歴史の世界

進化:「種」「属」について/生物の分類について

前回の記事で種(しゅ)・属について少し書いたが、この記事では少し詳しく書く。

種(しゅ)・属(前回のおさらい)

前回の記事に書いたものを再び書く貼り付ける。

種(しゅ)

生物分類学上の基本単位。
共通する形態的特徴をもち、他の個体群との形態の不連続性、交配および生殖質の合体の不能などによって区別できる個体群。

出典:[種(しゅ)<デジタル大辞泉(小学館)<goo辞](https://dictionary.goo.ne.jp/jn/102993/meaning/m0u/)書(抜粋)

人間(ホモ・サピエンス)、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンなどがそれぞれ別々の「種」である。

人間とチンパンジーは一見しただけで違う動物だと分かる。これが「共通する形態的特徴をもち、他の個体群との形態の不連続性」による区別(分類)。

そして仮に人間とチンパンジーが交尾しても子供は産まれない。これが「交配および生殖質の合体の不能」による区別。

ほかにも分類の方法は数十もあるそうだが割愛。

「属」は「種」の一つ上の分類単位。「基本的な体の構造や性質がほとんど共通であり、些細な部分でのみ区別できる種のまとまりを真っ先に考える。これが属である。」(属<wikipedia

それ以上の分類の単位は「生物の分類<wikipedia」などを参照。

種の分類の仕方は数十もある。何故そんなにあるのかと言えば、それぞれの分け方に問題点があるからだ。

以下に代表的なものの中から2つだけ挙げておく(ほかの有力なものは種 (分類学)#種の定義<wikipedia参照)。

形態的種

上で書いたような人間とチンパンジーの区別はこの形態的種による分類である。つまり「生物の形態によって種を区別する」方法。

問題点としては、「形態的な差を種の同定の基準に用いることは分類が主観的になりすぎる問題がある」「生物個体のどのような特徴を判断の基準とするかがあいまいである。また性的二型のような多型を別種と誤解する可能性がある」。(種(分類学)#形態的種の概念<wikipedia

生物学的種

同地域に分布する生物集団が自然条件下で交配し、子孫を残すならば、それは同一の種とみなす。しかし、同地域に分布しても、遺伝子の交流がなされず、子孫を残さない(=生殖的隔離が完了している)ならば、異なる種とされる。たとえば、ヒョウとライオンを強制的に交雑することによってレオポンと呼ばれる雑種が生まれるが、レオポンはほとんど繁殖力を持たない。よって、ヒョウとライオンは同一の種ではない。ラバ(ロバとウマ)についても同様である。

それぞれの生物集団が異なる地域に属していたり、違う時代に属している場合、生殖的隔離の検証が出来ないため、その生物の形態の比較、集団レベルでの交配および受精の可能性の検証、雑種の妊性(稔性)の確認を通じて、同一の種であるかが検討される。

ただし雑種が全て生殖能力に劣るわけではない。特に、植物では従来の見解では異種であった個体群を交配させて園芸品種を作ることは頻繁に行われている。このようなときは、この定義を厳密に当てはめた場合種ではなく亜種として分類しなおすことになる。野生下での交配可能性のみを問題にする立場からしても、イヌ属やカモ属、キジ属などの場合は亜種として扱うことになる。

生物学的種を普遍的なものとして扱いたい場合に最も根本的な問題となるのは交配せず無性生殖のみを行う生物である。この定義を適用すれば全ての個体の系統が異なる種に分類されることになり、現実的ではない。はるか昔に絶滅した種を扱う古生物学にも適用できない。また実際的な問題として、無数の生物の組み合わせ全てで実際に交配が行われるかどうかを確認するのは不可能である。

さらに輪状種の存在は生物学的種に困難をもたらす。輪状種とは近接して生息する個体群AとB、BとCが交配可能であるが、離れて生息する個体群AとCの間に生殖的隔離が存在する亜種の混合個体群のことである。この場合AとCは生物学的に別種であるが、AとB、BとCは定義上、同種である。全ての種は時間的には連続した存在だが、輪状種はそれを空間的に見ていると言うことができる。

出典:種(分類学)#生物学的種の概念<wikipedia

この分類方法の問題点を整理すると、

  1. それぞれの生物集団が異なる地域に属していたり、違う時代に属している場合、生殖的隔離の検証が出来ない
  2. 生殖能力のある雑種について説明できない。
  3. はるか昔に絶滅した種を扱う古生物学にも適用できない。つまり化石には適用できない。
  4. 無性生殖生物、自家受粉をする植物、兄弟姉妹どうしで交配する動物(ダニなど)には適用できない。
  5. 輪状種の問題。

このように多くの問題が挙げられる。

ただし、「自然界では、異なる種間での交雑が普通はうまく回避されている」から、上の4番目の問題を除けば、生物学的種の概念の核心である生殖的隔離は保たれる。

生物を分類する時のカテゴリ(ディレクトリ?)の一つ。

生物はそれぞれに一定の特徴を持ち、それ以外のものとはある程度以上明確に区別できる種という単位からなっている(というのが一応の一般的判断である。異論はあるが)。それらを比較し、体系的にまとめようとするのが分類学であるが、このとき、基本的な体の構造や性質がほとんど共通であり、些細な部分でのみ区別できる種のまとまりを真っ先に考える。これが属である。

この場合、どのような形質が基本的であり、どのような形質が些細であるかはその分類群により異なっており、より自然分類に近づくようにそれらを選ぶのが分類学者の判断である。たとえば種子植物であれば、一般的には花の構造や雌しべの内部の構造、維管束の配置などはより基本的なものであり、花の色、葉の形などはより些末な形質であると見なされている。つまり植物全体の姿や花の構造がほぼ同じで、花の大きさや色と葉の形が違っていて、それらに中間型がなければそれらを同属の別種と考える。

