歴史の世界

中国文明:「中国文明」を調べる際の注意点① 言論の自由がない現代中国

現代中国では古代史を調べることに熱心だ。熱心なのはいいが、その背景には中国共産党がいるというのが注意すべき点だ。

言論の自由がない現代中国

周知のように中国には言論の自由がない。しかも中国人にとって歴史とは政治そのものであり、権力者は歴史を好きなように書き換えることができるものだなのだ*1

また、中央政府のご意向に従わないと学者は追放されるという*2

現代史でもそうなのだから、資料の少ない古代史が都合の良いように書き換えられる可能性は高いと考えるのが、まともな考え方だと思う。

しかし、中国の中央政府が古代史に熱心なおかげで、新しい発見が多くあることも確かだ。それら全てを価値の無いものだと切り捨てるのもまた学問的ではない、と思う。

私たちのような素人は「新発見」が本物なのか曲解なのか捏造なのか分からないので、日本人学者のコメントなどを読んで判断するしかない。

中国以外の国でも注意は必要だが、以上のような理由で、中国においては尚いっそうの注意が必要になる。

夏商周断代工程と中華文明探源工程

夏商周年表プロジェクトは、 夏商周年表を作成したプロジェクトを指し、具体的な年代が判明していなかった中国古代の三代について、具体的な年代を確定させた中華人民共和国の第九次五カ年計画のプロジェクトの1つである。

中国語では、夏商周断代工程と呼称された(工程とはプロジェクトの意味)。

出典:夏商周年表プロジェクト - Wikipedia

古代中国学者・落合淳思氏によれば、このプロジェクトは「『史記』の絶対化」のためのものであり、「共産主義が説得力を失ったので、誇大な歴史を捏造してナショナリズムを宣揚」するものでしかないと斬り捨てている*3

さらに夏商周より前の歴史を探るプロジェクト「中華文明探源プロジェクト(工程)」というものもある。同プロジェクトの担当者の一人、中国社会科学院考古研究所の王巍所長は「良渚や陶寺等の都、大型宮殿の跡地、大規模な墓が発見されていることから、一部の文化と社会が発達した地域では、夏王朝より前から国家が形成されており、文明史が始まっていたことが分かる」と主張している*4

(追記:良渚遺跡や陶寺遺跡を調べた後、少なくとも「文明」の段階に入っていると言っていいかと思うようになった。これを「国家」と呼んでいいかどうかは分からない。)