エジプトのピラミッドは古王国時代に始まり、古王国時代に集中的に建造され、古王国時代にピークがあり、ピークの後 衰退する。だから古王国時代は「ピラミッドの時代」とも言われている。
古王国時代の人口は およそ120万人とされるが、その人数であれだけの建造物を幾つも建てるには相当のエネルギーを要する。同時代人はピラミッド建設のために、国家体制全部を再構成しなければならなかった。これには行政も宗教も神話も当然含まれる。
こうなると、ピラミッド自体の構造とか建築技術よりも、なぜピラミッド建造にそれほどのエネルギー(コスト)をかけなければならなかったのかを知ることのほうが はるかに重要だ。
これからピラミッドに関する記事を幾つか書こうと思っているが、この記事では行政・宗教・安全保障とピラミッドの関係を書いていく。
行政関連
第3王朝時代に後世まで継続する官僚組織の体裁が整い始めたことは、少ないながらも、当時の官僚たちの称号や銘文資料からうかがい知ることができる。初期王朝時代の間、王家の需要に応じて随時設けられてきたさまざまな部署と役職を、ピラミッドの建造開始にともなって、国家規模に再組織化することが必要になったのである。ピラミッド建造は、建材の調達や職人や労働者の組織化に始まり、それを経済的に支えるための全国からの徴税組織、関連物資や人員を管理するための組織、さらには王の葬祭を維持するための組織などなどの発達を余儀なくした。そして大型ピラミッドが築かれた第4王朝時代には、さらに大規模な官僚組織が必要になっていった。
私は「官僚・行政組織の発達のおかげで余裕ができたのでピラミッドをつくることができた」と思っていたが逆だった。
ピラミッドを作るためにあらゆる行政改革をしなければならなかった。そしてそれは成功した。
「行政」を「国家」と置き換えてもいいかもしれない。
宗教関連
あれだけ膨大なコストをかけて建造したら反乱が起こるのではないかと思ったら、建造に駆り出される庶民にもピラミッドを建造する動機があった。
それは宗教関連の話になる。
有名なエジプト神話もこの時代にできた。
古王国時代よりも前に各地に守護神がいて神話があった。これらの地方の神話をうまい具合に国家宗教の体系に入れて作り上げたのがペリオポリス創世神話に代表されるエジプト神話だ。
第5王朝最後の王ウナスから始まる複数の王と王妃のピラミッドの壁に刻まれた「ピラミッド・テキスト」*1の内容はヘリオポリスの神話に沿って書かれている*2。
神話とピラミッドは密接に関係しあい、この頃の来世観(宗教観)は臣民に浸透し、臣民にとってピラミッドの建造は、労役というだけでなく宗教上の行動でもあった。
このことについては別の記事で改めて書こう。
安全保障関連
他地域・他時代とエジプト古王国時代を比べて重要なのは、この時代には国外からの侵略が無かったことが挙げられるだろう。
古代エジプトも時代が下れば諸外国との紛争に巻き込まれる…というより参加するようになるが、古王国時代は軍事方面にほとんどリソースを割かずにすんだ。
このことは、王国の人々はピラミッド建造に膨大なコストをかけられた理由の一つになるだろう。
とりあえずここまで。
この記事で言いたかったことは「ピラミッド建設は国を挙げての宗教活動だった。そしてその活動費を捻出するために行政(国家)が発達した。つまりはピラミッド建設によって国家が発達した。ピラミッドの時代。」
うまくまとめることが出来なかった。
行政と宗教については改めて少し詳しく書こう。
特に宗教については、私自身を納得させるために書かなければならない。
*1:王の来世における再生と復活を保証するいくつもの呪文が並べられた呪文集 -- 高宮氏/p155