- 作者:浅野 裕一
- 出版社/メーカー: ナツメ社
- 発売日: 2007/04/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
開戦には慎重を期すべし
浅野裕一氏が『孫子』の特色を簡単に書いていたが、始めに書いていたのが以下の文章。
孫子兵学の特色はさまざまあるが、第一は、戦争が経済に及ぼす悪影響を強調する点である。孫子は、戦争がいかに大量の物資を消耗し、国家経済を疲弊させるかを力説して止まない。孫子は、戦争なる手段が宿す否定的側面を直視するよう求めるのである。
このあと幾つかの特色を書いた後、また「第一」のことを強調している。
以上の諸点が、孫子の兵学の大まかな特色なのだが、これらの特色のすべてが、戦争がいかに代償の大きい手段であるか、そのマイナス面に対する深刻な認識に帰着する点に注目すべきであろう。この点を深く認識すれば、戦争に対する慎重な姿勢が求められるのは当然である。『孫子』が、開戦の決断は慎重にせよ、自国内では戦うな、攻城戦をするな、必要のない戦闘をするな、敵を騙して楽勝せよ、情報戦に力を注げ、長期持久戦を避けよ、などと主張するのも、すべてこのマイナス面を減らそうとする意図から出ている。
出典:浅野氏/p210
- 浅野氏の挙げる「第一」以外の特色は、上の引用にある「開戦の決断は慎重にせよ、自国内では戦うな、攻城戦をするな、必要のない戦闘をするな、敵を騙して楽勝せよ、情報戦に力を注げ、長期持久戦を避けよ」。
226・227ページでは「君主と将軍の責務――死者は再び生き返らない」という節を設けて、君主に感情に任せた軽はずみな開戦をしないように求め、将軍にも同様に戦闘の開始に慎重になることを求めている。
このように、口を酸っぱくして言うように戦争の開始、戦闘の開始に慎重さを求めている。
君主は戦略的成功を常に心がけるべき
戦果と終戦
戦術的成功と戦略的成功は異なるものである。戦術的成功
・ 敵地・敵城を攻略する
・ 領地を獲得する戦略的成功
・ 政治上の目的を達成する
・ 経済的損失を上回る利益を得る君主は戦略的成功を常に心がけるべき
戦術的成功(戦果)を、戦略的成功へいかに繋げるかを考え、終戦のタイミングを見誤らないようにする。出典:浅野氏/p227(図解欄より)
感情的な行動やその場の勢いでの行動をせず、開戦前から決められた戦略的目的と作戦に忠実に行動することを求めている。