歴史の世界

春秋戦国時代/東周

法家(9)韓非子(『韓非子』の人間不信について)

『韓非子』の人間不信については《人主の患は、人を信ずるにあり。人を信ずれば則ち人に制せらる》(備内篇)の言葉を引用して説明を済ませることもできるが、この記事ではもう少しだけ深堀りして見ようと思う。 『韓非子』はどうして「人間不信」に至ったの…

法家(8)韓非子(『韓非子』の「徳」/「徳」の原義)

諸子百家のシリーズで「徳」に関する記事を何個か書いたが、今回やっと納得できた気がする。 『韓非子』の「徳」にからめて書いていこう。 諸家の「徳」 「徳」の原義 諸家の「徳」 現代の日本では「徳」は儒家が唱えた概念、つまり「仁愛にもとづく人倫道徳…

法家(7)韓非子(儒家との比較 -- 「矛盾」と「守株」)

「矛盾」と「守株」は『韓非子』由来の言葉。 この2つの言葉は儒家を批判する文章の中から生まれた。 この記事では2つの言葉をもって『韓非子』が儒家に対してどのような批判をしたのかを見ていく。そこに儒家と法家の違いが見えてくる。 「矛盾」 守株 「…

法家(6)韓非子(「勢」と「術」)

今回は「勢」と「術」について。 「勢」 術 法術思想の矛盾 「勢」 「勢」については別の記事の《慎到の節》 で書いたので、先に読んでほしい。 『韓非子』難勢篇は慎到の勢の概念に賛同する論説だ。 そして以下のように「勢」について書いている(『韓非子…

法家(5)韓非子(「法」)

今回は『韓非子』の「法」について。 「法」の目的 刑罰について 現代中国まで続く『韓非子』の「法」思想 法家の思想は法によって世の中を治めようという政治思想だ。そしてこの「法」とは成文法のことで、文書化して世に示して人々に従わせることを基本と…

法家(4)韓非子(『韓非子』とは?/著者と時代背景)

この記事より『韓非子』について書いていく。 今回は、時代背景の話がメイン。荀子と韓非の関係について。 『韓非子』とは? 著者・韓非の生涯 時代背景 荀子の影響について 『韓非子』とは? 『韓非子』は法家を代表する書。この書は戦国末期の韓非によって…

法家(3)韓非子の先人たち 後編

前回の続き。 申不害 慎到 申不害 申不害は戦国初期の人で、韓の釐侯(=昭侯)に15年間 仕えた。 紀元前375年に鄭を滅ぼしたものの、戦国時代の韓は七雄の中では最弱であり、常に西の秦からの侵攻に怯えていた。しかし申不害(? - 紀元前337年)を宰相に抜…

法家(2)韓非子の先人たち 前編

この記事では、韓非子より前の人物を紹介していく。 李悝(かい)(=李克) 商鞅 呉起 商鞅・呉起の最期 前回の引用の一つに「春秋時代の管仲が法家思想の祖」とあり、 「平凡社百科事典マイペディア/法家(ほうか)とは - コトバンク」 によれば、春秋時代…

法家(1)法家とは何か/時代背景/法家と儒家の対立点

この記事より何回かに亘って法家について書いていく。 この法家の思想は、他の諸子百家の思想と同様、現代中国まで影響を及ぼしている。 法家とは何か 時代背景 法家と儒家の対立点 法家とは何か 中国古代に興り,刑名法術を政治の手段として主張した学派。…

道家(28)荘子(徳/徳充符篇/明鏡止水)

今回は「徳」について。 私たち一般的な日本人が思い浮かべる「徳」とは異なる。 徳充符篇とは? 『荘子』の「徳」について 徳の充ちたる者とは? 明鏡止水 徳充符篇とは? 「徳」については、徳充符篇で語られている。「徳」の意味については後述、「充」は…

道家(27)荘子(養生)

今回は「養生」について。 「養生」とは何か? 『荘子』養生主篇 在宥篇から 『荘子』の養生論の中身 「養生」とは何か? まず、『荘子』や道家のことを一旦 脇において、一般的な「養生」の意味を確認する。 ① 健康に注意し、病気にかからず丈夫でいられる…

道家(26)荘子(無用の用)

*前回の末尾に「(次回は逍遥遊篇の中の「無用の用」に関する話について書く)」と書いたが、予定を変更して逍遥遊篇に限定しない「無用の用」全般について書く。 「無用の用」は『荘子』を代表する重要なキーワードだ。 前回話したように逍遥遊篇に無用の…

道家(25)荘子(逍遥遊篇 その2止 鵬の話)

前回からの続き。 今回は逍遥遊篇の冒頭の鵬(ほう・おおとり)の話。 大きな鳥、鵬 鵬から「遊」の話へ移行 真の「遊」に向かう段階的な説明 鵬の話で『荘子』は何が言いたかったのか? 鵬は何を指すか? 真の「遊」に向かう段階的な説明 真の「遊」とは「…

道家(24)荘子(逍遥遊篇 その1)

『荘子』全33篇は逍遥遊篇から始まる。 この逍遥遊篇は次篇の斉物論篇と合わせて『荘子』の真髄とのこと。 この記事では、逍遥遊篇を扱う。 ただし一つの記事に書ききれなかったので、何回かに分けて書く。 テキストは池田知久『荘子 全現代語訳 上』 *1 荘…

道家(23)荘子(斉物論篇 その3止)

前回からの続き。 さて、前回は『荘子』を代表するキーワードの万物斉同と道家を代表する「道」について書いた。 今回は斉物論篇の締めくくりとして「人間が主体的に生きる」ことについて書く。 「道」を体得するとどうなるか 道を体得するにはどうすべきか …

