「進化」という意味あるいは定義をネットで調べてみたが、納得がいく「簡潔明快な説明」というものがなかった。
そこで素人の私が説明に挑戦することにした。
簡潔に書こうと思ったが、2000字を越えてしまった。
「進化」を知る前に知っておくべき用語
「進化」を知るためには生物学の幾つかの用語を知っておかなければならない。
説明する側からすれば、「進化」を説明する前に幾つかの生物学の用語を説明しなければならない。
この記事とは別に、以下の用語について書く。
種(しゅ)・属
種(しゅ)
生物分類学上の基本単位。
共通する形態的特徴をもち、他の個体群との形態の不連続性、交配および生殖質の合体の不能などによって区別できる個体群。出典:[種(しゅ)<デジタル大辞泉(小学館)<goo辞](https://dictionary.goo.ne.jp/jn/102993/meaning/m0u/)書(抜粋)
人間(ホモ・サピエンス)、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンなどがそれぞれ別々の「種」である。
人間とチンパンジーは一見しただけで違う動物だと分かる。これが「共通する形態的特徴をもち、他の個体群との形態の不連続性」による区別(分類)。
そして仮に人間とチンパンジーが交尾しても子供は産まれない。これが「交配および生殖質の合体の不能」による区別。
ほかにも分類の方法は数十もあるそうだが割愛。
「属」は「種」の一つ上の分類単位。「基本的な体の構造や性質がほとんど共通であり、些細な部分でのみ区別できる種のまとまりを真っ先に考える。これが属である。」(属<wikipedia)
それ以上の分類の単位は「生物の分類<wikipedia」などを参照。
突然変異
突然変異(とつぜんへんい)とは、生物やウイルスがもつ遺伝物質の質的・量的変化。および、その変化によって生じる状態。
出典:突然変異<wikipedia
生物が子孫を残す時に遺伝情報を複製するのだが、その時に「ミスコピー」してしまう場合がある。このミスコピーが突然変異の原因となる。
自然淘汰(=自然選択)
生物がもつ性質が次の3つの条件を満たすとき、生物集団の伝達的性質が累積的に変化する。
- 生物の個体には、同じ種に属していても、さまざまな変異が見られる。(変異)
- そのような変異の中には、親から子へ伝えられるものがある。(遺伝)
- 変異の中には、自身の生存確率や次世代に残せる子の数に差を与えるものがある。(選択)
上記のメカニズムのうち、3番目に関わるのが自然選択である。一般に生物の繁殖力が環境収容力(生存可能数の上限)を超えるため、同じ生物種内で生存競争が起き、生存と繁殖に有利な個体はその性質を多くの子孫に伝え、不利な性質を持った個体の子供は少なくなる。このように適応力に応じて「自然環境が篩い分けの役割を果たすこと」を自然選択という。
引用の冒頭が「進化」を意味する。
選択圧
自然選択(自然淘汰)を考える上で重要な用語を貼り付ける。
選択圧
自然環境は急激に変化することはまれであるため、特定の方向に選択を偏らせることがある。例えば砂漠では砂色の体が保護色となる、発汗が抑えられわずかな水分を有効利用する、あるいは夜行性となるなどが生存に有利に働く。このように実際に生存率に差をもたらす自然環境の力を選択圧と言う。生息する環境が異なれば、生物は異なる選択圧を受ける。生物は常に様々な選択圧に晒されており、また一つの性質に対して複数の選択圧が働くのが普通である。
このよう環境が変化して生物が変化を求められ、ある「種」の個体群が変化する現象を自然淘汰という。
進化
進化については上で一度触れたが、もう一つ引用しよう。
進化
生物が、周囲の条件やそれ自身の内部の発達によって、長い間にしだいに変化し、種や属の段階を超えて新しい生物を生じるなどすること。一般に体制は複雑化し機能は分化していく。
つまり選択圧の中である個体(または個体群の一部)が「自身の内部の発達」(突然変異)をすることによって適応し、種あるいは属を越えて別の種を作り出す現象を進化という。
進化と自然淘汰の関係
選択圧の中で、「種」の個体群が全体的に変化する現象*1を自然淘汰と言い、変化に適応して種を作り出す現象を進化と言う。
注意しなければならないこと:進化は進歩ではない
(突然)変異は無目的に発生するものだ(突然変異は癌の発生に関わるなどマイナス面のほうが多いらしい)。生物の努力によって獲得されるものではない(獲得形質の遺伝は否定されている)*2。
無目的に起こった様々な変異の中で偶然に環境の変化に適応した生物が自然淘汰の結果 生き残り、進化する。
ただし、「イチローは進化した」のような「進化」は生物学における進化とは違い、進歩の類語となる。
上の説明、つまり自然淘汰により起こる進化の他に、自然淘汰に無関係に起こる「中立進化」というものがあるのだが、ここでは触れない(中立進化説<wikipedia参照)。