「諸子百家」シリーズはこれで終わり。
この記事では主な参考図書を書き留めておく。
諸子百家全般
浅野裕一/雑学図解 諸子百家/ナツメ社/2007
- 作者:浅野 裕一
- 出版社/メーカー: ナツメ社
- 発売日: 2007/04/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
諸子百家のアンチョコ本。諸子百家の概説の本は幾つかあったが、これが一番わかりやすかった。図説のページ(見開き2ページの左側)が理解に役に立った。
これ本だけで「分かったつもり」になろうかと思ったが無理だった。最初のとっかかりにはなった。
Es Discovery/中国古典の解説
諸子百家の書物の現代語訳を読むことができる。
詳細な説明がいらないのであれば、このサイトだけで足りてしまうかもしれない。
儒家
儒家(儒教)については、書籍であれネットであれ多くの人が言及していて、私は多くの人の主張を少しずつ採用することができた(つまみ食いしてつなぎ合わせた、とも言う)。
以下はその中の代表的な参考図書。
浅野裕一/儒教 ルサンチマンの宗教/平凡社新書/1999
ただ今思えば浅野氏が語る孔子像は批判的すぎるような気がしている。 金谷 治『孔子』 (講談社学術文庫/1990) と対比して読んだほうが良かったかもしれない。
加地伸行/儒教とは何か/中公新書/1990
この本では孔子が儒教の基礎を作る以前の「儒(原儒)」を学んだ。
原儒は民間の葬式屋・シャーマンその類の人たちだった。
孔子は周王朝初期の礼の復活が秩序の復活につながると主張する一方で、実際の孔子の思想の根本は葬式を含む民間の慣習にあった。だから仁義よりも孝悌が前に出てくるわけだ。
wikipediaの孟子と荀子のページ
wikipediaは専門家に忌み嫌われ、いい加減な記事も多いが、孟子と荀子のページはよくまとまっていると思う。実のところ私は、孟子・荀子についてはこれだけ知っていればいいのではないかと思ってこれ以上の理解は無い。
ただ、吉田松陰の『講孟箚記』を理解しようとする時には本を読まなければならないだろう。
墨家
墨家についてはそれほど深い知識を知りたいとは思わなかったので、冒頭に紹介した浅野氏の『雑学図解 諸子百家』と湯浅邦弘『諸子百家』(中公新書/2009)を読んだのみ。
あとは、イメージとして漫画の『墨攻』が参考になったかもしれない。
孫子
デレク・ユアン/真説 孫子/中央公論新社/2016(原著は2014年出版)
この本は『孫子』を現代でも実用できる戦略書として取り扱っている。『孫子』の戦略思想は現代の戦略思想家にまで採用されているそうだ。
著者の解釈は、日本の古代中国思想の諸先生と大きく異なっている。『孫子』を土台とした『李衛公問対』 *1 の戦略思想も入っており、『孫子』をそのまま解釈しようというものではない。
『孫子』の現代語訳とその解説を読むだけでも面白いが、『孫子』の戦略を深く知るためにはこの本を読むべきなのかもしれない。
道家
『老子』に関しては上記のデレク氏の本も参照した。
デレク氏の説によれば、『老子』と『孫子』には深い関係がある。『孫子』を編纂した人たちは老子(老聃ろうたん。人物としての老子)の思想を採用して『孫子』に書き込み、『老子(=道徳経)』を編纂した人たちは『孫子』の思想を採用した。毛沢東は『老子』を戦略書として読んだそうだ。
池田知久/『老子』その思想を読み尽くす/講談社学術文庫/2017
「無為」や「無為自然」の言葉はこの本の解説を採用した。
この本を読んでいると、『老子』が自己啓発やらスローライフみたいなものとは縁遠いものに思える。本当はスローライフっぽいのは『荘子』の方で『老子』は為政者向けの書だ。
現代語訳が分かりやすい部分とわかりにくい部分があるので、他の本と比較して読んだほうがいいと思う。
守屋洋/世界最高の人生哲学 老子/SBクリエイティブ/2016 *2
こちらはスローライフっぽいコンセプトを持つ本のようだが、私はそういうところを気にせずに『老子』の解説の部分だけを読んだ。
とりあえず『老子』における重要なキーワードは(全てとは言えないが)盛り込まれているで十分役に立った。
『老子』関連の本はほとんどがスローライフっぽいものだった。そうしたほうが売れるのかもしれない。
池田知久/荘子 全現代語訳 上/講談社学術文庫/2017 *3
《『老子』その思想を読み尽くす》の『荘子』バージョンが欲しかったのだが無かったのでこの本に頼った。現代語訳も役に立ったが、池田氏の解説の方が役に立った。
西野広祥/無為自然の哲学 新釈「荘子」/PHP研究所/1992
池田氏の現代語訳が少し硬い感じがしたので、比較するためにこの本を採用。素人でも理解できるわかりやすい訳だった。
法家
法家の『韓非子』以外はほぼ全部浅野氏の本に頼った。
冨谷至/韓非子/中公新書/2003
近代西洋の法思想と比べて『韓非子』の法思想の特徴を書いている。
現代中国の法思想は現在でも『韓非子』の影響が少なからず残っていると思われるので、この比較は重要だと思う。たいして現代日本は近代西洋の法思想の影響下にある。
『韓非子』以前の思想史と以後の影響が書いてあったのはありがたかったが、思想史では肝心要の法家の先人たちの業績が書かれていなかったのは残念だ。
やっと終わった。
このシリーズは細々と1年間もやってしまった。
内容は十分から程遠いがどこまでやれば十分なのか全くわからないので、これで終わりとする。