの話を理解するためには何を読めばいいのか分からない。「ハインリッヒ・イベント」とか「ボンド・サイクル」とか。・・・メカニズムの話はもうやめよう。

『氷河期以後』ほどではないが、情景を描写する紙数が多くて読みやすい。歴史時代についても書かれているので、また参考図書として利用すると思う。

古代文明と気候大変動―人類の運命を変えた二万年史 (河出文庫)

古代文明と気候大変動―人類の運命を変えた二万年史 (河出文庫)


↑これは文庫化したもの。

ヴォルフガング・ベーリンガー/気候の文化史 ~氷期から地球温暖化まで~/丸善プラネット/2014(原著は2010年にドイツで出版)

気候の文化史―氷期から地球温暖化まで

気候の文化史―氷期から地球温暖化まで

感想は上の『古代文明と気候大変動』とほぼ同じ。

この本は、先史の部分が少ないので先史シリーズではあまり利用できなかったが、歴史時代の部分は大いに利用しようと思う。

参考にしたブログ『雑記帳

雑記ブログだが、先史の最新の論文を紹介してくれる貴重なブログ。私とは違い先史の知識が半端ないので論文の評価も参考にさせてもらった。このブログの「古人類学」カテゴリーを全部読んだら、私は先史のページの大半をリライトしなければならなくなるだろう。

ナショナルジオグラフィック日本版サイト

数年前の記事まで残しておいてくれるありがたいサイト。ネイチャーの論文の解説も載っていることもある。

論文掲載サイト 『Nature』 『Proceedings of the National Academy of Sciences(米国科学アカデミー紀要)』

検索してよく引っかかるので参考にさせてもらった。しかしabstract以外はほとんど読んでいない。読解力・英語力その他知識不足のため。