歴史の世界

人類の進化:ホモ属の特徴について ⑨脳とライフスタイル その4(ダンバー数 後編)

前回からの続き。

今回もダンバー数について。

人類進化の謎を解き明かす

人類進化の謎を解き明かす

共同体(氏族)と縄張り

また狩猟採集民に話を戻す。

仮に狩猟採集民150人が一つの場所に居るとなると、その縄張りの可食の動植物は たちまちの内に枯渇する。このような事態を避けるために、狩猟採集民は一定の人数と縄張りを決めて生活する(このようなことはヒトに限らず霊長類おそらくは他の動物もおなじだ)。

150人の集団(共同体、氏族)は一定の縄張りを持ち、その中で50人程度の野営集団をつくって生活している。50人という規模は主に捕食者(肉食獣)から身を守るために必要な数らしい。この50人の集団は入れ替えが頻繁にあって、特に結束した(コアな)集団ではないとのことだ(著書には、50人は夜を共に過ごす単位と女性が可食植物を採集する単位の2つが書いてあって、そうすると男性の数が浮いてしまうのだが、その説明が無い)。

社会ネットワークの階層

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出典:ダンバー氏/p76

上は社会ネットワークの階層を表している。おおよそ3倍に広がっている。

以下では狩猟採集社会を想定して、p73-76、p273-281を参考にしてこの同心円の意味を書いていこう。

  • 5人:より強力な情動的支えとなり、悲しみを分かち合える仲間(家族、親友)。

  • 15人:馴染みの仲間うち。経済的・社会的支援を得るための基盤(近縁、大家族)。

  • 50人:野営集団(バンド)。肉食獣に対する防備に必要な数。

  • 150人:氏族(クラン)、共同体。厄災時に無条件に助け合える仲間。

  • 500人:大規模な共同体(メガバンド)。行き過ぎた近親交配を防ぐための遺伝子交換をするための最小規模。形式的な関係。会うことも不定期。

  • 1500人:民族的、言語的集団(トライブ)。構成員すべてが同一言語を話す共同体。環境上のリスクを避けるための より大きな互助ネットワーク。

ダンバー数150人より外の層は共有の言語と文化と道徳観(誠実さとたしかな互恵性)が必要となり、これらはおそらくホモ・サピエンス固有のものだったろう。そして、互恵性が150の層を越えて形成された時期を、ダンバー氏は「約10万年前に始まった最終氷期に環境がどんどん悪化した」時期と想定している。生存戦略として、資源の奪い合いではなく、同盟を結ぶことを選択した。(p280-281)

ダンバー数と関係があるかどうかは分からないが、ヒトの狩猟採集社会で男性の狩猟集団は5人、女性の採集集団は10~15人(p165)。