歴史の世界

「四大文明」は学説でも仮説でもなく、ただのキャッチフレーズだった

書店には『これ一冊で分かる世界史』のような類の本が並んでいる。こういった本ではほとんどが「四大文明」から始まっている。私の学生時代と現在と少し違う点があるとすれば、黄河文明の代わりに中国文明という言葉が用いられていることくらいだ。

しかし最近では高校や中学の歴史教科書から「四大文明」という言葉が消えた、なんて話がある。教科書を読む機会がないのですべての教科書から消えたかどうかは分からないが、少なくともこの言葉を習ったことのない人が存在するらしい。ちなみに2014年に出版された高校世界史の参考書である『詳説世界史図録』(山川出版)には「四大文明」は無かった。

古い人間(?)の四大文明のイメージ

*よんだいぶんめい【四大文明

メソポタミア文明エジプト文明インダス文明黄河文明(または長江文明をふくめて中国文明)のこと。いずれも気候が温暖な大きな川の流域に,紀元前3000〜前1500年の間におこった。

〔文明の誕生〕 農業がすすみ,かんがいや排水工事によって生産が安定・増大し人口がふえると,大きな集落ができ,食料生産以外の仕事を専門にする人や,工事や軍事や宗教の中心となる指導者があらわれた。こうして都市が生まれ,平等だった人々は王や貴族や自由民や奴隷という,階級に分かれて,国家が発生した。そして,みつぎものや占いの記録を正確にのこすため,文字がつくられた。

出典:四大文明<ニューワイド学習百科事典<学研キッズネット

以上のような説明が私の四大文明のイメージだった。十年以上前に高校を卒業した方々もこのように教わったのではないだろうか?

他国には「四大文明」なんて言葉は使っていない?

ネット検索してみて分かったことは、「四大文明」という言葉はほとんど日本のローカルな言葉で他国では中国や韓国が使っているかどうかで他の国は使っていないらしい。

ameblo.jp

上のブログ記事によると、竹田恒泰氏によれば「四大文明」という「学説」は「学問の世界では今や完全に否定されている」とのことだ。

wikipediaで「世界四大文明」というページがあるが、このページの英語版を見たら「Cradle of civilization」となっており、Old World(Mesopotamia、Egypt、Indus Valley、China)の4つとNew World(Central Andes、Mesoamerica)の2つ、計6つが紹介されていた。

欧米での世界史古代の見解はまったく知らないが、マクニールの『世界史』は四大文明という言葉こそ使われていないものの、だいたい四大文明と同じような歴史観で書かれている(ユーラシア大文明と書かれている)。タミム・アンサーリー著『イスラームから見た「世界史」』も同様だ。

とりあえず、似たような認識はあるものの、「四大文明」という言葉は使ってない。

四大文明」は学説でも仮説でもなかった

四大文明」というと中国人(漢人?)の梁啓超が作った言葉だと言われるが、少なくとも彼が広めたわけではないようだ。

「文明<wikipedia」の注釈の欄に以下のような文章があった。

金沢大学教授の村井淳志は、この「四大文明」は考古学者江上波夫による造語で、1952年発行の教科書『再訂世界史』(山川出版社)が初出であると2009年に発表した[8]。青柳正規は江上のこの造語について、かつてアジアには高い文明があったことを強調することで敗戦に打ちひしがれた日本人を鼓吹しようとする意図があったと推定している[9]。 また京都大学教授の杉山正明江上波夫が杉山に「四大文明」を広めたのは自分であると伝えたと回想している[10]。杉山によれば「ふと江上さんが「四大文明」という考えを日本に広めたのは自分だよと、愉快そうに笑われた。私は率直に、長江・ガンジス・マヤ・アンデスなども「文明」で、ざっと挙げても八~十個くらいはありますよとお答えした。ところが江上さんは、「四大文明」といったのは口調がいいからで、本当はいろいろあるさと大笑いされた。」と江上が述べたと記している。
このように「四大文明」を提唱した江上波夫も文明の数については四つに限定されるものではないとしており、また考古学的研究が世界の全地域をカバーするようになると、四大文明以外にも文明の定義を満たすような社会が次々に発見され、四大文明説は定説の座を降り、近年の研究書や教科書では「四大文明」について記述するものは少なくなってきている。現在でも池田誠など四大文明図式にもとづいた研究もあるが、このなかでもスキタイを加え5つの文明文化圏を分析している。中国文明については黄河文明のほか長江文明遼河文明についても最近は研究されている。後述するように現在でも文明の数の定説は論者によって様々であり、不確定である。

出典:文明<wikipedia

「世界四大文明wikipedia」の脚注にも同様なことが書いてある。

以上のように、学説でも仮説でもなく、ただのキャッチフレーズだった。「中国の三大悪女」とか「学校の七不思議」などと同じようなものだった。つまりは嘘とか否定されているようなそういうレベルの話ではなかった。

最後に後藤健氏の言葉を引用。

メソポタミア文明エジプト文明インダス文明中国文明は]旧世界における人類最古の文明、いわゆる「古代の四大文明」として、我が国では1950年代初め以来、学校教育の場で取り上げられてきた。[中略]

しかし「四大文明」なる言い方は「言いえて妙」ではあるが、「学説」などではなく、所詮は半世紀以上前に作られたもっともらしい言い回しに過ぎない。「御三家」とか「七福神」のように、ある数からなるセットで覚えておきましょうという、教育者による思いつきに過ぎないのである。

出典:後藤健/メソポタミアとインダスのあいだ/筑摩選書/2015



四大文明」を否定しているのは学者でなくて、政治的に右の人たちだ。そのココロは反中。中国が文明の発祥のように扱われることが気に食わないらしい。上の竹田恒泰氏もその一人だ。

こういった色眼鏡がそこかしこにあるのだが、それがすべて曲解というわけでもないので始末が悪い。

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