歴史の世界

エジプト文明

エジプト文明:古王国時代⑥ ピラミッド史の流れ その1

古代エジプト人は来世に強い関心を持っていることは以前に書いた(古代エジプト人の来世観 )。王だけでなく、古代エジプト人は来世で再生復活することを考えて、墓をどのような構造にするかを考えた。ピラミッドは当時の王の宗教的表現の1つと言える。 さ…

エジプト文明:古王国時代⑤ ピラミッドと宗教 その3 太陽信仰とオシリス信仰

今回も建築技術云々は すっ飛ばして宗教の話をする。ただし政治の話が少なからず混じってしまった。 ギザの三大ピラミッド(第4王朝) 太陽神殿(第5王朝) 太陽信仰の後退とオシリス信仰 ピラミッド・テキスト 第6王朝 ギザの三大ピラミッド(第4王朝)…

エジプト文明:古王国時代④ ピラミッドと宗教 その2 ピラミッドと太陽信仰

この記事では、ピラミッドと太陽信仰について書いていく。 最古のピラミッドと太陽信仰 太陽信仰と四角錐 なぜピラミッドは建造されたのか(建造の目的) 最古のピラミッドと太陽信仰 最古のピラミッドは、第3王朝初代のジェセル(ネチェリケト)王の王墓だ…

エジプト文明:古王国時代③ ピラミッドと宗教 その1 古代エジプト人の来世観

古王国時代の宗教観とピラミッドがどのように結びついているのかを書いていく。 この記事では、民間を含むエジプト全体の来世観・死生観・宗教を書いていく。 来世観と宗教 来世で永遠に生き続けるために必要な知識と行動 「カー」と「バー」 3要素の再合一…

エジプト文明:古王国時代② 「ピラミッドの時代」

エジプトのピラミッドは古王国時代に始まり、古王国時代に集中的に建造され、古王国時代にピークがあり、ピークの後 衰退する。だから古王国時代は「ピラミッドの時代」とも言われている。 古王国時代の人口は およそ120万人とされるが、その人数であれだけ…

エジプト文明:古王国時代① 第3王朝の初代は誰か?

馬場匡浩『古代エジプトを学ぶ』*1によれば、初代はジェセルだが、高宮いづみ『古代エジプト文明社会の形成』*2によれば、ジェセルの前にサネケト等の先行する王が「いたようである」と書いている。 「第3王朝の初代は誰か?」という問題は資料不十分な古代…

エジプト文明:初期王朝時代⑦ 第1王朝・第2王朝/初期王朝時代のまとめ

これまで初期王朝時代について数記事書いてきたが、この記事で終わりにする。概要的なものも書いてなかったので、これも書いておこう。そして最後にまとめを書く。 初期王朝時代の年代 第1王朝・第2王朝について ペルイブセンとカセケムイ 初期王朝時代の…

エジプト文明:初期王朝時代⑥ 王都メンフィス/ノモス/民族意識の形成

国家と国内の人口 王都メンフィス ノモス 外国と城壁 国家と国内の人口 F.A.ハッサンによれば(Hassan 1993)、古王国時代のエジプトの総人口は120万人程度であり、農村人口は114万人程度、平均的な集落の人口は450人くらいであったという。つまり都市の数と…

エジプト文明:初期王朝時代⑤ 王号「ファラオ」について/世界初の領域国家/行政組織/文字の進展

エジプト統一からの政治・行政の進展はかなりスローペースだったようだ。行政組織は王族を中心に構成され、王家の家政と国家の区別が曖昧だった。 行政の進展と歩調を合わせるように文字の進展も遅かった。 王号「ファラオ」について 世界初の領域国家 領域…

エジプト文明:初期王朝時代④ 王権の維持

王権について まずは権力とは何か。 一番簡潔な定義は「他人を支配し従わせる力。特に国家や政府が国民に対して持っている強制力」(権力とは - コトバンク/三省堂 大辞林第三版 )。 上をふまえて、王権を王の権力と言ってしまえばいいのだが、少しネット…

エジプト文明:初期王朝時代③ ナルメルのパレット

ナルメルのパレットは「エジプト文明の始まり」を話題にするときに常に登場するモノ。とても有名な遺物の一つ。 しかしこれが重要なモノであることは分かるが、その中身や何が重要なのかについては語られない。なのでここで書いていこう。 出典:ナルメル - …

エジプト文明:初期王朝時代② 王朝時代の王名表/誰がエジプトを統一したのか?

