現在から見て最後の氷河期が終わると人類は農業をするようになった、と言われる。
農業の始まりについては別の記事で書くとして、この記事では最後の氷河期(最終氷期)の終末の前後について書く。
この記事では数字に多少のズレがあるが、すべて「およその数字」なので千年~二千年くらいのズレは誤差とする(測定機器の限界なのか、学者たちの判断の差なのか、私には分からない)。
「◯◯年前」と「(紀元)前◯◯年」と両方を使用するので混同しないように注意。
最終氷期と完新世
最終氷期はヴュルム氷期とも呼ばれ、およそ7万年前から1.2万年前までの時期を指す。地質年代(地質時代)の更新世に属する。
およそ1.2万年前(前10000年)から現在までは地質年代で言えば完新世になる。
最終氷期の亜氷期/亜間氷期
最終氷期というと長い間続いたと一般には思われているが、実際は短い周期(氷床コアの研究において発見され、ダンスガード・オシュガーサイクルと呼ばれる)で気候が激しく変動していたことがわかってきた。最寒冷期の状態が続いたのは実際は非常に短い間、おそらく2000年ほどであったと専門家の間では考えられている。
上の「最寒冷期」は同ページに書いてある「最終氷期最盛期、Last Glacial Maximum、LGM」のこと。およそ2.1万年前。
ベーリング/アレレード期(亜間氷期)
これより数千年経つと亜間氷期ベーリング/アレレード期(前12700-前10800)に突入する。
出典:ヴォルフガング・ベーリンガー/気候の文化史 ~氷期から地球温暖化まで~/丸善プラネット/2014(原著は2010年にドイツで出版)/p60
- 「氷期末亜間氷期」と書いてある期間がベーリング/アレレード期に相当する。スティーブン・ミズン氏*1はこれを「後期亜間氷期」としている。
- 「ベーリング/アレレード期」はヨーロッパにおける気候による時代区分で、これが地球のどの地域まで通用するか分からない。
- 本当はベーリング期とアレレード期という二つの亜間氷期で、あいだにオールダードリアス期という亜氷期があるのだが、ヨーロッパ以外の地域ではこの亜氷期は識別することができないようだ。*2
- 「最終氷期寒冷期(LGM)」は最終氷期最盛期(Last Glacial Maximum)のこと。
上の図に示されているように気温が急激に上がった。これに伴い氷床は後退し、人類を含む動植物の行動範囲が広がった。
ヤンガードリアス期(亜氷期)
上記のベーリング/アレレード期の後の亜氷期がヤンガードリアス期(上図参照)(前10800年-前9600年)。「寒の戻り」と言われている。氷床は前進し、動植物は後退した。
このヤンガードリアス期の終わり(前9600年)が最終氷期の終わりであり、更新世の終わりであり、完新世の始まりとなる。
上の「完新世の始まり」の定義は国際的な基準であるGSSP(国際標準模式層断面及び地点)によって定まっている(「完新世の始まり」については「完新世の開始期の定義の批准<日本第四紀学会」参照。「GSSP」については「国際標準模式層断面及び地点<wikipedia」参照)。
ただし、この決定にどれほどの学者およびその他の人々が従っているかは分からない。
完新世
ヤンガードリアス期が終わるといよいよ現代まで続く完新世になる(前9600年-現在。)。氷床と動植物の前進/後退の逆転が見られた。ベーリング/アレレード期との違いは、変動が比較的安定していることと、人類が農業をやりだして人口爆発を起こしたことだ。これが文明の誕生につながっていく。
地球温暖化だけが農業の始まりの原因ではないが、不可欠な要素の一つではある。
気候変動の重要性
気候変動は人類を含む動植物に甚大な影響を与えている。その中で人類は右往左往するだけでなく、試行錯誤を繰り返して文化文明を発達させていった。逆に言えば、文化文明の発達の原因の中に気候変動があるとも言える。
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