歴史の世界

エジプト文明:先王朝時代⑧ ナカダ文化Ⅲ期 その4(先王朝時代の主要な都市・大集落)

前回、都市化について書いたが、今回は個別の都市あるいは「都市」一歩手前くらいの大集落について書いていこう。 ナカダ ヒエラコンポリス アビドス(アビュドス) その他の集落 エレファンティネ ヌビア北部の大集落(サヤラ、クストゥル(クストゥール) …

エジプト文明:先王朝時代⑦ ナカダ文化Ⅲ期 その3(都市化 ほか)

前回の最期に書いたナルメル王のパレットについては別の機会にやる。 今回は都市化について。 J.ウィルソン氏(1958)エジプト文明を「都市なき文明」であった、と主張した。メソポタミアのような都市が発達しないまま、上下エジプトは統一されたのがエジプ…

エジプト文明:先王朝時代⑥ ナカダ文化Ⅲ期 その2(王の出現 ほか)

今回は、王の出現とそれに付随して起こったことについて書いてみる。 王の出現 官僚組織 文字 美術/図像表現 王の出現 近年、各地の発掘調査にともなって、ナカダⅢ期ニ年代づけられる複数の王名の存在が明らかになってきた。こうした王名は、「セレク」とよ…

エジプト文明:先王朝時代⑤ ナカダ文化Ⅲ期 その1

ナカダ文化Ⅲ期は、先王朝時代の最後期、王朝時代の直前にあたる(もしかしたら王朝時代の初期まで含むかもしれない)。 ただし、Ⅲ期のあいだにすでに「王」が誕生しており、この時期は「原王朝」「第0期王朝」と呼ばれることもある*1。 Ⅱ期後半からエリート…

エジプト文明:先王朝時代④ ナカダ文化Ⅱ期後半(前3650-3300年) 後編

前回の記事を書き終えた後に、Ⅱ期後半について書いておくべきことが見つかったので、取り急ぎ続きを書く。 先王朝時代をやり終えた後に、この記事と前回の記事を書き直そう、と、今のところ思っている。 まだ付け足さなければならないことがあるかもしれない…

エジプト文明:先王朝時代③ ナカダ文化Ⅱ期後半(前3650-3300年) 前編

前回、Ⅰ期~Ⅱ期前半のあいだで、各集落で内部の発展と階層の分化が起こったことをやった。 今回はⅡ期後半。この時期は各集落間の格差が生じ、大型集落が中小の規模の集落をコントロールするまでになった。 集落間の格差 地域統合の始まり 職業集団の出現と大…

エジプト文明:先王朝時代② ナカダ文化Ⅰ期~Ⅱ期前半(前4000-3650年)

ナカダ文化は先王朝時代の中核。先王朝時代の本体と言ったほうがいいかもしれない。先王朝時代は他にはバダリ文化とマアディ・ブト文化を含むがこれらの文化はナカダ文化の付属物に過ぎない。先王朝時代については記事「エジプト文明:先王朝時代について 」…

エジプト文明:先王朝時代① バダリ文化

場所 出典:Absolute Egyptology - Egypt before the Pharaohs 中部エジプトのバダリ遺跡(El Badari)を中心とする。 時期 馬場匡浩氏によれば*1、前4400-4000年頃。 生活様式 生活の基盤は農耕・牧畜で、漁撈と狩猟採集で補完していた。 農耕は六条オオム…

エジプト文明:先王朝時代について

先王朝時代 この時代の年代と登場する文化 時代区分 この時代に起こったこと 最後に 先王朝時代 先王朝時代(エジプト先王朝時代)とはエジプト文明の基層となる文化の形成期のこと。 「エジプト文明の基層となる文化」とはナカダ文化のことで、この時代の中…

エジプト文明:先史⑭ メリムデ文化

場所 メリムデ遺跡はナイル・デルタの西端、低位砂漠との境界にある現在名ワルダーンという村の近くにある。耕地拡張のため大半が破壊されてしまったと言う。 出典:Merimde Beni Salama site in Delta is larger than was thought \Ahram Online 9 Apr 2015…

エジプト文明:先史⑬ ファイユーム文化

エジプトにおける農耕・牧畜を有する最古の文化はファイユーム文化だ。この文化は西アジア由来のものとされている。 ファイユーム文化は「ファイユームA文化、Faiyum A culture」と表されることがあるが同義だ。 現在のファイユーム低地 先史時代のファイユ…

エジプト文明:先史⑫ ナイル川流域がサハラ・サヘルより文化的に遅れていた

エジプト文明が誕生したのはナイル川河流域だが、北アフリカでこの地が常時文化的にリードしてきたわけではなかった。 最終的には、サハラ・サヘルから流入した遊牧中心の文化と西アジアからの農耕・牧畜=定住文化が統合されて文明が誕生することになる。 …

エジプト文明:先史⑪ ナイル川下流域 -- エジプト文明の舞台

北東アフリカの砂漠を貫くナイル川。アフリカ大陸の乾燥期に他の川や湖が干上がってもナイル川は干上がることはなかった。 ナイル川下流域 ナイル河谷(上エジプト) ナイルデルタ(Nile Delta・下エジプト) ナイル川とデルタ地帯 ナイル川は生命線 ナイル…

新石器時代について

新石器時代の一番簡単な説明は「農耕・牧畜の始まりをもって新石器時代とする」というものだ。しかし縄文時代のように農耕・牧畜が始まっていないのに新石器時代とされているものもある(そうしない学者もいる)。 新石器時代はそれより前の時代より複雑なの…

