歴史の世界

エジプト文明:先史⑥ 土器の出現

土器が初めて作られた場所は日本を含む東アジアだが、二番目はアフリカ、サハラ・サヘルだそうだ。

この記事はサハラ・サヘルにおける土器の誕生とその後の話(日本・東アジアの土器については別の機会にやろう)。

アフリカ最古の土器(西アフリカ・マリ)

サハラ・サヘルの最古の土器は西アフリカで発見されたもの。

ジュネーブ大学のエリック・ヒュイセコム教授率いる、28カ国から集まった50人の国際チームが、アフリカのマリ中部で1万1400年前の土器を発掘した。これまで発見されたアフリカの土器の中でも最古のものという。

発掘場所はユネスコ世界遺産に登録されているバンディアガラ断崖の近く、オウンジョウゴウ ( Ounjougou ) 。人類の進化と気候の変化との関係についての新理論につながる発掘でもある。

2002〜2004年に発掘された地層から、6個の土器のかけらが発掘された。それらは最低1万1400年前のものという。これまで発掘された最古の土器は、中東およびサハラ東部から出土したもので、9000〜1万年前のものだ。

出典:アフリカ最古の土器を発見 2007-02-04 - SWI swissinfo.ch

1万1400年前(前9400年)といえば、最終氷期の終わり=完新世の始まり=「緑のサハラ」の始まりの時期の直後だ。

このニュース記事のインタビューに答えたエリック・ヒュイセコム(Eric Huysecom)氏によれば、土器はまさに気候変動によって起こった発明だと指摘している。

さらにヒュイセコム氏は興味深いことを言っている。土器と同じ時期に矢じりも発明された、さらにはその状況は東アジアも同様だと。

さらに今回の発掘で解明したのは、土器の発明と矢じりの発明が同時代に起こったということだ。矢じりで草原のウサギや鳥を獲ったのだという。西部アフリカと同じ年代の土器と矢じりがシベリア、中国、日本の3点を結ぶトライアングル地帯でも発掘されている。「アフリカとアジアの2つの地域で、ほぼ同時に土器と矢じりが発明され、しかも同じような気候であったということが重要なのです。というのも、人類は気候の変化にどのように対応するのかということが、これで分かるからです」とヒュイセコム教授は説明する。

出典:前掲記事

  • 先史の石で作った矢じりは細石器microlithに分類され、中石器時代または終末期旧石器時代(Epipaleolithic)の特徴の一つ。

ただし、東アジアでの最古の土器出現の時期は氷河期の最中であった*1 *2

リビアの遺跡による調理用土器の例

今週のオンライン版に掲載される論文によれば、かつて緑のサバンナであったサハラでは、1万200年も昔の新石器時代人が野生の穀物や多葉植物、水生植物を土器で調理していたという。

人類史の中で、土器は約1万6,000年前の東アジアと、約1万2,000年前の北アフリカの2回にわたって互いに無関係に発明されたと考えられている。その土器について、牛乳などの動物産品の加工に利用されたことを示す証拠は存在するが、植物の料理で果たした役割は知られていなかった。

Richard Evershedたちは、リビアサハラのTakarkoriおよびUan Afuda遺跡から出土した合計110個の土器片を調べた。土器に残されている脂質付着物の炭素同位体比を分析した結果、その土器は、多葉植物、種子、穀物、および水生植物など、周辺の湖沼およびサバンナで採集された多様な植物の加工に利用されていたことが示された。

その土器は、この地域での植物の栽培化および農業に4000年以上先行することが分かった。研究チームは、前期完新世の狩猟採集民が当時の緑のサハラに存在した穀物などの野生植物によって食事の必要を充足させる上で、今回の知見によって想定された植物加工技術が極めて重要であった可能性があると結論付けている。

出典:植物の加熱調理には1万年の歴史がある | Nature Plants | Nature Research

ナブタ・プラヤにおける貯蔵用その他の例

エジプトにおける土器の最古の例はナブタ・プラヤだそうだ。

ウェブサイト『ナブタ・プラヤ|Nabta Playa|人類歴史年表』の「第Ⅱ部・第三章・(四)土器」によれば、最古のもので前8200年の土器片とのこと。

以下は別の参考図書からの引用。

在地の粘土を用い、全てお椀のかたちに作られている。外面全体には櫛目文様が施されており、縄文土器のような雰囲気を醸し出している。この装飾は同時代のスーダンの土器と類似しており、文化的つながりがあったことを示唆する。前期新石器時代の土器には煤(すす)の付着が一切みられないため、調理用ではなく、貯蔵・運搬または儀礼用の容器として用いられたとされる。

出典:馬場匡浩/古代エジプトを学ぶ/六一書房/2017/p34

  • この本でのナブタ・プラヤにおける前期新石器時代の年代は、紀元前7050~6700年。学者によって年代が変わるので参考程度で。

家屋の床面に埋め込まれた大きな土器の中には野生の雑穀(ミレットやソルガム)を貯蔵した。

ナイル河流域への普及について

ナイル河流域で普遍的に使用されるのは前6千年紀後半だそうだ*3。この普及はサハラからではなく、北方の(西アジア由来の)ファイユーム文化からかもしれない。