「誰がエジプトを統一したのか?」「王朝時代の最初の王は誰か?」という疑問は当然興味が湧く問題だろう。この問題については、異論はあるものの、いちおう決着がついているようだ。 これに関連して王名表の話も書いておこう。 王朝時代の王名表 誰がエジプ…

エジプト文明:初期王朝時代① 統一王朝の誕生の過程

古代エジプト史、あるいはエジプト学では、先王朝時代の後に初期王朝時代が来る。初期王朝時代は王朝時代の最初の時期で第1王朝と第2王朝を含む。 この記事では、統一王朝の誕生の過程について書いていこう。 簡単な流れ ナカダⅡ期後半から統一までの流れ …

エジプト文明:先王朝時代⑨ マアディ・ブト文化/下ヌビア/南パレスチナ

馬場匡浩氏によれば*1、エジプト先王朝時代は上エジプトのバダリ文化とナカダ文化、そして下エジプトはマアディ・ブト文化(マーディ・ブト文化)の3つの文化が含まれる。 今回は下エジプトのマアディ・ブト文化と先王朝時代にエジプトと交流・交易があった…

エジプト文明:先王朝時代⑧ ナカダ文化Ⅲ期 その4(先王朝時代の主要な都市・大集落)

前回、都市化について書いたが、今回は個別の都市あるいは「都市」一歩手前くらいの大集落について書いていこう。 ナカダ ヒエラコンポリス アビドス(アビュドス) その他の集落 エレファンティネ ヌビア北部の大集落(サヤラ、クストゥル(クストゥール) …

エジプト文明:先王朝時代⑦ ナカダ文化Ⅲ期 その3(都市化 ほか)

前回の最期に書いたナルメル王のパレットについては別の機会にやる。 今回は都市化について。 J.ウィルソン氏(1958)エジプト文明を「都市なき文明」であった、と主張した。メソポタミアのような都市が発達しないまま、上下エジプトは統一されたのがエジプ…

エジプト文明:先王朝時代⑥ ナカダ文化Ⅲ期 その2(王の出現 ほか)

今回は、王の出現とそれに付随して起こったことについて書いてみる。 王の出現 官僚組織 文字 美術/図像表現 王の出現 近年、各地の発掘調査にともなって、ナカダⅢ期ニ年代づけられる複数の王名の存在が明らかになってきた。こうした王名は、「セレク」とよ…

エジプト文明:先王朝時代⑤ ナカダ文化Ⅲ期 その1

ナカダ文化Ⅲ期は、先王朝時代の最後期、王朝時代の直前にあたる(もしかしたら王朝時代の初期まで含むかもしれない)。 ただし、Ⅲ期のあいだにすでに「王」が誕生しており、この時期は「原王朝」「第0期王朝」と呼ばれることもある*1。 Ⅱ期後半からエリート…

エジプト文明:先王朝時代③ ナカダ文化Ⅱ期後半(前3650-3300年) 前編

前回、Ⅰ期~Ⅱ期前半のあいだで、各集落で内部の発展と階層の分化が起こったことをやった。 今回はⅡ期後半。この時期は各集落間の格差が生じ、大型集落が中小の規模の集落をコントロールするまでになった。 集落間の格差 地域統合の始まり 職業集団の出現と大…

エジプト文明:先王朝時代② ナカダ文化Ⅰ期~Ⅱ期前半(前4000-3650年)

ナカダ文化は先王朝時代の中核。先王朝時代の本体と言ったほうがいいかもしれない。先王朝時代は他にはバダリ文化とマアディ・ブト文化を含むがこれらの文化はナカダ文化の付属物に過ぎない。先王朝時代については記事「エジプト文明:先王朝時代について 」…