道家(22)荘子(斉物論篇 その2)

前回からの続き。 『荘子』の作者、荘周にとって最大の関心事は、……「我(わたし)」という人間の主体性に関する問題を解くことであった。 そして、《人間が主体性を持つためには、万物の支配者(真の主宰者、世界の主宰者)である「道」を体得することであ…

道家(21)荘子(斉物論篇 その1)

『荘子』全33篇は逍遥遊篇から始まり、その次に斉物論篇が来る。 逍遥遊篇と斉物論篇は荘子の思想の真髄とされる *1。 この記事では、斉物論篇を扱う。 ただし一つの記事に書ききれなかったので、何回かに分けて書く。 第一章が中核中の中核 斉物論の哲学 主…

道家(20)荘子(『荘子』と『老子』と「道」)

今回は『老子』と比較することで『荘子』の理解のきっかけを掴もうという趣旨で書いてみた。 荘子と老子の関係 『荘子』と『老子』と「道」 「道」の体得者についての比較 朴訥な『老子』、饒舌な『荘子』 荘子と老子の関係 荘子も老子も道家の代表格で、「…

道家(19)荘子(著者と成立時期)

これから複数回に亘って『荘子』について書いていく。 このブログでは著書の『荘子』を二重括弧で表記し、著者を荘子と括弧なしで表記する。 《荘子(そうじ)とは - コトバンク》によれば、著書『荘子』は「そうじ」と呼んで著者の荘子を「そうし」と呼ぶこと…

道家(18)老子(『老子』まとめ)

この記事では、書物の『老子』を二重括弧で表記し、人物の老子は括弧無しで表記する。 書物の『老子』は『道徳経』と表記されることもある。wikipediaでは『老子道徳経』という表記を採用している *1。 この記事では、『老子』の内容についてまとめる。 『老…

道家(17)老子(『老子』の有名な言葉  後編)

前回の続き。 上善如水 学絶てば憂い無し 足るを知る 和光同塵 柔よく剛を制す 上善如水 第8章の一部。 [書き下し文] 上善は水の如し。 水は善く万物を利して争わず、衆人の悪(にく)む所に居(お)る。 故に道に幾(ちか)し。 [現代語訳] 一体、最上…

道家(16)老子(『老子』の有名な言葉  前編)

『老子』の中には、『老子』を知らない人でも知っている言葉が幾つかある。その中の幾つかの意味をここに書留めておく。 大国を治むるは小鮮を烹るが如し 天網恢恢疎にして失わず 小国寡民 大国を治むるは小鮮を烹るが如し 第60章より。 [書き下し文]大国…

道家(15)老子(戦略書としての『老子』⑤--中国の戦略思想──西洋との違い)

この記事では、中国の戦略思想を西洋のそれと比較して、その特徴を書いていく。 「戦略」 「後発制人」 現代中国と「後発制人」 「指桑罵槐」という言葉 真説 - 孫子 (単行本)作者:デレク・ユアン出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2018/02/07メディア: …

道家(14)老子(戦略書としての『老子』④--「無形」と「道」と世界観)

今回は《実は『老子』の中の重要な概念「無」「無為」も『孫子』の「無形」から発展したものだった》という お話。 真説 - 孫子 (単行本)作者: デレク・ユアン,奥山真司出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2018/02/07メディア: 単行本この商品を含むブロ…

道家(13)老子(戦略書としての『老子』③--「反」の理論)

前回の続き。 今回は「反」の理論。 「反」の理論 「反」の理論と「道」 「反」の理論と「柔弱」 「柔弱」と「勢」と「形」 「反」の理論と「無為」と「有為」 真説 - 孫子 (単行本)作者: デレク・ユアン,奥山真司出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2018…

道家(12)老子(戦略書としての『老子』②--『孫子』の「詭道」の考えの採用)

前回からの続き。 真説 - 孫子 (単行本)作者: デレク・ユアン,奥山真司出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2018/02/07メディア: 単行本この商品を含むブログを見る さて、中国戦略思想の歴史の流れの中で、『孫子』の後に残された課題を『老子』が受け継…

道家(11)老子(戦略書としての『老子』①--『老子』は『孫子』の影響を受けている)

『老子』を戦略書として読むことについては、以下の本に書いてある。 真説 - 孫子 (単行本)作者: デレク・ユアン,奥山真司出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2018/02/07メディア: 単行本この商品を含むブログを見る この本は『孫子』を戦略書として解説…

道家(10)老子(「無為自然」と政治)

この記事では、『老子』に出てくる「自然」という言葉を中心にして「無為自然」とは何かを書いていく。 ソースは池田知久著「『老子』その思想を読み尽くす」の第5章 『老子』の自然思想 。 『老子』 その思想を読み尽くす (講談社学術文庫)作者: 池田知久…

道家(9)老子(「無為」について③--「無為」と政治)

(ブログのタイトルを変えました。「歴史の世界」→「歴史の世界を綴る」。) 保立道久氏によれば、「『老子』は、まずは「王と士の書」として読むべきものであろう」としている。 *1 *2 簡単に言えば、(大きな意味での)為政者たちの教訓・心得のような書と…

道家(8)老子(「無為」について②--「無為」と儒家批判)

「無為」についての2つ目の記事。 今回は儒教批判について。 『老子』が編纂された時期には世間に充分に儒教が道徳として広まっていたらしく、そのような状況で『老子』は「儒教が広まっているのに秩序が乱れ、道徳として機能していない現状」を批判してい…