エジプト文明:先史⑩ 「緑のサハラ」時代/まとめ

この記事で「緑のサハラ」は終わりなので、まとめることにしよう。 「緑のサハラ」の始まり 土器の始まり ウシの家畜化 可食植物の集約的採取と栽培について サハラ・サヘルにおける経済 社会の高度化 社会発達はナイル川流域より早かった まとめ 「緑のサハ…

エジプト文明:先史⑨ 「緑のサハラ」時代の終焉とエジプト文明とのつながり

前6000年頃から徐々に乾燥化が強まっていたが、前4000年頃(前3900年?)、さらに乾燥化が強まり、ここで「緑のサハラ」の時代は終わった(5.9 kiloyear event<wikipedia)。 サハラ・サヘルで生活していた多くの人々は四方に散ったが、その多くがナイル川…

エジプト文明:先史⑧ ナブタ・プラヤ 後編

前回からの続き。 引き続き、以下の2つを参考文献とする。 馬場匡浩著『古代エジプトを学ぶ』(六一書房/2017) ウェブサイト「ナブタ・プラヤ|Nabta Playa|人類歴史年表」 後期新石器時代 祠堂(巨石の建築物) 石塚 カレンダー・サークル 後期新石器時…

エジプト文明:先史⑦ ナブタ・プラヤ 前編

ナブタ・プラヤ遺跡(Nabta Playa)は、「緑のサハラ」時代のサハラ・サヘルにおける最も有名な遺跡だ。後世のエジプト文明の起源とも言われているが、確実な証拠はない。 「緑のサハラ」については、記事「エジプト文明:先史① 緑のサハラ 」参照。 主な参…

エジプト文明:先史⑥ 土器の出現

土器が初めて作られた場所は日本を含む東アジアだが、二番目はアフリカ、サハラ・サヘルだそうだ。 この記事はサハラ・サヘルにおける土器の誕生とその後の話(日本・東アジアの土器については別の機会にやろう)。 アフリカ最古の土器(西アフリカ・マリ) …

エジプト文明:先史⑤ アフリカにおけるウシの家畜化

以前は農耕・家畜ともに西アジアから流入してきたとされていたが、ウシに関してはアフリカで独自に家畜化されたとする説が出てきた。 この記事ではウシの家畜化と牧畜の状況・環境・その後について書く。 家畜と家畜化 ウシの家畜化について アフリカのウシ…

エジプト文明:先史④ タッシリ・ナジェール

今回はタッシリ・ナジェールについて書いていこう。 タッシリ・ナジェールは「緑のサハラ」の代表的な遺跡で世界遺産にも登録されている。 タッシリ・ナジェールとは 先史時代に描かれた絵について タッシリ・ナジェールの絵の変遷 紀元前10000-6000年 紀元…

エジプト文明:先史③ 「緑のサハラ」時代の生活環境

砂漠と雨の関係 現代のサハラ・サヘルの環境 以下の引用は現代を含むサハラまたはサヘルの環境の一部を描写している。 「緑のサハラ」はサヘル地帯が拡大したと考えれば、現代のこの地域の環境を理解が「緑のサハラ」の環境に結びつくだろう。 砂漠は巨大な…

エジプト文明:先史② 「緑のサハラ」の先史

前回は地理方面の話をしたが、今回は考古学方面の話を書こう。 考古学の時代区分のおさらい 後期旧石器時代 第8章で言及した地名を含むサハラ砂漠とエジプトの地図 出典:ブライアン・フェイガン/古代文明と気候大変動/河出書房新社/2005(原著は2004年…

エジプト文明:先史① 緑のサハラ

エジプト文明が誕生するより数千年前、サハラ砂漠は今よりも湿潤で動植物が多く生息していた。この環境と時代を「緑のサハラ」と表現することがある。 この記事では、ナイル川周辺が砂漠で覆われるより前の北アフリカについて「緑のサハラ」について書いてい…

エジプト文明シリーズを書く

これからエジプト文明シリーズを書く。「エジプト文明」カテゴリーに保存する。 エジプト文明とは? このブログでの「エジプト文明」カテゴリー このカテゴリーで書くこと エジプト文明とは? エジプト文明については最初のエジプト統一王朝から最後のプトレ…

進化論と人類の進化シリーズの主要な参考文献

「進化論と人類の進化」シリーズ終了。ホモ・サピエンスやネアンデルタール人などは 先史/ホモ・サピエンスのカテゴリーを参照のこと。 世界中の学者が様々な説を展開していて決着が着いていないものだらけだ。このカテゴリーで採用した説が主流なのかどう…

【用語】解剖学的現生人類

解剖学的現生人類と現代的行動 現代的行動と進化 解剖学的現生人類と現代的行動 どうやら「身体は完全な現生人類(ホモ・サピエンス)だが現代的行動を身に着けていない現生人類のこと」という意味のようだ*1。この用語ができた時点では現代的行動を身に着け…

【用語】 猿人・原人・旧人・新人/旧人(旧人類)archaic humans

授業の中で 私はむかし、人類は「猿人→原人→旧人→新人」のように進化した、と教えられた。最近の中高生が実際にどのように教えられているかは分からないが、youtube に上げられている幾つかの授業を見ると、あまり変わっていないようだ。 実際の進化はこんな…

人類の進化:ホモ属各種 ⑦ネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)

ネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス Neanderthal、Homo neanderthalensis)は以前はホモ・サピエンスの直系の祖先と言われていたが、近年の研究により、共通祖先を持つ別系統の種であるとされている(前回の記事参照)。 歴史教科書では「旧…

人類の進化:ホモ属各種 ⑥ホモ・ハイデルベルゲンシス

ホモ・ハイデルベルゲンシスまたはハイデルベルク人という名前はそれほど有名ではないが、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の共通祖先として重要な種だ。 下はホモ属の系統図。 Description English: Chris Stringers' hypothesis of the family tree o…