エジプト文明:先王朝時代① バダリ文化

場所 出典:Absolute Egyptology - Egypt before the Pharaohs 中部エジプトのバダリ遺跡(El Badari)を中心とする。 時期 馬場匡浩氏によれば*1、前4400-4000年頃。 生活様式 生活の基盤は農耕・牧畜で、漁撈と狩猟採集で補完していた。 農耕は六条オオム…

エジプト文明:先王朝時代について

先王朝時代 この時代の年代と登場する文化 時代区分 この時代に起こったこと 最後に 先王朝時代 先王朝時代(エジプト先王朝時代)とはエジプト文明の基層となる文化の形成期のこと。 「エジプト文明の基層となる文化」とはナカダ文化のことで、この時代の中…

エジプト文明:先史⑭ メリムデ文化

場所 メリムデ遺跡はナイル・デルタの西端、低位砂漠との境界にある現在名ワルダーンという村の近くにある。耕地拡張のため大半が破壊されてしまったと言う。 出典:Merimde Beni Salama site in Delta is larger than was thought \Ahram Online 9 Apr 2015…

エジプト文明:先史⑬ ファイユーム文化

エジプトにおける農耕・牧畜を有する最古の文化はファイユーム文化だ。この文化は西アジア由来のものとされている。 ファイユーム文化は「ファイユームA文化、Faiyum A culture」と表されることがあるが同義だ。 現在のファイユーム低地 先史時代のファイユ…

エジプト文明:先史⑫ ナイル川流域がサハラ・サヘルより文化的に遅れていた

エジプト文明が誕生したのはナイル川河流域だが、北アフリカでこの地が常時文化的にリードしてきたわけではなかった。 最終的には、サハラ・サヘルから流入した遊牧中心の文化と西アジアからの農耕・牧畜=定住文化が統合されて文明が誕生することになる。 …

エジプト文明:先史⑪ ナイル川下流域 -- エジプト文明の舞台

北東アフリカの砂漠を貫くナイル川。アフリカ大陸の乾燥期に他の川や湖が干上がってもナイル川は干上がることはなかった。 ナイル川下流域 ナイル河谷(上エジプト) ナイルデルタ(Nile Delta・下エジプト) ナイル川とデルタ地帯 ナイル川は生命線 ナイル…

エジプト文明:先史⑩ 「緑のサハラ」時代/まとめ

この記事で「緑のサハラ」は終わりなので、まとめることにしよう。 「緑のサハラ」の始まり 土器の始まり ウシの家畜化 可食植物の集約的採取と栽培について サハラ・サヘルにおける経済 社会の高度化 社会発達はナイル川流域より早かった まとめ 「緑のサハ…

エジプト文明:先史⑨ 「緑のサハラ」時代の終焉とエジプト文明とのつながり

前6000年頃から徐々に乾燥化が強まっていたが、前4000年頃(前3900年?)、さらに乾燥化が強まり、ここで「緑のサハラ」の時代は終わった(5.9 kiloyear event<wikipedia)。 サハラ・サヘルで生活していた多くの人々は四方に散ったが、その多くがナイル川…

エジプト文明:先史⑧ ナブタ・プラヤ 後編

前回からの続き。 引き続き、以下の2つを参考文献とする。 馬場匡浩著『古代エジプトを学ぶ』(六一書房/2017) ウェブサイト「ナブタ・プラヤ|Nabta Playa|人類歴史年表」 後期新石器時代 祠堂(巨石の建築物) 石塚 カレンダー・サークル 後期新石器時…

エジプト文明:先史⑦ ナブタ・プラヤ 前編

ナブタ・プラヤ遺跡(Nabta Playa)は、「緑のサハラ」時代のサハラ・サヘルにおける最も有名な遺跡だ。後世のエジプト文明の起源とも言われているが、確実な証拠はない。 「緑のサハラ」については、記事「エジプト文明:先史① 緑のサハラ 」参照。 主な参…