もっとも、この部分に恣意性が入るのを問題視し、できるだけ多くの形質を抽出し機械的な操作に任せる分岐分類学や、外部形態よりもより直截な系統関係が明らかになると考えられる分子遺伝学的方法も取り入れられつつある。しかしいずれにせよ形態的特徴は重要なものと見なされる場合が多く、新たな方法でそれまでの判断とは異なった結果が出た場合には、それらの種の形態について洗い直されるのが普通である。

出典:属 (分類学)<wikipedia(文字修飾は引用者)

生物の分類

属の上にも「科」というカテゴリーがあり、その上にも複数のカテゴリーがある。このように生物を体系的に分類する学問を分類学または生物分類学(taxonomy)という。

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出典:生物の分類<wikipedia

門・綱・目・科・属・種などのような階層を分類学では階級または分類階級という。

階級と似た言葉でタクソン(分類群)という用語がある。《たとえば「棘皮動物門」「哺乳綱」「甲虫目」「キュウリ属」「ミヤコヒキガエル亜種」などがタクソンの例》だが、《タクソンが認められたとして、それをどの階級に位置づけるかは本質的には任意である。生物の階級には門・綱・目・科・属などがあるが、あるタクソンをどこに置くかに明確な基準はなく、ほとんどの場合に経験的・伝統的に決められる。》(タクソン<wikipedia

学名

学名(がくめい、ラテン語: binomen)は生物学(かつては博物学)的な手続きにもとづき、世界共通で生物の種および分類に付けられる名称。英語では二名法による名称という意味で binomial name、あるいは科学的な名称という意味で scientific name という。命名には一定の規則があり、ラテン語として表記される。この規則は、それぞれの生物分野の命名規約により取り決められている。動物には「国際動物命名規約」があり、藻類・菌類と植物には「国際藻類・菌類・植物命名規約」が、細菌には「国際細菌命名規約」がある。日本語独自の和名(標準和名)などと異なり、全世界で通用し、属以下の名を重複使用しない規約により、一つの種に対し有効な学名は一つだけである。ただし、過去に誤って複数回記載されていたり、記載後の分類の変更などによって、複数の学名が存在する場合、どの学名を有効とみなすかは研究者によって見解が異なる場合も多い。

種の学名、すなわち種名は属名+種小名(細菌では属名+種形容語)で構成される。この表し方を二名法という。二名法は「分類学の父」と呼ばれるリンネ(Carl von Linné, ラテン語名 カロルス・リンナエウス Carolus Linnaeus, 1702 - 1778)によって体系化された。

属名と種小名

種名の初めの部分である属名とは、分類上の位置が近い種をまとめて取り扱う分類単位である属の名称で、同じ属に分類されている全ての種で共通の名前である。

第2の部分である種小名は、属名と結合させる事によりその種に固有のものとなる。例えば、タイリクオオカミ、コヨーテは同じイヌ属 Canis に分類されている別種なので、学名はそれぞれ Canis lupus、Canis latrans となる。なお、これ(たとえば lupus)を「種小名 specific name」というのは、属名と種小名を合わせた「種名 species name, name of a species」(たとえば Canis lupus)と区別するためである。[中略]

下位分類

生物分類の基本単位は「種」だが、さらに亜種・変種・品種と、細目に分類することがある。

亜種名等は、種小名と同様の形式(一般にイタリック体ですべて小文字)で表記し、属名+種小名の後に続けて書く。

  • 属名+種小名+「ssp.」または「subsp.」+亜種名(ssp, subsp: subspecies の略)
  • 属名+種小名+「var.」+変種名(var: variant の略)
  • 属名+種小名+「f.」+品種名(f: forma の略)

この表記を「3名法」とよぶ。ssp. 等の符号は属名や種小名の字体(一般にイタリック体)にしない。なお、亜種や変種の無かった種に新たにそれらが作られた場合、元になった種には、種小名の後ろに基本亜種(変種)を示す亜種名(変種名)としてもとの種小名が繰り返される。これは新亜種(変種)の記載によって自動的に生じるものである。

なお、動物の場合、上に示した ハイイロオオカミ Canis lupus lupus のように、subsp. 等の符号抜きで亜種小名を記すのが通例である。

出典:学名<wikipedia

ハイイロオオカミタイリクオオカミ)は通常Canis lupus と二名法で表記されるが、他の亜種と区別する必要がある場合は、上記の法則に従って、Canis lupus lupus と表記される。

同様に、ホモ・サピエンスホモ・サピエンス・イダルトゥと区別する必要がある場合、ホモ・サピエンス・サピエンスと書く。

おまけ:イヌとネコについて

イヌ

イヌはオオカミが家畜化された動物だとはよく知られている。

少し詳しく書くと一般的なオオカミであるタイリクオオカミハイイロオオカミ、Canis lupus)が「種」であり、これが家畜化されたのがイヌ(イエイヌ、Canis lupus familiaris)という「亜種」である。

亜種名 familiaris はやはりラテン語で、「家庭に属する」といった意味。(オオカミ<wikipedia、イヌ<wikipedia

ネコ

「ネコ(猫)は、狭義には食肉目ネコ科ネコ属に分類されるヨーロッパヤマネコが家畜化されたイエネコ(家猫、Felis silvestris catus)に対する通称である。」(ネコ<wikipedia

ヨーロッパヤマネコ(Felis silvestris)が「種」でイエネコ(Felis silvestris catus)が「亜種」。(ヨーロッパヤマネコ<wikipedia

「catus」は「cat」つまりネコの意味。「Felis」もネコの意味で、「silvestris」は「野生の」を表す。(ネコ<wikipedia



種・属と人類との関係は また別の機会に。