先史時代は石器時代に入る。この記事では旧石器時代と中石器時代とEpipaleolithicについて書く。Epipaleolithicについては後で説明する。
近年において先史時代の研究や測定技術の発達のおかげで、各時代の年代(期間)が見直されている。以下の記事は古い参考文献を利用しているので参考程度に。
三時代区分法
三時代区分法は三時期法とも言われる考古学の時代区分法。英語ではthree age systemと書く。デンマーク人のクリスチャン・トムセンが19世紀に考案した。
三時代区分法(さんじだいくぶんほう)(three age system)は、人類の歴史の時代を石器時代、青銅器時代、鉄器時代に区分する考え方。
提唱
デンマークのコペンハーゲン王立博物館の館長クリスチャン・トムセン(Christian Thomsen,1788年~1865年)は、博物館の収蔵品を、利器、特に刃物の材質の変化を基準にして分類し、石・銅・鉄の三つに分類して展示することを考えついた。つまり、人類は石以外に金属を知らない石器時代、鉄がまだ使われていない青銅器時代(青銅は銅、スズの合金)、鉄器時代という三つの時代を経たことを区分して展示したことに始まる。トムセンは、この考え方を推し進め、1836年に、『北方古代文化入門』を著して、三時代区分法を提唱した。[中略]三時代区分法の限界
三時代区分法は、当初はヨーロッパという一地域の考古学的区分として考えられていたものが、次第に世界に共通する区分とみなされるようになった。しかし、三時代区分が適さない地域も見られるようになり、三時代区分自体の問題点も明らかになっていった。たとえば、新大陸が金属器を知るのは旧大陸より遅い時期なのに鉄器までに至らなかった点、東アジアの日本では、金石併用時代は石器、青銅器、鉄器の三者が併用され、青飼器時代を飛び越えて鉄器時代に移行した点など、三時代区分法では区分できない地域があることが分かってきた。出典:三時代区分法<wikipedia
トムセン以降にいろいろなアイデアが加えられて今に至る。
石器時代
石器時代は「Stone Age<wikipedia(英語版)」によれば340年前~1万年前。
エチオピアのアワシュ渓谷(Lower Awash Valley)で石器を使用した「痕」が発見されたという*1 *2。これが340万年前とされた。
最初の石器の実物は推定330年前のもので、ケニアのトゥルカナ湖西岸の干上がった河床で発見された。発見された場所は「ロメクウィ(Lomekwi)3」と名付けられた。*3 *4。この遺跡の近くでケニアントロプス・プラティオプス(猿人)の骨が発見されており、彼らが石器を使用していたのではないかと議論されているようだ。
ちなみに現代の人類(現生人類=ホモ・サピエンス)は約20万年前に誕生した。石器時代の到来よりずいぶん後に登場したことになる。現生人類は先祖の人類から石器の使用方法を受け継いだということだ。
石器時代もまた三つに時代区分され旧石器時代、中石器時代、新石器時代に区分される。
旧石器時代
旧石器時代は打製石器を使用していた。外部サイトの打製石器<世界史の窓では、イラスト入りで複数の打製石器が解説されているのでそちらを参照。ある程度の時代の変遷も分かる。
「旧石器時代<wikipedia」によるとこの時代も三分割されて以下のようになる。
+ 約260万年前 - 約30万年前
+ ハンドアックスがひろく用いられた時代。この時代の人類はホモ・ハビリスおよびホモ・エレクトスが主流であった。
中期旧石器時代
+ 約30万年前 - 約3万年前
+ 剥片石器が出現した時代。
+ ネアンデルタール人が広がった。極東アジアの中期石器文化の特徴から、ヨーロッパから来たネアンデルタール人に依ったものではなく、アジアの原人から進化した古代型新人によって形成された可能性が大きいとされる。
後期旧石器時代
+ 約3万年前 - 約1万年前
+ 石器が急速に高度化、多様化した時代。このような技術革新の原動力を言語に求める説もある。クロマニヨン人(ホモ・サピエンス)が主流となり、他の化石人類は急速に姿を消した。
現生人類(ホモ・サピエンス)の誕生は20万年前だから中期旧石器時代に出現したことになる。
中石器時代
この時代は旧石器時代と新石器時代の間の時代という意味合いで使われる。
中石器時代
石器時代を3区分した際に,より古い旧石器時代と,より新しい新石器時代の中間に設定された時代名。1865年にJ.ラボックが,旧石器時代と新石器時代の2時期に石器時代を細分したのち,翌66年にウェストロップH.Westroppが小型の打製石器の時代として,中石器時代を加えたのが最初である。その後,モルガンJ.de Morganによって,明確な時代概念が与えられた。典型的な形でみられるのはヨーロッパとオリエント地域であるが,世界的な石器の小型化や水産資源の利用の拡大を一つの流れとみなし,必ずしも同一の内容をもつわけではないが,中石器時代という区分がその他の地域でも用いられている。
