生物学の用語の変更の動きのニュースがあった。
遺伝の「優性」「劣性」表現を変更へ 教科書の変更も
遺伝の研究者などで作る日本遺伝学会は、遺伝子の特徴を示す「優性」や「劣性」という用語について、一方が劣っているかのような誤解や偏見につながりかねないとして使用しない方針を決め、今後、教科書の変更を国に求めることになりました。
遺伝学には、ある遺伝子が関係している特性について、実際の現れやすさを示す用語として「優性」と「劣性」という表現が使われています。
日本遺伝学会はこの用語について、一方が劣っているかのような誤解や偏見につながりかねないとして、今後は使用しない方針を決めました。今後は「優性」は「顕性」に、「劣性」は「潜性」という用語を使うということです。
このほか、遺伝子に何らかの変化が起きる「突然変異」という用語は「突然」を除いて「変異」とするなど、100ほどの用語について表現の変更を提案しています。[以下略]
まず、「表現を変更へ」と書いているが、現段階では提案しているだけだ。「へ」で止まる見出しの記事のイベントは結果的にそうならないことがよくある。自戒もこめて要注意。
さて本題。
優性・劣性は長く言われていたことで問題ないと思うが、《「突然変異」という用語は「突然」を除いて「変異」とする》のはいかがなものか。
長く「突然変異」が使われてきた一方で「変異」は「多様性」という意味で使われてきた。 朝日新聞の記事*1によれば 《「バリエーション」の訳語の一つだった「変異」は「多様性」に》するように提案されている。
誤解を招かないように適切な表現を提案することについては「何故もっと早くにやらなかったのか」とすら思うが、「変異」という一つの言葉が現在・過去と未来で変わってしまったら混乱を招くだろう。
日本遺伝学会がそこまで頭が回らないほどの集団だとは思わないので、混乱を招く可能性についてどのように考えているのか、を知りたいのだが、日本遺伝学会のウェブサイトにはこのニュースが載っていない。
学会の見解を自サイトで発表して欲しい。
「変異」はvariationの訳語で「突然変異」はmutation。だから「変異」が「多様性」に変わっても「突然変異」が「突然多様性」に変わることはない。