日本大百科全書(ニッポニカ)*5によれば、この言葉が世に出た当初から強い反対意見があり、現在まで「中石器時代」という概念は学界全般には普及していない。「現在、中石器時代という語が使われているのは、主としてイギリス、北ヨーロッパ諸国や旧ソ連である」。ではどういう用語を使っているかは後述。
中石器時代の概観
いま反対論者の意見をかたわらに置いて中石器時代の概要を述べると、第一に強調されるのは、それが主として解氷期に該当すること、ならびに当時の人々の生活が獲得経済(狩猟、漁労、植物採集)に依存していたことである。[中略][角田文衛]
精器文化
石器の型式のうえからみると、現在知られている多数の中石器諸文化は、〔1〕精器文化(または広義の細石器文化)と、〔2〕粗器文化とに大別される。主流をなした精器文化は、細石器microlithをもって特色としている。これは単に細小な石器をいうのではなく、一定の形態を予想して石核から剥取(はくしゅ)された小さい石刃(せきじん)や剥片をそのまま、あるいは側縁だけにわずかに修正を施した石器を意味している。もっとも特徴的な細石器は、細彫器microburinや梯形(ていけい)の石刃などである。精器文化の特色は、(1)細彫器を含めてさまざまな細石器が使用されたこと、(2)狩猟は、個人狩猟が主で、弓矢や投げ槍(やり)がおもな猟具であったこと、(3)漁労は、銛(もり)で行われたが、やがて釣り針や漁網が発明されたこと、(4)貝類の捕食も盛んであって、ときとしては住居の近くに貝塚を残したこと、(5)植物の球根や野生の穀草からとった穀物を食糧としたこと、(6)狩猟の効果をあげるため、イヌが家畜化されたこと、(7)遺跡によって量に差異はあるが、骨角器の使用も盛んであり、骨角や貝殻を用いたさまざまな装身具もつくられたことなどである。細石器は柄に着装して、あるいは棒の側縁に列をなしてはめ込んで使用された。[角田文衛]
粗器文化
粗器文化のほうは、旧石器文化的な伝統の強い停滞的な文化であって、ヨーロッパの西部や北東部に存在した。フランスのカンピニー文化はその代表的な例である。粗製の石鍬(いしくわ)や鶴嘴斧(つるはしおの)が特徴であるが、これらは植物の採集や栽培に用いられた。[以下略][角田文衛]
細石器について別の引用。
ミクロリスmicrolithともよばれる小さな石器。幅1センチメートル、長さ5センチメートル以下ぐらいのきわめて小さな石器であり、単独で使用するものではなく、木や骨の柄(え)にはめ込んで使われた。小さいためきわめて軽く、また一定の石材からもっとも長い刃を得ることができる。先史時代にあっては良質の石材は限られており、そのためもっとも能率のよい方向へと石器製作の技術は発展していった。その方向の頂点にあるのが細石器である。後期旧石器時代末期から中石器時代にかけてもっとも盛行し、新旧両大陸ともにみられる。このように世界的にみられるので、その形態、あり方はさまざまである。世界的にみた場合には、小さな石刃(せきじん)の形をあまり変えずに使っている例が多いが、ヨーロッパ、西アジア、北アフリカといった環地中海地域には、長方形、台形、三角形、半円形といった幾何学形をしたものもある。これらは幾何学形細石器とよばれる。[藤本 強]
石材は地域によって異なるようで、黒曜石、砂岩、チャート(フリント)、流紋岩、ガラス質安山岩、硬質頁岩などがある。*6
Epipaleolithicについて
中石器時代に対応する英語はMesolithicだが、中東の考古学者たちはこの言葉を使用せずに、Epipaleolithicを使っているらしい。 Epipaleolithicに対応する日本語は
などである。先史関連の書籍では「中石器時代」を発見するのは稀で多くがEpipaleolithicの訳語が使用されている。
Epipaleolithicについては中石器時代の中身と同じだと思う。
ネアンデルタール人(旧人)とホモ・サピエンス(新人)の交代劇
ネアンデルタール人が滅びてホモ・サピエンスが頂点捕食者(食物連鎖の頂点にあるもの)になった時期は中石器時代あるいはEpipaleolithicにあたる。これについては別の記事で書く。
冒頭で、時代区分は「近年において先史時代の研究や測定技術の発達のおかげで、各時代の年代(期間)が見直されている」と書いたが、学者によって様々な主張があるため、「いつ何年で区切るか」について差異が生じている。私が参考にした書籍の著者たちは最新の研究結果を反映した時代区分を利用せずに普及しているものを便宜的に使用しているが、その便宜的に使用した時代区分も統一されていない状況だ。だから数字についてはあまり正確さを追求しないことだ。